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ドラフト会議雑感②ヤクルトの補強ポイントと指名人数

今年の補強ポイント

ドラフト前
投手5人減(育成2人)
※第2次戦力外の西舘昂汰も含む。故障で今季2軍戦で登板のなかった近藤弘樹は除く。
捕手2人減(育成1人)
内野手1人減
外野手2人減
補強ポイント 先発、リリーフ左腕、外野手
補充ポイント 投手、捕手、ショート、外野手

ドラフト後
投手4人増(育成2人)
捕手2人増(育成1人)
内野手2人増(育成1人)
外野手1人増

投手は予想通り1位で即戦力投手を獲得(中村優斗は予想外ではあった)。さらに即戦力のリリーフ左腕を獲得したことは高評価。そして今年は育成でも2軍の頭数となりそうな投手を2人獲得。投手は現状でドラフト前から1人減だが、来季は育成の翔聖の登板増加が見込めそうだから人数は足りるだろう。

捕手は今季終了時点で9人体制だったが、2人獲得で来季も9人体制を維持。フェリペが今季ほとんど捕手として機能していなったことから捕手は1人獲得でも十分だったが、内山壮真がヘルニア手術を受けて来季の捕手出場が不透明になったことから1人多く獲得したのだろう。内山に関しては再来年以降、村上宗隆が抜けるサードまたは外野手へのコンバートも考えられる。

内野手は近年ショートを守れる選手の放出が続いていたため、本職ショートの選手を獲得。チームの年齢バランスを考えて高校生ショートを獲得したことは評価できる。育成の根岸辰昇は左投げのためファーストのみ可能。今年は村上の抜けるサードを本職とする大学生・社会人選手の獲得はなし。

外野手は青木宣親と山崎晃大朗が引退して2人減ったことから即戦力と高校生の2人の獲得を予想したが、高校生1人のみ獲得。根岸を一塁手兼外野手(両翼)として考えているのなら1人でも納得だが、外野手はドラフト前時点で8人(23歳以下はゼロ)と人数が少なかったから大学生外野手をもう1人獲得してもよかった。近年の外野軽視の編成は気になるところだ。

今回のドラフトは育成を含めて指名のバランスはよかったと思う。ただ、大学生・社会人投手または強打の即戦力外野手をあと1人獲得してほしかった。今年で言えば投手は6位で坂口翔颯、山城航太郎、岩崎峻典を獲得することもできた。第2次戦力外も含めて支配下枠が62人だったため、もう1人選手を指名したくても支配下指名は5人までしか不可能だったのだろう。ドラフト後に西舘の戦力外(育成再契約打診)が発表されたが、支配下指名でが6人だったら追加の戦力外が発生していたかもしれない。

ドラフト指名人数は4年連続5人

今年の支配下指名は5人と少なかったが、支配下指名はこれで2021年から4年連続で5人となった。この4年間の支配下指名はロッテと並んで12球団で最も少ない(ロッテは育成でヤクルトより多く指名している)。投手指名に限ると2021年2人(即戦力1人)、2022年2人(即戦力1人)、2023年3人(即戦力3人)、2024年2人(即戦力2人)。2023年こそ即戦力投手を3人指名したが、それ以外の年は投手陣が脆弱な割に投手指名が少ない。チーム事情を考えたら2021年と22年は即戦力投手をもう1人指名すべきだったし、今年も投手をもう1人指名してもよかった。そうできないのも支配下枠が関係していることは先述したとおりだ。

なぜ支配下指名が少ないのか

それは当然引退した選手と戦力外になった選手の数が少なくて支配下枠に空きがないからだが、ヤクルトの場合はその戦力外部分に問題がある。どう考えても戦力構想に入っていない選手を翌年も残して支配下枠を圧迫している。2022年の渡邉大樹と荒木貴裕、2023年の尾仲祐哉と三ツ俣大樹がその例で、その年の成績と起用法からどう考えても翌年の戦力構想に入っているとは思えなかったが、全員契約を結んでいる。渡邉は2022年オフに戦力外同然で現役ドラフトで移籍したが、荒木は2023年の1軍出場は引退試合のみだった。ちなみに、荒木は2022年の日本シリーズの登録メンバーに入っていたにもかかわらず、一度もベンチ入りすることはなかった。尾仲は2024年の登板がわずか1試合で、三ツ俣は1軍出場なしでそれぞれ戦力外通告を受けた。荒木、尾仲、三ツ俣はオープン戦から出場がなく、尾仲は2軍で19試合連続自責点なしを含め防御率1点台だったのに8月まで1軍に呼ばれず(1試合炎上で即抹消)、三ツ俣も2軍で3月の月間打率が4割超で、4月終了時点でも通算3割超だったことに加えて山田哲人がこの時期に不在だったのに1軍に呼ばれることはなかった。この4人に関しては翌年の扱い(渡邉はシーズンオフの扱い)を見ても戦力構想に入っていたとは到底思えないし、そのような選手を残しても2軍要員になるだけでチームの戦力アップにはつながらない。そして、当然今年も戦力外を免れた選手の中に来年の戦力構想に入っているのか疑わしい選手が何人かいる。

それに加えて、チームの補強ポイントではない選手をわざわざ戦力外から支配下で獲得してくることも支配下指名が少ない一因となっている。2023年の尾仲と三ツ俣、2024年の西川遥輝がその例だ。尾仲は阪神時代に実績のないリリーフ右腕で当時の年齢も28歳だったし、三ツ俣は荒木の代わりにベンチ要員にすることは明らかで当時の年齢も30歳だったことから2人の獲得に大きな疑問を感じた。尾仲と三ツ俣に関してはそもそも獲得する必要がないのに獲得したからヤクルト移籍2年目に先述したような扱いになったのではないか。

そして西川だが、チームには西川と同タイプの俊足左打ち外野手が3人(山崎晃大朗・丸山和郁・岩田幸宏)もいる状況で西川を獲得したことは疑問だったし、西川の獲得については宮本慎也氏も若手起用で十分ではないかと疑問を呈していた。それに同じ左打ち外野手でも西川を獲るならドラフト1位で度会隆輝を指名してほしかった。度会はヤクルトOBで現ヤクルトスワローズアカデミーヘッドコーチの度会博文氏の息子だし、度会なら山田哲人、村上宗隆、塩見泰隆の後釜にもなりえた。去年獲得した増田珠や嘉弥真新也のようにチームの補強ポイントに合った選手や伸びしろのある若手選手の獲得なら構わないが、補強ポイントではない選手をわざわざ戦力外から支配下で獲得するくらいならドラフトで若手選手を獲得してしっかりと育ててもらいたい。結果を残してもチャンスを与えないなら尚更だ。そして、そのような編成をおこなった小川GMは責任を取るべきだ。ちなみに、尾仲に関しては尾仲の大学時代に小川GM(当時はSD)が評価して獲得を検討していたことから、おそらくGM案件だろう。三ツ俣に関してはトライアウトを受けさせてまで獲得したことは未だに謎である。

きちんと戦力整理をおこなっていれば、今頃は投手と野手ともに有望な若手選手がもっと在籍していただけに非常に残念だ。

2年連続高校生投手指名ゼロ

去年は台湾の高校に通う翔聖こそ獲得したが、日本の高校に通う高校生投手の獲得は2年連続でなかった(育成では3年連続獲得なし)。そのような球団は当然ヤクルトだけだ。高卒投手の育成が下手な球団としては賢明な判断ではあるし、日本の野球界の未来を考えたら逸材投手を潰すよりはマシである。実際にヤクルトは近年、寺島成輝、市川悠太、鈴木裕太、嘉手苅浩太、下慎之介といった高卒の有望投手を育てられなかったし、鈴木、嘉手苅、下に至っては1軍登板なしで戦力外となった。奥川恭伸もヤクルト以外の球団に入っていたら、ここまで苦労しなかったかもしれない。

ヤクルトでは育成出身の高卒投手の活躍は皆無で、そもそも育成で高校生投手を指名した例も2020年の下だけである。これだけ育成で高校生投手を獲得しない球団も他にはない。ヤクルトの育成力のなさとは別に、近年高卒育成選手の見切りが早くなっていることから筆者は育成での高校生の獲得に否定的なのだが、今後も育成での高校生投手の獲得は控えたほうがいいだろう。

今年のドラフト候補には藤田琉生(日本ハム2位)というヤクルトが絶対に指名してはならない三拍子(高校生・長身・左腕)が揃った投手がいたが、彼のような超逸材を指名できないのは非常に残念だし、ファン(現在休止中)の立場からすると実に情けなく思う。

育成下手な球団として大学生と社会人投手を指名する現在のドラフト戦略は賢明ではあるが、いつまでも今のままというわけにはいかない。ヤクルトの高卒投手で大成したと言えるのは1997年入団の五十嵐良太氏が最後で、高卒でエースと呼べるのも1991年入団の石井一久氏まで遡る。高校生を含めてアマチュア投手が安心してヤクルトに入団できるように投手の育成環境が早急に改善されることを願う。


拙い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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