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旅の終わりに

約1ヶ月間の北海道旅を終えて、新潟港へと戻ってきた。フェリーから原付を降ろして、近くの道の駅まで走る。

あ、あづい……。分かってはいたが、暑い。9月下旬の本州はまだ夏の湿り気を残していた。何か冷たいものを飲みたくて、Googleマップで「セコマ」と検索する。……そうか、ここはもう北海道じゃないんだ。病めるときも健やかなるときも側に居てくれたオレンジのコンビニを思い出して、胸がキュッとなった。

セブンイレブンで買った水を、虚無感を埋めるようにぐびぐびと流し込む。明後日までに神奈川県の藤沢に到着している必要があったが、なんだか運転する気にならないので、とりあえず南魚沼市の無料キャンプ場に1泊することにした。

翌朝、テントに降り注ぐ太陽の光で起床。目覚めた瞬間に思った。

は や く か え り た い 。

理由は2つあった。旅人らしからぬ理由かもしれないが、おうちが恋しくなってしまったのだ。家の布団で安心して眠りたい。そしてもうひとつの理由が、「北海道の記憶を薄めたくない」だ。まだ無意識にセコマを探してしまうような、One more time one more chanceのうちに旅を終えたかった。

新潟→群馬→埼玉→東京→神奈川

キャンプ場から目的地の藤沢までの距離は258km。これが北海道だったら……余裕!この旅で距離感覚がバカになった私は迷わず出発した。

途中土砂降りで濡れ鼠になったりしたけど、夕方頃になんとか帰宅。昨日はお風呂に入っていないのでドロドロボロボロの山姥だ。シャワーを浴びて、荷解きをするためにトートバッグから衣類を出すと、ふわっと懐かしい香りがした。北海道の風の匂いに、渇いた土のような匂いに、旅中に毎日使っていた日焼け止めの匂い。これは、この旅の香りだ。

洗濯したらその香りは嘘みたいに消えてしまった。
またきっと旅に出よう。新しい景色や香りを探すために、心震える瞬間に出会うために。


『50cc原付きでゆく北海道旅』を読んでくださりありがとうございました!10月中旬から始めたこのnoteがたくさんの方に読んでいただけていること、心から嬉しく思います。スキやコメントもとても励みになっていました。

そして、チップを送ってくださった方々、本当にありがとうございました。大切なお金を、私の文章に、私へのエールに使ってくださったということが素直に嬉しかったです。なかにはご自身の体験も交えたメッセージを送ってくださる方もいて、胸が熱くなりました。

旅はまだ続きます。何年になるか、何十年になるかわからないけど、今のところ「人生ずっと旅しているんだろうなぁ」と思っています。これからも見守っていただけると嬉しいです。

それでは、またすぐにお会いしましょう!



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おさつ
一緒に旅をしている気分で読んでいただけたら、この上なく幸せです。