絶景を駆け抜けて、200円の宿に泊まる旅。
原付でゆく北海道の旅12日目。日本最北端の町・稚内にある無料キャンプ場で目を覚ます。
空気はひんやりと冷たい。キャンパーの朝は早いようで、みんなテント外に椅子を置いて、珈琲を飲んだり本を読んだりしてゆったり過ごしていた。いい朝だ。
▼前回までのあらすじ
無料キャンプ場に住むおじさん
朝の散歩を終えて出発しようとすると、駐輪場になにやら賑やかな原付が停まっていた。関西ナンバー。ずいぶん遠くから来たんだな。
アンパンマン、ピカチュウ、ドラえもん……なんだこのバイクは。ほどなくして持ち主のおじさんが登場。どうしてこんな装飾をしているのか聞いてみた。
「子どもが笑ってくれると嬉しいんよ」
こうやってキャラクターや風車などを飾って走っていると、通りすがりの子どもが楽しそうに手を振ってくれるらしい。それがなんとも嬉しくて、実際に走らせる時はもっと派手に飾り付けて走っているんだとか。「笑顔が見たい」なんて……シンプルで、ピュアで、すごく素敵だ。
話を聞くと、おじさんはこのキャンプ場に約1ヶ月滞在しているらしい。おじさんの日々のルーティンは決まっている。朝起きて、マクドナルドで珈琲を飲んで、図書館で本を読んで、日が暮れる前に銭湯に寄って、ここに帰ってくる。
ここを住処として、誰にも邪魔されない自分だけの生活をするおじさんは、人生が楽しそうだった。話を聞くと、昔は自転車で何度も日本一周したらしい。年齢もあって体力的にきつくなってきたということで、原付に切り替えたそう。
車種はYAMAHAのJOG。カブ以外の50ccで旅してる人初めて見ましたよ。
そこは、まだ知られていない楽園。
稚内から50kmほど南下して、豊富という町に来た。目的は豊富温泉だったが、せっかくなので駅横にある観光情報センターでおすすめスポットを聞いてみた。
「バイクならいいところがありますよ」と教えてもらったのが、大規模草地牧場だ。
大規模草地牧場とは、その名の通り総面積1,500ヘクタールの大規模な草地牧場。なだらかな丘には見渡す限り牧場が続き、5~10月は約1,500頭の牛が放牧されている。
北海道らしい景色を楽しめる大規模草地牧場だが、まだ知名度が低いようでツーリングしている人がほとんどいない。ほぼ貸切状態。ひとりっきりで大自然の中を駆け抜けるのはすごく気持ち良かった。
撤去目前!?オトンルイ風力発電所へ
豊富町から海沿いに抜けると、海沿いの道路に大きな風力発電機がずらーっと並ぶ風景に出会える。オトンルイ風力発電所だ。
道路を挟んで右に海、左に風力発電機を望みながら南下してゆく。まるでジブリのような風景。
撤去計画が目前に迫っていたオトンルイ風力発電所だが、つい先日、撤去日の延長が発表された。2027年まではこの風景が見れるみたいだけど、それ以降はもう一生見れない。
すべてのものに終わりはある。風景も物も人生も。寂しいけど、だからこそ美しいのかもしれない。
また来ることを誓って、オトンルイ風力発電所を後にした。
1泊200円のライダーハウスは…
さらに南下して、天塩町にある鏡沼海浜公園キャンプ場に到着。このキャンプ場は、キャンプは1泊500円、ライダーハウスは1泊200円という謎の価格設定。室内に泊まれるのにキャンプより安いってどゆこと?(;^_^A
受付でチェックインして、キャンプ場の端にあるライダーハウスに向かう。プレハブ小屋のような感じだけど、中には畳が敷いてあって快適に過ごせそう。
部屋は男女分かれているので、ライダーハウス初心者の女性でも安心である。この部屋の宿泊者は私のほかに女の子がひとり。同い年で、なんと日本一周中だそう!
セコマで夕食を買って、同室の子と話しながら食べる。彼女は日本一周旅の途中でねぶた祭りに参加したらしく、その時のエピソードを臨場感たっぷりに語ってくれた。私も来年は参加してみたいが、根が暗いので祭りのテンションについていけるか不安だ。
9月中旬に差し掛かった北海道はすでに寒くて、朝晩は10度を下回ることも。この日も寒くて就寝中に何度か目が覚めたが、1泊200円なので仕方がない。来年はもっと高価な寝袋を持ってこよう。
ーnextー