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コンタクトレンズ誘拐事件

あれはまだ私が大学生だった頃。
上京して大学の寮に住んでいた私は、卒業とともに住処を失った。
次の住処を見つけるまで、一時的に実家に全ての荷物を移動させ、しばらくの間実家でごろごろし、卒業式だけ大学に出向こうと思っていた。
そんな時、友人から唐突に連絡が来た。

「そろそろ卒業だし、卒業旅行でも行かない?」

本当に卒業間近の連絡だった。
あまりに無計画で弾丸の旅行だが、友人のそういう自由なところが大好きなので、行き先も不明なまま、二つ返事でいいよ!と答えた。

そうして予定より早く大学近くに出向き、卒業式から卒業旅行までの間、友人宅にお邪魔しながら、卒業旅行に行くことになった。

ところで、私は目がそこまで良くない。
メガネがあまり似合わないので、夜だけ眼鏡で、日中はコンタクトをつけている。
2weekのコンタクトを使用していたので、友人宅にお邪魔する間はこのコンタクトで事足りると、コンタクトの洗浄液だけ持っていった。

旅行先だが、なんでそうなったか全く覚えていないが、とりあえずスカイツリー、花屋敷、雷門あたりを旅行した。
さて、スカイツリーに行くぞ!と旅行初日に駅のホームに降り立った後、その日は風が強く、目にゴミが入ってしまった。
痛がる私を友人は心配そうに見ていて、一度洗浄液で洗おうとコンタクトを外した。
その刹那、コンタクトは強風に巻き込まれて、一瞬でどこかへ消えていった。
視力不良の私と友人で駅のホームを探すも、コンタクトは全く見つからず、そのまま電車が来てしまい、初日からコンタクトを失って旅行はスタートした。

私は仕方なくメガネをかけようとしたが、メガネも夜かけるだけと思っていたので、はるか昔に買った似合わない赤眼鏡を持ってきていた。
少し長い間、友人宅にお邪魔していたので荷物も多かったので、友人は赤眼鏡をかけた私と大荷物を見て「なんかコミケ帰りのオタクっぽい」と歯に衣着せぬ、ど偏見な発言をした。
でも、それくらい大荷物の私には昔の赤眼鏡は似合っていなかったので、二人で大笑いした。

それから初めてスカイツリーに行った。
東京には何度も遊びに行ったのに、スカイツリーにはなんだかんだ登ったことがなかったので、新鮮だった。
その時はVRでスカイツリーを見られる機会があったのだが、眼鏡オン眼鏡になって「全然見えないー!」という私を友人が笑って連写していた。
それからもソラカラちゃんのカチューシャをつけてみたり、オブジェの前で二人で写真を撮ったり、最高の顔面ではなかったが、なんだかんだ楽しく写真を撮った。
何なら、面白がられて、普段より写真を撮ってもらった気がする。

スカイツリーからの夜景
この銅像と同じポーズで私だけ写真に写っていた。
有名なやつ

雷門では私が胡麻団子やらあんず飴やら食べている写真を友人が知らぬ間に撮ってた。
盗撮のプロだった。

そして、花屋敷に来た。

花屋敷に来たものの、私と友人は嗜好が真逆だった。
私は園内を高いところから自転車で一周するアトラクションに一番乗りたかったが、友人は高所恐怖症であった。
友人はお化け屋敷に行きたかったが、私はお化け屋敷が苦手だ。
え、乗れるやつあんまなくない?と入園後に気づいたが、「じゃあ、お互い一個だけ克服しよう!」と言って、お互いの第一希望のアトラクションに乗ることにした。
園内を高いところから自転車で一周するやつは、責任を持って私が自転車を漕いだ。
はぁはぁ言いながら景色を楽しむ私を友人がまた撮っていたので、眼鏡の写真がアルバムに増えていく。
逆にお化け屋敷は私が怖すぎて初手からしゃがみながら友人の足を掴んで目を瞑りながら進んだ。
突然足を掴まれた友人はびっくりして「ぎゃっ!」叫んでいた後、お化け屋敷ではなく私の手だと気づき、「え、これ、歩美ちゃん?」と笑っていた。
私は終始友人にしがみつき、兎跳びで歩き、目を瞑っていたので何も見ていないのだが、友人にお化け屋敷はどんな感じだった?と聞くと、「一番怖かったのは歩美ちゃんに足首を掴まれた時だよ」と笑われた。

そんな感じで私たちの弾丸卒業旅行は終わった。
初手でコンタクトを吹き飛ばされたおかげで、すごく記憶に残る旅行になった。
計画して旅行するのも楽しいが、思いつきで旅行するのもすごく楽しい。
何より、そんなふうに一緒の時間を過ごせる友人の大切さが、思い出すたびに優しい気持ちにさせてくれるのだ。

おしまい。

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石火矢 歩美
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