読まれない文章のために
この記事を届けたいのはたった1人の人。
でも、おそらくその人が読むことはないかもしれない。だから読まれないとわかっている。
先日、電子書籍を出版した。
連日、書籍のターゲット選定やターゲットの関心をとらえる言葉などを考えていた。だけど、今日はそういったことはすべてさておき、ただ書いてみたい。
今日の日を忘れないために。
こんな簡単な言葉では足りないけれど。
心から伝えたい言葉は、ただ一言。
「ありがとう」
母の命を救っていただいた看護師さんに。
老人ホーム
2020年、母が老人福祉施設に入所して間もない頃に、コロナの流行により家族の出入りが禁止された。今なおドア越しでの面会が続いている。年が明ければ3年目を過ごすことになる。
2022年10月20日夜、施設から1本の電話。
「〇〇さんが食事を喉に詰まらせました。看護師が人工呼吸を施しました。今は意識が戻って話せる状態です」
「高熱など出れば夜中に救急で対応するかもしれません。その際にはまたご連絡します」
という状況説明があった。
倒れたと聞いても、家族は施設に入れないからどうすることもできない。
「わかりました。よろしくお願いします」
と携帯を切った。
しばらくして
「意識が戻って……」
ということは
「説明はとばされてるけど、意識無くなってってことよね?」
電話中にはすぐにピンとこなかった。電話を切ってから時間が経つにつれ、後から湧き上がる疑問。
「とりあえず、様子をみて、明日病院を考えよう」
とベッドに入った。
次の日
施設での面会はできないが、家族が病院に連れて行くと言えば、病院で会える。だから、
「念の為、病院で診察を受けます」
と施設に連絡し、送迎をお願いした。
86歳を迎えた母。車椅子にちょこんと座っている。
ただでさえ小さい体が、さらに小さくなった。
「気分はどう?」
「・・・」
「どこかいたい?」
「・・・」
「私誰かわかる?」
という言葉に、やっと聞こえるほどの声で
「・・・わからん」
と母は応えた。
問診票を記入しながら、やっと状況を実感した。
食事を喉に詰まらせ呼吸停止、意識消失。
どの時点で周囲が気が付いたかわからないが、その後、スタッフが心臓マッサージと人工呼吸をして一命をとりとめた。
先生からの説明では、血液検査、CTを取った結果、意識消失による脳の異常も肺の異常も認められなかった。
また、施設へ
外出禁止のため、病院が終わればまたすぐ施設へと戻る。もし、入院となっていたら寝たきりになることは間違いないので、これでよかった。点滴も特に必要なかった。
わずか2時間足らず。貴重な付き添いの時間。
翌日、母は介助を受けながらでも、再び自分でご飯が食べられるようになっている。
生きていることに感謝したい。
人の命は紙一重。
もしかしたら、そのまま亡くなっていたかもしれない。脳に酸素が届かない状況になっていたら、面会できない病院で寝たきりになっていただろう。
また、今日も母がごはんを食べられるのは
看護師さんの努力のおかげである。
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