キクラゲ。
何がどう作用しているのかは分からないが、敷地内で雨のよく当たる場所に薪材である丸太を放置しておくと、およそ2年くらい経った頃からキクラゲが自然に生えてくる。
キクラゲ自生を知ったのは、約8年前。近所の駐車場に1年ほど放置されていた直径50cm、長さ120cmほどのムクの丸太を3本、拙宅の屋外駐車スペースに運び込んだことに始まる。
「そのうち玉切りして割るべ」
と思っていたのだが、何だか面倒くさくてそのままにしておいた。だって、ムクって樹は、なかなか割れねぇんだもん。火持ちの良さは抜群だけど…。
それから1年ほど経過したある日、放置したムクの丸太から黒くてブニュブニュっとしたキノコらしきものが生えているのを発見した。
「なんだこりゃ。あーあ、キノコ生えて来ちゃったよ」
最初はその程度にしか思わなかった。そしてその黒くてブニュブニュっとしたものは、一雨ごとに大きくなっていった。
「なんだかキクラゲみてぇだなぁ」
色が赤みがかってきたが、大きくなってきたキノコらしきものは、どう見てもキクラゲであった。数も増え、丸太のあちこちから顔を出している。中華料理屋さんの五目焼きそばに入っているキクラゲとそっくりだ。
でも、キノコは怖い。うっかり口にして下痢する程度ならまだいいが、ポックリ逝くのはイヤだし、笑い出したら止まらなくなってしまうかも知れない。
早速書店でキノコの図鑑を調べてみた。ウチに生えているのは、やっぱりキクラゲらしい。そしてキクラゲの仲間に毒を持っているものはないことも知った。どうやら食っても大丈夫そうだ。
念のため、キノコ狩りを趣味としているおじさんにも、現物を見てもらった。
「これ、キクラゲじゃん。珍しいね、天然のキクラゲなんて。どこで手に入れたの?」
「ウチの駐車場に置いてある木に生えてるんです。いっぱい」
「えっ! ホント!?」
話によると、キノコ仲間の間でも天然キクラゲは貴重な存在らしい。沢山生えているので、ビニール袋いっぱいに採取して渡したら、たいそう喜んでくれた。毒味のつもりで渡したのだが、
「とても美味しかった」
と、感想も頂戴した。
美味しいのか。んじゃ、おいらも食ってみんべ。
軽く茹でた後、キャベツや豚肉と一緒に炒めて食った。
「う、うまい!」
表面にぬめりがあるが、乾燥キクラゲとは明らかに異なる食感で、ちょっとコリコリしているし、これまで食べたどのキクラゲよりも味がしっかりしている。薪ストーブ生活に、こんな楽しみがあろうとは、思っても見なかった。
これまでキクラゲの発生を確認した樹種はムク、ケヤキ、クス、エノキ等で、最も沢山生えたのはムクで、太いほど良い。
現在、拙宅の敷地には、一昨年入手した薪材の丸太が山積みされているが、その中の数本(ケヤキとエノキ)からキクラゲが生えている(写真参照)。
このところ晴天が続いたので、乾燥しカサカサ状態で縮こまっているが、雨の日にはびびろーんと大きくなる。
梅雨時と秋雨の時期は、キクラゲがよく育つ。今、食欲の秋である。