旅人よ、カッコ悪くあれ。【北海道旅5日目】
最東端のライダーハウスで目覚める朝。同じ部屋で寝ていた彼らはすでに出発の準備をしていて、おいてけぼりにならないように私も体を起こす。
▼前回までのあらすじ
日本の最東端・納沙布岬へ
まずは日本最東端の納沙布岬へ。ライダーハウスで知り合った2人も行くそうで、現地で会う約束をして先に出発する。彼らは中型と大型のバイクなので、原付バイクが同じ時刻に出たら確実に置いて行かれるのである。
曇っているけど風が爽やかで気持ちいい。気分良く走っていたら、ヘルメットの下で笑っていそうな彼らに颯爽と抜かされた。
まずは最東端の空気をたっぷり吸って、記念撮影。日本の最北端と最南端って感動するけど、最東端ってちょっとピンとこないのは私だけだろうか。いや、嬉しいんだけどね?「あ、ここね!ここが最東端なのね!(;'∀')」みたいな。共感する人いたらコメントください。
3人で土産屋や博物館をふらふらと歩く。ふと日本一周中の彼のバイクに目をやると、後ろに積んでいるボックスの上に布らしきものが敷かれていることに気が付いた。……パンツだ。
バイクにパンツを干して走る
どうやら洗濯後に乾ききらなかったパンツを干しながら移動しているらしい。洗濯も、コインランドリーはもったいないから、密封できる袋に衣類・洗剤・水・ボディーソープを入れて揉み洗いしてるんだとか。気合い入ってる。
一方大学生の彼は、走っている途中に鞄がタイヤに擦れて穴が開いたそうで、その穴をガムテープで塞いでいた。
荒療治だな。(笑)今はギリギリ擦れない位置を見つけて、そこで固定しているらしい。
この旅人たちの不完全さや不格好さがたまらなく好きだ。「旅をするためにやむを得ずそうなってしまった」そんなカッコ悪さがカッコ良くて、そのみっともなさが美しい。私にとっては機能美のひとつだ。何かに憧れてそうしたわけじゃない。これは今日まで旅を生き抜いた彼らの、オリジナルのカッコ悪さ/カッコ良さなんだ。
根室うまいものありすぎ問題
昼前に彼らと別れて、ひとり腹ごしらえをすることに。しかし根室はおいしいものが多くて困る。
・回転寿司(花まる)
・花咲ガニ
・さんま
・やきとり弁当
・エスカロップ
パッと思いつくだけでもこんなにある。特に昨日食べたやきとり弁当は衝撃的なおいしさで、今日も食べたかったけど、せっかくだからご当地グルメのエスカロップを食べてみる。
これ、んんぅうーーーまい。薄くてサクサクのカツと、たっぷりバターのライスが"THE幸せの味"。一口食べた瞬間に「根室に引っ越してきたい」と思った。
開陽台~地球は丸かった~
北海道の雄大な景色を360°パノラマで楽しめる開陽台へ。"地球が丸く見える展望台"をうたっていていて、またまた~と思ってたけど本当に丸かった。遮るものが何もなくて、地平線がかすかに弧を描いていて、今日みたいな天気がいい日は本当に気持ちがいい場所だ。ちなみに駐車場は車・バイクともに無料。騒がしい系の観光客がほとんどいないので落ち着いて過ごせるのもGOOD。
名物のはちみつソフトもなかなか美味。ミルク香るソフトクリームの上にたっぷりとはちみつがかかっていて、気づいたらペロリでした。お高いはちみつって全然味が違うよな~。
吉高由里子が助けてくれた夜
夕方が近づいてきたので今日の宿を決めようとマップを開いたが、周りに安宿がない。ビジネスホテルならいくつかあるが、それはなんか負けな気がする。というか無職なのでビジホという選択肢はない。そうだ、キャンプ場でテントをレンタルしよう。
向かうは尾岱沼ふれあいキャンプ場。尾岱沼は"おだいとう"と読む。夕陽が沈むころにキャンプ場に着いて手続きを済ませる。利用料400円、貸出テント500円、合計900円なり。テント建てたことないけど、なんとかなるっしょ~!
………。
なんとかならない。マニュアル読んでもちんぷんかんぷん。どんどん日が暮れて手元が見えなくなっていく。もうなんかこの広げたテントの上に寝るとかでもいいや。
ふてくされそうになった時、背後から「ランタン使いますか?」と声をかけられた。振り返ると吉高由里子似の綺麗なお姉さんがいる。ぐしゃぐしゃのテントの前に立ち尽くす私を見て、隣のテントから助けに来てくれたようだ。
その後お姉さんの彼氏?旦那さん?も一緒に手伝ってくれて、なんとかテントが完成。「ランタン使って!私たちもうひとつあるから」とのことだったのでお言葉に甘える。本当にありがたい。
セコマで晩御飯を買って、水辺に座って焼きそばをすする。夜の尾岱沼は吸い込まれそうなくらい真っ暗で、月明かりだけがゆらゆらしていた。
テントに戻り、寝袋に入る。私もこれから、テントを建てられなくて困っている人がいたら助けてあげよう。そしたらその人もまた、いつか誰かを助けるかもしれない。そうして世界が優しさに満ちていったら素敵だ。
その夜は、吉高由里子さんたちの静かな話し声を聞きながら、安心して眠った。
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