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2023年の遠征を振り返る 西表島編
3月下旬に石垣島から始まった「ヤエヤマヒメボタルの写真を撮って、ヒノマルコロギスも採っちゃおう」の旅。2日目からは西表島になります。石垣島編はこちらをお読みください。
3/19
石垣港離島ターミナルから高速船でおよそ40分。西表島大原港に到着しました。レンタカーを借り、スーパーで飲み物などを調達した後、南部にある林道に向かいます。
この日の天気は曇りで、長袖を着ていても丁度良いくらい。時々、銃声のような大きな音が辺りに響きます。これは爆音機といって、農作物被害防止のために野生動物を驚かす道具から発せられる音です。最初はすぐ近くでイノシシ猟でもしているのではないかと思い、誤射でもされたら大変と、人間がいることをハンターに知らせるために、よく分からない激しめな動きをしながら歩いていました。しかし、後で調べたら西表島では罠猟が主流で、3月はそもそも猟期ではありませんでした。つまり、人間アピールのつもりが、意図に反して人間らしさとは真逆の謎の動きをする変質者が誕生しただけということになります。他に誰もいなくて良かった…。
話を戻します。準備を整え林道を歩き始めると、チュウダイズアカアオバトが出迎えてくれました。
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台湾亜種は頭部が赤いそうです。だから「ズアカ(=頭赤)」なんですね。全然赤くないじゃんと思いながらいつも見ていました。
しばらく進んでいつも地表が湿っている辺りに来ると、オキナワトゲヒシバッタが足元から跳ねました。初見の直翅です。
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外見は本土のトゲヒシバッタとほぼ同じ。水溜まりに落ちても平気です。すぐに泳いで陸に上がろうとはしません。
そして思わぬ虫にも出会います。
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イボトゲヒシバッタです。乾燥にかなり弱く、常に水で濡れている渓流の岩場なんかに生息します。ここはいつ来ても水がある場所ではあるのですが、まさか林道で見つかるとは思いませんでした。新しい発見です。
クワズイモの葉の上に、微小な甲虫がいるのを見つけました。昆虫の糞に擬態しているようです。小っちゃい脚が可愛らしい。正体不明ですが、西表島ではまだ記録のないヤクシマコブハムシに似ています。未記載種の可能性もあるでしょう。
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16時を回ったので、一度宿泊施設に荷物を置きに行き、本番の夜に備えます。前日の石垣島では残念ながらヤエヤマヒメボタルが見られなかったので、西表島で撮影すべく、日没前に準備しなくてはなりません。あらかじめ目星を付けたポイントを目指します。そこに果たしているのでしょうか?
目的地に着くと、ホタルが飛ぶ様子をイメージしながら、背景となる風景の画角を決めてカメラをセットします。しばらくすると、人の声が近づいてきました。ホタルツアーの方々のようです。どうやら予想は的中。ここは風が入ってきにくく、近くに水辺もあるため、ホタルが出やすい安定した環境なのではないかと思います。石垣島で知っているスポットはどこも風の通り道なので、気象条件に左右されがちです。
日没を迎えて辺りが暗くなってくると、奥の方でホタルが点滅を始めました。1つ…また1つと増えていき、無数のヤエヤマヒメボタルが乱舞しています。5 mm程度しかない小さな体から発せられたとは思えないほど、強い光です。人生で一度は見ておいた方が良い光景だと思います。
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ホタルは主に地面付近を飛びますが、目線の高さにも飛んできます。今回撮れた写真はまだ理想と程遠いので、またリベンジします。
日没から30~40分でピークを過ぎ、数も少なくなってきたところで、いよいよ林道の方に移動して観察を始めます。
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葉に止まっていたアオシャクの一種。見た目がそっくりな種が多数いて、もう何が違うのか分かりません。端から同定は諦めています。直翅も決して少ないわけではないですが、鱗翅の多さには驚愕します。
森の奥へと進んでいくと、少し珍しい直翅が見つかりました。
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タイワンコバネイナゴです。森林性で、他のイナゴ属とは棲む場所が全く違います。下草のない林内でも見かけるので、樹上性なのかもしれません。見た目はイナゴそのものなのに、相当変わり者です。
水が染み出している辺りではケラの鳴き声が聞こえます。トンネルから出て走り回る個体もいました。陸・水・空のすべてに対応している万能昆虫。見かけ以上に素早いです。
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実はケラはメスも鳴きます。地中にいると出会いにくいからでしょうか?翅脈から性別を判断できます。写真の個体はメスです。
残念ながらこの日はヒノマルコロギスも、ヤエヤマオオツユムシも見つかりませんでした。この林道での成果はいつも芳しくありません。もっと奥に行けば違うのかもしれませんが。
3/20
翌日。この日は島の北側を中心に回る予定です。ところが、午前中はあいにくの雨。結構しっかり降っています。何もできないまま昼時になり、このまま車の中にいても仕方ないので、とりあえずゆっくり雨宿りできそうなところへ。
ここは地域おこし協力隊として西表島に渡り、そのまま移住された方のお店です。港からは離れたところにあるので、落ち着いて食べることができます。島野菜を使ったオリーブオイルベースのパスタをいただきました。食べ終わって少し経った頃には雨も上がってきたので、いよいよ行動開始です。
森に入ると、早速イリオモテモリバッタが飛び出してきました。
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これぞ「the 西表」なバッタ。黄色いモリバッタの仲間は、東アジアでは西表島だけに分布します。大陸から分断された後に、こんな派手な色になったのでしょう。目立ちそうで意外と気付きません。
少し場所を移動して、次はオオカヤコオロギが生息する草地へ向かいます。
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オオカヤコオロギは、チガヤなどのイネ科草原に依存します。写真のように枯れた葉に隠れていると分かりづらいですね。オオカヤコオロギが生息する草地には独特な食痕が見られるので、ポイント探しは大して難しくありません。
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湿地近くにいたヒメコガタコオロギ。駐車場横の草地など、比較的乾燥した場所でも見つかります。
さて、日中の観察が終わり、夜からはいよいよ本格的に山に入っていきます。午前中の雨で土が湿っているので、足を滑らせないように注意しながら登ります。サキシマハブも活発化しているでしょうから、周囲への警戒も必要です。
斜面を登っていたとき、これまで見たことのないカマドウマがいました。
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マダラカマドウマ属の一種とみられます。西表島では、夏から秋にかけて成虫が発生する、オオハヤシウマとヤエヤママダラウマの2種がマダラカマドウマ属として知られていますが、これはいずれとも異なり、未記載種の可能性があります。
低木の葉上にはところどころにヤエヤマオオツユムシの幼虫が見つかりました。一度だけ鳴き声を聞いたので、早いものはすでに成虫になっているようです。GW頃にはかなり賑やかになっていることでしょう。
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山をだいぶ登ってきたとき、チカチカ光るものが目に入りました。ライトを消すと、周囲を数匹のヤエヤマヒメボタルが飛んでいます。日没からせいぜい1時間しか飛ばないホタルが、21時30分を回ろうかという頃まで活動していることに驚きました。逆にピーク時にはどれほどの数が飛んでいたのでしょうか?流石にツアー客はここまで来ないので、幻想的な空間を独り占めできそうです。すぐ近くの低木に1匹のオスが止まったので、急いで生態写真を撮りました。
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こんなに小さい体からあれだけ強い光を出しているんですよね。生命の神秘を感じます。
もうほとんど飛んでいないとはいえ、ライトの強い光はホタルの繁殖活動の妨げになってしまうので、先を急ぎます。
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サキシマキノボリトカゲが葉の上でお休み中。葉や細い枝の上で眠ることで、ヘビが接近してきたときに揺れを感知して逃げることができます。
渓流に下りると、次はリュウキュウサワマツムシの様子を確認します。成虫の姿はなく幼虫だけでしたが、飼育中の個体と成長速度に大きな違いがないことを確認できました。
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折り返し地点までやって来ましたが、肝心のヒノマルコロギスは現れません。最後まで望みを捨てずにゆっくり下山します。
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……結局、麓まで何もなく真っ直ぐ下りてきてしまいました。ちょっと不完全燃焼気味なので、別の場所に行ってみます。
昼間の草地を訪れると、マエモンカマキリの終齢幼虫が見つかりました。初見です。
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見つかったのはこの1匹のみでしたが、いると分かれば後は通うだけです。そのうち成虫にも出会えるはず。
リュウキュウチクにはオキナワヒサゴクサキリの姿がありました。久米島などでは夏が成虫発生時期のようですが、西表島では夏以外でもわずかながら成虫が見つかっています。
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前年の秋に見たズトガリクビキリはいないようです。鳴き声も聞こえないので、きっとどこかに発生地があって、そこから飛んで来た個体だったのでしょう。
地表にはヤエヤマヒメアマガエルがたくさん出てきて鳴き交わしています。
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体を大きく膨らませて鳴いています。普段は平べったいのに、ここまで丸くなるとは。
宿泊地に戻りがてら、マングローブ林に寄ってヒルギササキリモドキを探しますが、今回は空振りでした。周年発生とはいえ樹上性なので、見える範囲にいつもいるとは限りません。
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というわけで、3月の石垣・西表遠征は以上で終了です。翌日は朝から港に直行して東京に帰ります。いろいろな発見がありつつも、ヒノマルコロギスと出会えなかったことは悔やまれます。いつになったら見られるやら…。
それから3ヶ月後、2度目の西表遠征の時期がやってきました。「直翅を探しに西表島に行くとしたらいつが良いか」と聞かれたら、迷わず6月下旬~7月上旬と答えます。なぜなら一番多くの種類が見られるからです。沖縄県はこの頃に梅雨明けを迎え、夏の虫が出てきます。4月~5月の間に発生のピークを迎えたものがまだ生き残っている可能性がある一方、盛夏や秋に発生するものは幼虫として見つかります。
そんなベストシーズンの西表島なので、とにかくやることが盛りだくさんです。この年から撮影方法を変えたこともあり、Webサイトの生態写真と白バック写真を早く一新することが目標です。というわけで今回は、
「見たやつ全部撮るまで終われません!ヒノマルコロギスさんそろそろ出てきて!」の旅
です。行ってきます!
6/24
前日から那覇入りし、午前中の便で石垣島に飛びます。ところが機材到着遅れにより、出発遅延が発生。石垣港に直行するバスの時間に間に合わないので、予定していたフェリーにも乗れません。もともと乗り継ぎの待ち時間が少ないスケジュールを立てているこちらにも責任はあります。仕方ありません。1時間半後の13時のフェリーになることをレンタカー会社に伝えます。
時間に余裕ができたので、離島ターミナルで食事をします。
ソーキそばをオーダー。沖縄に来たらそばを食べないと始まりません。こちらのお店は骨の硬い本ソーキを使用しています。
さて、フェリーに乗り大原港に着くと、いつものように大富方面へ向かいます。林道に入って行くと、ササキリの鳴き声がします。
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南西諸島ではいつでも見られるので後回しにしがちですが、生態写真だけでも撮れるうちに撮っておきます。
坂を上り始めると、シダの上に何やら色の違うものが。
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褐色型のナカオレツユムシです。初めて見ました。緑色型だったら気付かなかったかも…。石垣島ではピンク色の色彩変異個体が見つかっているので、もしかしたら西表島でもと期待していますが、そもそもナカオレツユムシ自体がそんなに見つかりません。
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葉の上にいたオキナワルリチラシ。国内には8亜種に分かれるそうで、これは八重山亜種になります。
第二ゲート前で引き返し、次はマングローブ林に向かいます。満ち潮の時間ですが、まだ水没はしていないはずです。到着すると、ヒルギカネタタキがテンポ良く鳴いています。
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ペアで仲睦まじくしているヒルギカネタタキ。探し方もかなりコツを掴んできました。初めはメスが全然見つからずに苦労したものです。今回はメスの方が多く見つかりました。
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この時期に西表島のマングローブ林周辺で見られるアオキンツヤイシアブ。青みがかったメタリックの体がかっこいいです。
ヒルギカネタタキの生態写真は十分に撮れたので、宿に荷物を置きに行きます。
夜は再び島の南部方面へ。林道を歩いていると、ヤエヤママツムシモドキの幼虫が見つかりました。
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6月下旬は成虫が出始めるかどうかという時期なので、ほとんどが幼虫です。
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少し開けた日の当たる林縁にはホシササキリが見つかります。この個体は名前の由来となった前翅の斑紋がほぼ消失しています。
水が染み出しているエリアにやって来ると、ヤエヤマカジカガエルが集まっていました。
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何やら相談に乗ってくれそうな頼もしさを醸し出すオス。どこに行けばヒノマルコロギスに会えますか?
ススキが生えるあたりにはヒゲマダライナゴが寝ています。開けた草原だけでなく、林道沿いでも見つかることがあります。どこからか飛んできて、そのまま定着したのでしょう。日中は警戒心が高く近づかせてくれませんが、夜なら簡単です。
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下草にはコバネコロギスが。ここに来るまでにも既に数匹見ています。
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会えて嬉しいけど、今は君じゃないのよ。
低木に視線を移すと、ヤエヤママダラゴキブリが佇んでいました。飛んでここに着地したのでしょう。
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少し光が反射してしまっていますが、割と綺麗に撮れました。こうやってゴキブリを観察していれば、きっとヒノマルコロギスが降って来るはずです(下記note参照)。
さらに奥へと進んでいくと、綺麗なスズメガがいました。
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姿はまるでステルス戦闘機のよう。生物模倣ではないそうですが、想起させるほど似ています。いつかウンモンスズメを見てみたい。
湿度が高く、地表が湿っている林床ではネッタイヒバリが鳴いていました。ヤマトヒバリとよく似ていますが、後脚が白と黒のバイカラーになっているのが特徴です。
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折り返し地点の橋に到着し、林縁や樹上に目を凝らしますが、やはりヒノマルコロギスは見つかりません。目撃されている林道でも出会えるか分からないのが難しいところです。
ヤエヤマカジカガエルを見た辺りにまで戻って来ると、ヤエヤマクチキコオロギが地表にいました。
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成虫は1年中いますが、夏の暑い時期は活発に動き回るので、こうして樹幹以外の場所でも見る機会が増えます。写真を撮ろうとしては跳ねられてを繰り返して、ふと顔を上げたとき、思わぬ光景が目に飛び込んできました。
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珍しいヘビのひとつであるイワサキセダカヘビです。樹上性で、カタツムリを食べるという変わった生態で知られています。今まで一度も見たことがありませんでした。この日一番のハイライトです。追っていたクチキコオロギのことはどうでも良くなりました。
その後は特に目立った成果もなく、車まで戻ってきました。当初の予定では、ヒノマルコロギスの情報がある別のポイントに行くつもりでしたが、想定以上に時間を使ってしまい、マングローブ林に寄りながら宿に戻ることにします。
長靴に履き替えて干潟に行こうとしてビックリ。ダイトウクダマキモドキの色彩変異個体がいました。
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どこかの植物に止まらせて撮りたいと思いながらも、逃げられることを考えたら実行に移せませんでした。累代飼育をすれば、早ければ次世代、遅くとも孫世代には同じような黄色い個体が得られるはずです。
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こちらが通常色。止まっているのはヤエヤマヒルギの葉です。先ほどの色彩変異個体がオスだったので、これでペアが揃いました。
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リュウキュウカネタタキが脱皮中です。体が鱗片に覆われているので、脱いだ直後から普段と同じ色をしています。鱗片のない跗節や触角などは色が薄いのが確認できます。
その他、ヒルギササキリモドキの幼虫などを撮ったりしましたが、成虫が見つかりませんでした。明日は別のマングローブ林へ行ってみることにします。
宿に帰ったら今度は白バック写真の撮影です。持って帰れる数には限りがあるので、出来るだけ現地で済ませます。気づけば、深夜2時半を回っていました。
6/25
少し遅めに起床し、10時に宿を出ました。道中、マングローブ林に立ち寄ると、ヒルギササキリモドキの成虫がすぐに見つかりました。
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オスの成虫を見たのは初めてです。
その後は海岸近くにあるススキ草原へと向かい、白バック用にヒゲマダライナゴを採集します。昼行性のバッタは日中に生態写真を撮りたいのですが、やはり警戒心が強すぎて逃げられました。
午後はイリオモテモリバッタが多いポイントへ。スネアオ型の成虫が車に轢かれていました…。生きた状態で会いたかった。
夕方になったので、今日からお世話になる宿にチェックインします。宿で夕食を食べた後は夜の山に入っていきます。
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麓の渓流沿いの湿った地表にはチビヒシバッタが見つかります。ヒシバッタの中でもとりわけ小さいです。
山を登り始めると、足元でナツノツヅレサセコオロギが跳ねました。
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南西諸島では平地よりも山地で見られるコオロギです。
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コバネマツムシの幼虫もいます。がに股が大きな特徴ですが、地表では白い尾肢も目立ちます。
低木上に目を移すと、ヤエヤマササキリモドキの姿がありました。
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小さな実を食べるメス。かなり人気のようで、個体数が少ない発生後期にもかかわらず、多くの個体がこの木に集まっていました。
勾配が緩やかになったところで、今度はヤエヤマオオツユムシのメスが現れました。以前GW頃に来たときはあちらこちらで鳴いているほどでしたが、6月下旬にはもうほとんど聞こえません。メスはピーク時ですらなかなか見つからないので、これはラッキーです。
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そして今度はヤエヤマヘリグロツユムシも見つかりました。
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どちらも幼虫の時期は低木上でよく見られますが、成虫になると樹上の高いところで過ごすようになるので、遭遇率が格段に下がります。この調子でヒノマルコロギスも出てきてくれることを期待します。
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地表には今が盛りのズングリウマが出てきています。雨が全然降っておらず土が乾いているので、湿った環境を好むカマドウマが少なめです。
落ち葉が乾いているおかげで、生き物の存在を音で感じ取ることができます。それなりの大きさの昆虫がいる気配がしたため音がする方向に行くと、ヤエヤマオオゴキブリがいました。
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重厚感のある見た目です。翅が千切れているようですが、リュウキュウウチキゴキブリと同じように、翅を食べ合う習性でもあるのでしょうか?
登山を再開すると、木の根元付近にアカズミゴキブリが見つかりました。
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ほんの数年前に新種として記載されたばかりのゴキブリです。さあ、そろそろコロギスが降って来ても良いんじゃないですかね?
渓流にやって来ると、今回も静かな時間が流れています。前回から3ヶ月経っているので、あのとき見たリュウキュウサワマツムシの幼虫たちは、子孫を残してもうここにはいないでしょう。
その後は特に何もなく、折り返し地点に着いてしまいました。現実は厳しい…。
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下山途中に見かけたヤエヤマハラブチガエル。鳴き声が独特で、西表に来たんだという実感を与えてくれます。
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下翅の青色が美しいサビモンルリオビクチバ。残念ながら上翅で隠れています。ちょっと触ったら見せてもらえるのではないかと思いましたが、案の定飛んで行ってしまいました。
麓まで下り、今夜中に確認せねばならないことが残っていたので別のポイントへ。
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草原にはコバネササキリ。本土にも分布するものは、今までは見てもスルーしてきましたが、これからはこういう情報もしっかり残していきます。
今回はカエルが静かだったので、クロメヒバリの鳴き声がハッキリと聞こえました。音がする辺りにそっと近寄って本体を見つけたとき、目を疑いました。
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色が与那国島のものと全然違います。しっかり鳴いていたので、羽化直後で色が薄いという可能性もありません。姿を見たのはこの個体だけで、西表島個体群がこの色なのか、色彩変異個体だったのかは現時点では不明です。なかなか興味深い調査対象を見つけました。
さて、今宵はこれで終わりです。またしてもヒノマルコロギスとの勝負に負けました。明日は最後の望みをかけて、初日に行くはずだったポイントで探します。
6/26
遠征3日目。今日が実質最終日です。東京に持ち帰る予定のない直翅は午前中のうちに白バック写真を撮影し、元いた場所に帰しに行きます。
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渓流の岩場にいたナガレトゲヒシバッタ。遠くへは逃げませんが、よく飛びます。ヒシバッタ類は飼育が難しく、まだ誰も累代飼育に成功していません。種によっても好む環境が違うようなので、何匹か採集して試しに飼育してみます。
この日は天気も良かったので、そのまま滝の上へ。
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いつもながら素晴らしい眺望。滝上からの景色の好みには「ピナイサーラ派」と「ユツン派」に分かれるようです。数年前にユツンの滝に行こうとして、途中で道が分からなくなり引き返したことがあります。
下山中にヤエヤマセマルハコガメに出会いました。
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国の天然記念物です。外敵から身を守るときは、甲羅が蓋をするかのように閉じて頭や脚が完全に隠れます。写真は甲羅から出てきて歩き出した瞬間です。いつもなら逃げるように反対方向に向かうところを、この個体はなぜか近づいてきました。鼻を蚊に刺されています。想像しただけで痒くなってくる。
一度宿に戻って準備を整え、最終決戦に挑みます。
森に足を踏み入れると、落ち葉の下からコオロギの鳴き声が聞こえました。
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潜んでいそうなところから追い出すと、ネッタイオカメコオロギのオスが現れました。ナツノツヅレサセコオロギとは違って林縁に多いイメージ。
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迷蝶として知られるルリモンジャノメの蛹です。数年前に西表島に台風で飛ばされてきた個体が繁殖し、そのまま定着して数を増やしています。今では当たり前に見られるほどになりました。同様の事象が石垣島でも起きています。
樹上を確認しながら道なりに進んでいくと、時々ヒラタツユムシの幼虫が見つかります。
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手の届かない高さにいたので、力強さをアピールするニホンザルよろしく木を揺らし、落ちてきた個体を近くの葉に止まらせて撮りました。
その後、別のところにもヒラタツユムシを発見したので、引きで写真を撮り、Twitterのフォロワーさんにどこにいるか探してもらう問題にでもしようと思いながら歩いていると、ついに”アレ”が目の前に現れました。
行く手を遮るように伸びた枝に、とにかくデカい虫がぶら下がっていたのです。広めの大きな葉に隠れて一部しか見えませんが、飴色の体に緑がかった腹部……どう見てもヒノマルコロギスです!!!
突然の降臨に、心臓が早鐘を打ち始めたのを感じます。しかもぶら下がるその体勢は、明らかに交尾中でした。それは待ち望んでいた相手が、2匹同時に登場したことを意味します。何度訪れても気配すら感じさせなかったヒノマルコロギス。奇跡的に出会えたとしても1匹が限界だろうと思っていました。ずっと探していたとはいえ、想定外の事態に心が追い付きません。しかし、これは撮影の絶好のチャンス。交尾中ならすぐに逃げられる心配はありません。
驚かさないようにそっと後ろに回り込むと、その全体像が見えました。
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枝に掴まっているのがメス、その下で産卵管を持ちながらぶら下がっているのがオスです。実物は写真で見るよりもずっと美しく見えました。特にこの個体は緑色が強く出ていたので、余計にそう感じたのだと思います。初日の夜にここに来ていたら、恐らく違う結果になっていたでしょう。こんな瞬間はもう二度と出会えないかもしれないと思い、色々な角度から何枚も撮りました。
気分が高揚したままツダナナフシがいるポイントに行ってみると、幼虫が何匹か見つかりました。明るい色なので結構目立ちます。
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成虫もいるはずなのですが、見つかるのはいつも幼虫ばかりです。ここへ来るのは大体深夜なので、もう活動を終えて隠れてしまっているのかもしれません。
林縁の低木にはキマダラマツムシの新成虫がいました。八重山では発生が早く、6月下旬には成虫が見られるようになります。といっても、まだほとんどが幼虫です。
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そのまま林縁を歩いていると、クガニフキバッタが見つかりました。
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石垣島の個体群とは違って黒い模様があります。
いつもと違うマングローブ林に下りていくと、オヒルギの葉にリュウキュウカネタタキの新成虫がいました。
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この時期から海岸林で鳴き声を聞きますが、ヒルギカネタタキよりも少し遅れて発生し、ピークは7月下旬頃です。
ヒルギカネタタキは見つかりませんでしたが、ヒルギササキリモドキの幼虫が多くいる環境でした。しばらく通いたいと思います。
さて、車まで戻る途中、視界に生き物らしき影を捉えたので上を見上げると…
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……え???
さっきこの下を通ったんですけど。しかも羽化を終えたばかりじゃないですか。戻ってくるまでにそんなに時間は経っていないから、行きの時点でぶら下がっていたはずです。貴重な瞬間を見逃してしまった疑惑が濃厚ですが、この辺にヒノマルコロギスがいると分かっただけでも大きな成果です。
6月下旬でも新成虫がいるというのも発見です。5月中にはすべて羽化すると思っていました。無理して梅雨の真っ只中に行かなくても良いのかもしれません。
もう終わりにするつもりでしたが、ヒノマルコロギスがいると分かれば話は違います。さらに周囲を捜索します。森の中にも入りましたが見つかりそうにないので、その後は林縁を中心に探します。すぐに見つかるような昆虫ではないはずなのに、この日の夜は確変に入った気がして、絶対にいると思いながら歩いていました。すでに深夜1時を回っていましたが、アドレナリンが出ていたのでしょう、疲れを感じませんでした。
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タイワンウマオイが鳴いていたので接近して撮影。毎年このサイズを見慣れてからハヤシノウマオイを見ることになるので、かなり小さく感じます。
林縁を中心に見ていき、キマダラマツムシやヒラタツユムシを簡単に撮りつつ先へ進むと…
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明日死ぬのかな?
よく来ていた場所なので、まさかいるなんて思いませんでした。森の深いところばかり探していましたが、こっちの方が効率が良いのかも…?
最終夜にしてヒノマルコロギスを一気に4匹見ることができたので満足です。次からは安定して見つけられるようになることと、幼虫の生態写真を撮ることを目標にしたいと思います。
車に戻る途中、キノボリヤモリがいました。
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胴長短足の可愛いヤモリです。オガサワラヤモリと同じく外来種で、単為生殖します。
6/27
最終日。といっても午前中のフェリーで帰るので、どこにも寄りません。大原港までの道中、路上にサキシマスジオがいました。
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生きた状態で見るのは初めてです。このままだと車に轢かれてしまうかもしれないので、側溝の方へと誘導します。その後は特に何もなく、日常へと帰りました。
というわけで、6月の西表島遠征は以上で終了です。
ようやく、本当にようやくヒノマルコロギスに出会うことができました。西表島(石垣島含む)にはまだ倒せていない相手、ヤエヤマクロギリスがいます。このときすでに、8月末に行くことが決定していました。本当はもう少しだけ後に訪れた方が良いのですが、他に確認したいことがあり、発生初期を狙います。その確認したかったことは実は今回の遠征で達成できてしまっていたのですが…。
次回の更新まで今しばらくお待ちください。
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