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猫に関するほほえましい話

  • 猫の夢

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最近の記事

『聞こえない声』No.1

足湯が大盛況で、毎日それなりに忙しい猫さんは、正直その生活に嫌気がさしていた。生真面目なチョビヒゲ猫は毎日に張り合いが出て、メキメキ元気を取り戻したが、猫さんは疲れていた。 猫さんは、自分のペースで起きて、自分のペースで食事をし、自分のペースで昼寝をしたい。足湯の開く時間は決まっていて、その時間までに会館の色々なことも済ませねばならなかった。 会館のメンバーも足湯の運営に協力しているが、それは人間の都合というもので、濡れるのが嫌いな猫さんは、人間が入る足湯という施設が、猫

    • 『猫さんの決断』(最終回)

      新紙幣がだいぶ普及して、旧紙幣は未対応の自動販売機に重宝はしたものの、徐々に見かけなくなった。しかし、チョビヒゲ猫は元気だった。 「カルマが解消されたのかもしれないね」 採れたての梨を足湯に持参した小野さんは、猫さん達を横目に、足湯に入りながらムシャムシャと自分だけ食べ始めた。 「それにしても気持ちが良いねぇ…」 日頃から、あくせく働く小野さんは、ゆったりと足湯に浸かりながら、ふぅと大きなため息をついた。チョビヒゲ猫と猫さんは、リラックスしている小野さんを見て、なんと

      • 『猫さんの決断』No.11

        ″ねこの足湯″は、小さな話題を呼んだ。 PRに熱心な番頭猫の愛らしさと、夏の暑さもあいまって、足湯には常に誰かがいる盛況ぶりだった。チョビヒゲ猫は、足湯のそばにある東屋で、木に登ってお客様に写真を撮らせたり、猫さんは、東屋の片隅で町内会が作成した肉球手ぬぐいを販売したりした。 地域で出た間伐材を使い、地元の木材で作られた足湯はかぐわしく、この所、古びた会館に籠もりきりだったチョビヒゲ猫は、足湯へお務めに来ることが心地よい刺激となった。 足湯のお客様に写真を撮られることで

        • 『猫さんの決断』No.10

          会館は久しぶりに活気に満ちていた。 突如湧いた温泉の活用について、地域の重鎮達が集まり話し合いを始めた。猫さんとチョビヒゲ猫は自分達のしたことの判断がつかず、集会の輪を横切ったり、廊下をソワソワ、ウロウロした。 その様子を察した小野さんが、猫じゃらしで2匹を縁側に誘い出すと、パタパタと猫じゃらしを振りながら「面白い事になりそうだよ」と満面の笑みを浮かべ「あの沼に白蛇がいるなんて誰も信じないから」と、2匹の不安を払拭した。  それから数え切れない回数の話し合いを重ねるうち

        『聞こえない声』No.1

          『猫さんの決断』No.9

          チョビヒゲ猫は、会館に残った大小様々な玉を処分することにした。6個は持てないので、猫さんに2つ持ってもらい、チョビヒゲ猫は残り4個を手ぬぐいに包んで運ぶことにした。道路の照り返しが落ち着いた夕方は、散歩にはちょうど良かった。 道路脇の叢を掻き分け、横断歩道を渡り、少しの下り坂を下り、右に曲がったり、左へ曲がったりして、しばらく歩くと白蛇が住むあの沼にたどり着いた。 チョビヒゲ猫と猫さんは、あちこちから集めてきた様々な素材の玉をポチャンポチャンと沼へ投げ込んだ。すると、ゴゴ

          『猫さんの決断』No.9

          『猫さんの決断』No.8

          「なんだコリャ」 小野さんは、会館の居間に転がる無数の丸い玉を踏まないよう猫さんが鎮座するちゃぶ台へやって来た。夏バテ気味の猫さんは、いつものように手際よくお茶を出す余裕は無く、丸い玉はチョビヒゲ猫の物なのか、ずっと玉をクンクンしている。 「せっかく来たのに」 小野さんは、冷たく冷やしたミルクタイプのお菓子で2匹のご機嫌を取った。チョビヒゲ猫は、先日から気になっていた、龍の玉と思われる物を見つけては会館へ持ち帰っていた。猫さんが夏バテで文句を言う元気も無い事もあいまって

          『猫さんの決断』No.8

          『猫さんの決断』No.7

          「お札だったんだよ」 猫さんは落ち着かないチョビヒゲ猫に前世の姿を教えた。 「おさつ?」 「そう。1000円札」 チョビヒゲ猫は全く意味がわからない。 猫さんは、かつてずっと1000円札と暮らしていたが、とあるご夫婦のお屋敷でお世話になっていた時、1000円札がストーブで燃えてしまった。その直後にチョビヒゲ猫が現れて、猫さんはチョビヒゲ猫と暮らすようになった。 「野口さん」 「ノグチさん?」 「そう。病気に詳しいの」 猫さんは、毎日会館に届く新聞を広げると、

          『猫さんの決断』No.7

          『猫さんの決断』No.6

          夏真っ盛りのとある日、チョビヒゲ猫は裏庭の井戸を掃除していた小野さんを横目に、龍が居なくなった井戸を覗いてみた。中は水が溢れていて、何度か水を汲み変えるとすぐにキレイになった。 「龍が暴れたおかげで今年は豊かだね」 小野さんは機嫌良く井戸の蓋を閉めた。チョビヒゲ猫は中をもっと見たかったが、熱中症を懸念した小野さんは、早めに庭の作業を終えた。 猫さんはすっかりバテていて、クーラーの効いた居間と少し暑いパントリーを行ったり来たりしている。割と暑さに強いチョビヒゲ猫は、しばら

          『猫さんの決断』No.6

          『猫さんの決断』No.5

          「金は柔らかく、銀は朽ちやすい」 久しぶりに現れた小野さんが、チョビヒゲ猫の黒い枝を眺めながら呟いた。リニューアルした博物館は大盛況で、忙しい合間をぬって会館に遊びに来た小野さんは、リラックスしながら床の間でゴロンと横になった。 しばらく元気の無かったチョビヒゲ猫は、小野さんの横で丸くなり、寄り添って添い寝した。小野さんは、隣で寝ているチョビヒゲ猫を撫でながら、目まぐるしく変化した最近の出来事を回想した。 「…いやぁ…つかれた…」 相変わらず猫さんは木の枝にハマってい

          『猫さんの決断』No.5

          『猫さんの決断』No.4

          チョビヒゲ猫は早く眠りたかったが、龍が背中に乗りなさいと言うので、仕方なく龍の背中にしがみつき、空から来た道を案内することにした。 龍はほぼ垂直に舞い上がると、チョビヒゲ猫は精一杯龍の角を沼の方角へと傾けた。龍は大きな身体をグルンと進行方向へ向けると、夜空を泳ぐようにスイスイと進んだ。 この所ずっと会館にいたチョビヒゲ猫は、自分がいる街が夜になるとこんな風景になるのかと感激した。機嫌よく飛んでいる龍は得意そうに蛇行してみせた。 眼下に沼が現れると、チョビヒゲ猫は慌てて龍

          『猫さんの決断』No.4

          『猫さんの決断』No.3

          猫さんが、沼の前で辛抱強く待っていると、ブクブクと水の中から空気の泡が吹き出し、沼の主が現れた。チョビヒゲ猫は主のあまりの大きさに後ずさったが、猫さんは平然としている。 「ソナタが落とした枝はこの枝かな」 沼の主は、チョビヒゲ猫が爪で弾いた金の枝を見せた。チョビヒゲ猫は、警戒しながらも枝をチョイチョイすると、沼の主は、そうであろうと金の枝を手渡して、そのまま沼に還ろうとした。 「ちょっとちょっと」 猫さんが慌てて主を呼び止めると、主は沼から頭を出した状態で止まった。

          『猫さんの決断』No.3

          『猫さんの決断』No.2

          猫さんは忘れていた。 博物館が再開した影響で、小野さんはあまり自治会館に来なくなった。本業が忙しくなったお偉いさんは、会館の管理を小野さんから商店街のオヤジに引き継いだが、オヤジも多忙で、ほとんど会館に来ることはなかった。 会館に残されたチョビヒゲ猫は、かつてのやる気がウソのように、ぼんやりしていた。時折バタバタと用達に来る商店街のオヤジは、チョビヒゲ猫の様子を見て、人間で言う燃え尽き症候群かもしれないと、高齢者用のご飯を置いていった。 木の枝であちこちの井戸を探ってい

          『猫さんの決断』No.2

          『猫さんの決断』No.1

          猫さんは落ち込んでいた。 夕飯を食べた後、居心地の良い自治会館からひとり、トボトボと散歩に出かけた。 5月の夜は気持ちが良く、道は暗かった。猫さんは、他の生き物に気をつけながら、ふと気になった茂みに入る。バキバキと道なき茂みを突き進むと、見たこともない湖が広がっていた。 近所にこんな場所があるとはと、呆然としていると、手前の水面からポコポコと泡が浮かんできた。思わず後ずさり、全身の毛をそばだてて警戒すると、湖から大きなヘビが現れた。 「お前が落としたのは」 地響きの様な

          『猫さんの決断』No.1

          「桃源郷」

          最近、どうも夢見が悪い。 迷いながらも葵は青信号の点滅を渡っていった。横断歩道の向こうで泣き崩れていたが、あれが葵の本心だろう。僕はなんとも思わない。

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          「桃源郷」

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          気晴らし by YK https://api.jam-community.com/song/detail/a6501e3d-ca88-11ee-8b3d-064f3e9f608e

          気晴らし by YK https://api.jam-community.com/song/detail/a6501e3d-ca88-11ee-8b3d-064f3e9f608e

          『悩ましい世』No.8

          会館では、チョビヒゲ猫がみんなの帰りを待っていた。お偉いさんは、異国のキャットフードをテーブルに広げて、珍しいお土産を披露した。猫さんをリュックから降ろした小野さんは、肩を大きく回した。お出かけのリードからようやく解放された猫さんは、いつものようにひと通り会館の隅々までニャンパトする。 会館の玄関にはお正月飾りが飾られ、お偉いさんは鍵を小野さんに託して自宅に戻り、小野さんは年末を猫さん達と会館で過ごすことにした。猫さんは相変わらずオークの木に夢中だったが、本来の用途が釣り竿

          『悩ましい世』No.8