長旅には、期待ハズレも必要で。
原付きでゆく北海道旅16日目。標高1,000mの寒いさむいキャンプ場にて目を覚ます。昨日仲良くなったライダーに貰ったカイロが、ほのかな温もりを残して私の腰を温めていた。
旅に出る前より、たくましく見える君
北海道を旅して2週間以上が経った。もうすっかりテントで爆睡できるようになったし、正直なところ2日間お風呂に入らない日もザラにあるし、セコマの駐車場に腰掛けて夕食をとることにも慣れた。たくましい通り越して野蛮になったなぁと思う。
そんなことを考えながらふとカブに目をやると、旅に出る前よりもたくましく、そして誇らしげに見えた。
上富良野の千望峠から、連なる山々を眺める。誰もいなかったので、草むらに寝っ転がってみた。秋の空は高い。風がゆるやかに吹いている。
駐車場には九州ナンバーのキャンピングカーが停まっていて、その横でおじいさんとおばあさんが椅子を出してパンを食べていた。いいなぁ、私もいくつになっても旅をしよう。
将来自分がキャンピングカーで旅をする姿を想像しながら千望峠を後にした。きっと原付の旅よりもずいぶん快適だろう。
長旅には期待ハズレも必要で
今日の最終目的地は帯広だが、途中で湖の中に線路が敷かれているフォトジェニックスポットがあるそうなので、少し遠回りして向かった。
旅も人生も、大切なのはメリハリだと思う。毎日おいしいものばかり食べていたら次第に感動が薄れてくる。質素な暮らしの中でたまに食べるごちそうが、とびっきりおいしいのだ。
なので、フォトジェニックスポットの見応えがイマイチでも全然問題ない。いや〜実にイマイチ。(笑)着いた瞬間「?」と思ったけど、近くまで行ってみて「これェ?」と笑ってしまった。最近毎日素晴らしい絶景を見てたからね。こういうことがあっても全然問題ない。
まぁここに来るまでに片道30分くらい遠回りしてるけどね。全然問題ない。
ちなみにコレ、昔列車が走っていたとかではなく、船を引き上げるために使われている現役の線路なんだそう。冬になって湖が凍る前に、すべての船を引き上げるみたい。
私の後に来た男性2人組も、湖水線路を覗いては「おぉ」「なるほど」などと言って足早に去っていった。
帯広のライダーハウス「ヤドカリ」へ
日が暮れる前に帯広に到着。今日は朝からセコマのフライドポテトしか食べていなかったので腹ペコだ。
せっかくなので帯広の名物・豚丼を食す。ん〜やっぱりお肉っておいしい。柔らかい豚肉に甘辛いタレが絡んでいて、とにかくご飯が進む。お肉の量をケチらずたっぷり乗せてくれるお店ってありがたい。満腹になって、ライダーハウスへ向かった。
今夜の宿は帯広市にある「ヤドカリの家」。なかなかファンが多いようで北海道に来る前から名前を聞くことが多かったこのライダーハウス、この日も10人近くの旅人が宿泊していた。
リビングでは旅人たちが談笑している。初対面というより昔からの友達のような距離感。話を聞くと、6人くらいがヤドカリの家に長期滞在しながらアルバイトをしたりツーリングを楽しんだりしているようだ。
ヤドカリの宿泊費は1泊1,500円で、2泊目以降は1泊1,000円になる。1ヶ月滞在していても水光熱費含め3万円程度と考えると、長期滞在する人がいるのも頷ける。普通に家借りるより安いもんなぁ。近くには銭湯やスーパーもあって利便性もバッチリ。オーナー夫婦がしっかりしているから変な人が来ることもない。なるほど、そういう暮らし方もあるのか。
看板猫のタマは人見知りしない性格で、背中を撫でさせてもらうと、柔らかくて温かかった。家賃3万、温泉チカ、猫付き。うん、悪くない。
その夜は旅人たちの話し声を聞きながら、ぽかぽかの室内で安心して眠った。