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1,850円で個室宿泊+温泉+漫画読み放題の天国へ
原付でゆく北海道旅6日目。朝日で暖まり始めたテントの中で目を覚ます。
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▼前回までのあらすじ
日本一奇妙な地形の「野付半島」へ
顔を洗って、歯を磨いて、尾岱沼の周りを散歩する。カラッとしていて気持ちのいい朝だ。
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昨晩助けてくれたお姉さんたちに別れを告げて、まずはセコマで腹ごしらえ。ここ数日野菜不足だったので、サラダを買って駐車場でぼりぼり食べる。
まずは野付半島へ。昨日ぼんやり地図を眺めていて「なんじゃこりゃ!?」と思わずズームしてしまった野付半島。この不思議な地形は砂嘴(さし)というらしい。
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砂嘴(さし)とは、海流により運ばれた砂が、長年に渡って堆積して作られた地形のことです。
なるほど、だからこんな不思議な形をしているのか。静岡県の御浜岬や熊本県の富岡などほかにも砂嘴はあるようだが、この野付半島は全長約26kmで日本最大の砂嘴なんだそう。
いざ出発。少し進むと、警戒心ゼロのエゾシカに遭遇。近づいても声をかけても呑気に草を食ってる。
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このあたりまでは普通に沿岸を走っているのと変わらない景色だったが、途中からジブリのような景色になってきた。海の中をゆっくり歩くエゾシカだったり、海水によって朽ち始めた木々だったり……。なんだか日本じゃないみたいだ。
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バイクで進めるのは灯台の手前にある駐車場まで。灯台付近を散策して帰路につく。
野付半島に存在した幻の街「キラク」
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どうやら昔は野付半島の先端部分に港町として栄えた集落があり、「キラク」という町だったらしい。キラクの由来は「ここに来ると気が楽になる」らしく、遊郭などの歓楽街が存在していたんだとか。こんな辺鄙で場所に、こんな変な地形の上に、男たちを癒す施設が並んでいたなんて……。この大自然と性産業のミスマッチ感がたまらなくゾワゾワ・ワクワクする。
しかし、キラクの存在は昔から語り継がれてきたにもかかわらず、キラクに関する資料や遺跡は一切残っていないんだとか。偶然なのか、故意なのか、はたまた誰かの冗談から始まったのか……真相は不明だが、キラクは今も"幻の街"として人々のロマンをかきたてているようだ。
知床峠の絶景を駆け抜ける
野付半島を離れて、向かうは知床峠。実はまだこの頃ヒグマに鬼ビビりしていて、峠を走っていたら突然ヒグマが飛び出してきて、私の小さなカブに向かってタックルしてくる想像しかできなかった。
念のため母親に育ててくれたお礼をLINEで伝えてから、羅臼の坂道を上っていく。
杞憂だった。よく晴れた今日の知床峠は、ヒグマのヒの字も感じないくらい明るくて、開けていて、最高に気持ちのいい道だった。
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羅臼側から上って行くとき、山が次々と迫ってくる光景はきっとずっと忘れないだろう。山肌が美しくて、外国みたいだった。カリフォルニアとかあんな感じなんかな。
知床峠を下りてからは、トロトロ散歩しながら斜里町に向かった。
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これで1,850円!?コスパ最強の天国へ
本日の宿は、斜里町の「クリオネキャンプ場」。そういえばパンツをバイクに干していた彼は、一時期ここでバイトしていたそうだ。
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このおしゃれなキャンプ場、なかなかコスパが良い。この小さな小屋はモバイルテントといって1泊1,650円。電源がついているので充電ができて、この秘密基地のようなサイズ感が妙に落ち着く。さらに200円払うと徒歩3分の温泉に入れる。泉質は全国でも珍しい植物性モール泉。しっとりと気持ちのいいお湯だ。
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また、すぐそばの管理棟にはキッチンやランドリー、飲食スペースなども備えられていて、旅人同士の交流を楽しめる。漫画が大量に置いてあるので、雨の日はここにこもってダラダラと贅沢な時間を過ごすのもいいだろう。施設は隅々まで清潔で快適。個室に泊まれて、モール泉に浸かれて、漫画読めて、キッチン使えて2,000円以下は、かなりコスパが良い。
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その晩は、スーパーで買ったラーメン2人前を食べながら、旅人たちと語って過ごした。チャリで日本一周中の彼、風呂入らない&着替えない最長記録は7日間らしい。
チャリはすごいわ。原付でヒイヒイ言ってらんないね。
―next―
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