国税庁 年末調整申告書アプリやってみた ダメ出しします!
今回は、年末調整の電子化の後日談についてお話しします。
私は、効率化、合理化とか大好きですし、新しいものが大好きです。
なので、基本的に電子化については、すべてウェルカムでトライしてみようと考えています。
年末調整アプリ、国税庁革新的!
と思い、電子化を進めたい税理士としては、皆さまの人柱となるべく率先して取り組みました。
結論
今の国税庁の年末調整申告書アプリでは、紙より非効率である
期待に胸を膨らませて電子化取り組みましたが、色々と不親切なところがありました。
本音で説明していきます。
来年、改善がみられなければ、私は国税庁のアプリは使いません。。。
まずは、簡単な概要
国税庁の年末調整申告書ソフトは、年末調整の計算はしてくれません。扶養控除などの書類、保険料控除証明書などの書類の提出を紙からデータに変えるという機能しかありません。
図では、銀行、保険会社の証明書のやり取りと、従業員から会社への申告書のやり取りが紙ではなくデータで行えるようになります。
メリットとしては、紙の保存ではなくなること、自動入力により金額の間違いがなくなるという点があります。
保存方法は、紙かデータのどちらか一方に統一しなくても良いことになっていますが、保存方法を統一しないと資料をなくす原因になると思いました。
なので、私は保存方法をデータに統一するべく今回の電子化対応をしました。
以下、国税庁アプリのダメ出しをしていきます。
ダメなところ1 従業員のスマホかPCにアプリをダウンロードしてもらう必要がある
年に一度しか使わないのに、従業員に対する負担が大きいです。
なぜ、会社の年末調整のためにスマホのデータ容量を取られなければいけないのか。
従業員に納得してもらえるのでしょうか。
なので、このアプリは、会社PC、会社スマホを支給している会社のみ導入できるのではないでしょうか。
なぜ、WEB型(SaaS)型のサービスにしなかったのか謎です。
ダメなところ2 マイナンバーカードが普及していない
保険料控除申告書の自動入力がメリットだったはずなのに、マイナンバーカードが全然普及していないので自動入力に対応した人が圧倒的に少なかったです。
また、保険契約者と保険料を支払った人が違う場合の手間がかかったりするので、その点も間違いやすいかと思います。
なので、今年の作業においてはメリットの一つの自動入力が機能しなかったといえます。
マイナンバーカードの所持については、個人の主義に関する問題でもあるので、会社として強制することは難しかったりします。来年も普及率が上がることに過度な期待はできません。
ダメなところ3 配偶者の合計所得金額の入力が必須となっている
年末調整では、配偶者の所得が133万円以下の場合には、配偶者控除、配偶者特別控除を受けられることになっています。(給与だけの場合は、給与収入が2015998円まで)
そして、紙提出の場合には、配偶者控除を受けようとする場合に提出することとなっているので、配偶者控除などを受けない場合は、配偶者の所得を事業主に知らせる必要がありません。
ところが、年末調整申告書アプリでは、配偶者控除を受けない人についても合計所得金額の入力が必須となっています。
配偶者の収入は、なるべく事業主に知られたくない情報ですよね。また、超重要な個人情報です。
配偶者の年収、なんで入力しなきゃいけないのという質問が多数寄せられました。
結局、どうしても教えたくないというのであれば、適当に300万円とかで入力をしておいてくださいということで前に進みました。本当にこのやり取りに何度も時間をとられました。
配偶者の所得133万円超というチェックボックスを設置しておけば、問題ないのに。。
ダメなところ4 扶養控除申告書を2年分入力するのがだるい
扶養控除申告書は、今年分を入力して翌年分はコピーできる機能があれば問題ないのではないでしょうか。
どちらの年度を入力しているのか分からなくなりました。
来年分の扶養控除申告書は、来年以後の給料計算には、必要なものではあるけれども年末調整においてはそんなに重要ではないんですよね。
そもそも、来年の状況など正確に分かるはずもないので、今年の分をコピーで充分だと思います。
ダメなところ5 保険料控除申告書を手入力する場合の初期設定が一般になっている
保険料控除申告書を手入力でやってもらったのですが、なぜか間違えて一般を選択している人が多かったです。私も間違えました。
原因としては、初期設定が一般となっているので注意していないと一般のままで入力を進めてしまうことが分かりました。
初期設定は、空欄にしておいてもらわないと、ずぼらな人は間違えます。
また、控除証明書からは分からない保険金の受取人などの情報が必須になっているので手入力をする際に困ります。受取人の情報など保険会社によって記載しないものは入力任意にしてもらわないと手入力はできません。
だめなところ6 途中保存ができない
空欄があるとデータの途中保存ができません。何度もやり直しが必要になりました。また、アプリを閉じるときにメッセージがでないので保存できているか不安になります。
ダメなところ7 データをインポートするときに一人ずつID,パスワードを入力
これは、国税庁のアプリの問題ではないかもしれませんが、データを給料ソフトにインポートするときに毎回ID、パスワードの入力が必要でした。いちいち一人ずつ入力するところを想像してみてください。
ダメなところ8 データをインポートするときに毎回エラーがでる
これも、国税庁アプリの問題ではないかもしれませんが、保険会社の文字数が多すぎるため毎回エラーがでます。基本設定で省略名称にしてもらえばこのエラーは少なくなります。
ダメなところ9 どのデータをどのように保存しておくのかわからない
このアプリを使った最終的な成果物としては、XMLファイルとPDFの両方が作成されます。
実際の税務調査ではどのファイルがあれば問題がないのかよくわかりません。
所得税法では、提出方法についてID、パスワードを設定して送信するか、電子署名をして送信することと決められています。
具体的にはどの形式のファイルを保存すればよいのかわかりません。(XMLだけ必要なのか?PDFでも良いのか?)
なので、入力ミスを会計事務所で見つけた場合にデータの訂正をどうすれば良いのか迷いました。
よくわからないので、結局、従業員の代わりに会計事務所側で国税庁のアプリの入力を直しました。正しいXMLファイルの作成をし直して再度市販の給料ソフトにデータのインポートをしました。
これも地味にめんどくさかったです。
紙ならペンで修正すれば数秒のところが、アプリからデータの修正をして給料ソフトにインポートすると数十分かかりました。
また、修正のため従業員に戻しした場合に、修正前のものは保存しておくことが必要なのか?
このあたりも明確じゃありません。
以上です。改善してほしいことをまとめると、
WEB型アプリに変える
配偶者の所得は合計所得の入力必須をやめる(133万円以上のチェックボックスをつくる)
扶養控除申告書の翌年コピー機能を作成する
生命保険料控除の初期設定を一般ではなく空欄にする
保険会社の略称を初期設定にする(文字数不足のため)
データの途中保存をしやすくする
データの保存形式を明確にする(PDFかXMLか)
会計事務所でデータを直す場合の方法を明確にする
控除証明書のPDF提出を認める
ここまでやってもらえれば、実務で役に立つものになるかもしれません。
本当にDXして会社の生産性を上げたいならしっかり改善すべきです。また、実際に国税庁・税務署の職員がどれくらいこのアプリを使ったか公表してほしいものです。
私は今回のアプリは非効率としか感じませんでしたが、
(紙でやるより、3時間くらいは余計にかかりましたからね。)
来年の改善点をみて使用を続けるか検討します。