#55 後継者が決まっている生産者はどれくらいいるのか?
農業の平均年齢は68.4歳です。圧倒的に高齢化が進んでいる業種で、70代、80代の方がザラにいらっしゃいます。
そしてここ10年間で生産者の数は30%程度減少しています。
(2010年:205万人→2019年:140万人)
一方で農業を1から始めるのは初期投資が大きいだけでなく、栽培技術の習得や販路獲得の面でも非常に大変です。
そこで、今の農業経営を後代に引き継ぐということは非常に大切です。
では実際、後継者が決まっている生産者はどれくらいいるのでしょうか。今回は後継者の状況についてまとめます。
都道府県別の後継者の状況
5年以内に農業経営の引継ぎに関するデータがあります。
全体の71%の経営体は後継者が確保されていません。
また23%の経営体は親族に引き継ぐ予定で、親族以外に引き継ぐのは全体の1%でした。
それぞれ項目別に経営体に占める割合が高かった都道府県は次のとおりです。
親族に引き継ぐ
こちらは東京・神奈川・大阪などの都市部が上位にランクインしています。
都市部では土地の資産価値が高いため、基本的に親族に農地を引き継ぐ傾向があるようです。
親族以外に引き継ぐ
こちらは富山、滋賀、福井、新潟などの米どころが上位にランクインしています。
米は他の作物よりも機械化が進んでいるので、1生産者が管理する面積が広く、地域の核となる米農家に集約されてきている傾向があるのだと思います。
5年以内に引き継がない
突出して北海道が高いです。おそらく他の都府県よりも生産者の平均年齢が若いからではないでしょうか。
引継ぎ者を確保していない
日本の名だたる野菜・果樹産地が入っています。九州や北関東が比較的多いようです。
大阪の後継者の状況
大阪を詳しく見てみます。
全国と比較すると大阪は親族に引き継ぐ割合が高いです。
それでも3人に2人は後継者を確保していない状況です。
状況別に経営体に占める割合が多かった市町村は次のとおりです。
親族に引き継ぐ
こちらは吹田市・豊中市・摂津市などの住宅街が上位にランクインしています。都市開発が進んでおり、大阪の中でも土地の価値が上がっている地域です。
親族以外に引き継ぐ
こちらは和泉市が少し突出しています。(理由はわかりません。。。)
5年以内に引き継がない
こちらも親族に引き継ぐ同様、住宅街が多く入っている状況です。
引継ぎ者を確保していない
柏原、岸和田、堺、泉佐野など、大阪の中でも産地のエリアが入ってきています。
まとめ
全国的にみると、都市部では親族に、米産地では親族以外に、野菜や果樹産地では比較的引継ぎ者を確保できていない傾向がありそうです。
ですが、全体として70%強は後継者が確保できていません。
大阪は全国と比較すると親族に引き継ぐ傾向があります。
大阪の中でも住宅街ではその傾向が特に強く、産地では特に引継ぎ者が確保できていない状況です。
販売金額の極端に少ない、いわゆる自給的な経営体は農地保全(災害防止などの環境面)の意味では大切ですが、経営面から見ると儲かる土地条件ではないところが多いです。
そのため一層後継者を見つけるのは難しいと思います。
食糧生産の観点からみると、販売金額の多い経営体がどこまで引継ぎ者を確保できているかが大切です。
70%強が引継ぎ者がいないというのはショッキングですが、その中で販売金額の多い経営体だとどういう状況なのだろうかと疑問に思いました。
今回はそこまで追求できていませんが、また考えてみたいと思います。
皆さんはこの数字からどういったことを思われましたか?
大阪以外の都道府県のデータも簡単にみられるエクセルを貼っておきますのでぜひご活用ください。
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