文化人類学専攻で理系出身の私が医療法人で挑戦を選んだ理由
はじめまして。
2021年に医療法人オレンジグループに入社しました、研究戦略セクションの近藤と申します。
「オレンジにそんなセクションあったの?」とよく聞かれます。
あります。私が作りました。
今回はそんなよくわからない肩書き、矛盾ばかりのタイトルについてたっぷり語らせていただきます。
いつも自己紹介をする時、何をどこから話そうかめちゃくちゃ考えています。そのくらい伝えたいことが多いのですが、普段ほとんど伝えられないので思い切ってnoteに書き出してみようと決めました。
大学入学後から時系列順で並んでいます。短編小説のようになってしまいましたが、最後まで楽しんで読んでいただけたら幸いです。
理系なのに文化人類学の研究??
私は早稲田大学 先進理工学部へ入学し、化学を専攻していました。
なぜ化学を選んだのか。
それはなんとなく世の中を支えている物の、大元は化学物質なんじゃないかなと思い、なんか面白そうという理由だけでした。
例えばスマホの中身は、電子部品でできています。それを構成している半導体はシリコンやダイヤモンドでできています。このようにあらゆる物を遡っていくと、化学という学問に帰結されることが多いと感じていました。化学を学べば、世の中の根本を変えることもできるんじゃないかという淡い思いもありました。
実際、入学後は実験やレポートに追われ、いつのまにか化学を自ら進んで勉強しなくなっていました。
そんな中ある出来事が起こります。
私の1歳年下の従兄弟が癌で亡くなりました。
幼少期から家も近く、同じ小学校へ通い、習い事も一緒にやってきた。そんな身近で本当に大切な存在を無くしたことは、これまで生きてきた中で経験したことは一度もありませんでした。
東京に一人上京していたのもあり、なかなか立ち直れませんでした。その時に感じた様々な「葛藤や後悔」、「人が亡くなるということがどんなことなのか」頭の中でモヤモヤが残っていました。
気づけば、私は人の死に関する本を無心に読み漁っていました。もうこの時には化学から興味や関心が完全に移っていたのかもしれません。
多くの理系学生は4年次に研究室へ配属され、より専門的な勉強をしていきます。
しかし私は研究室ではなく、文化人類学のゼミへ入ることを決めます。
早稲田大学理工学部には転部せずとも、社会学や心理学などを研究できるゼミに入ることができる特別なコースが用意されています。そこでは、文系就職を目指す人、自分のように他の学問に興味を持った人、海外留学をする人など様々な人がいました。
ゼミでは「人が最期まで幸せに人生を全うできる社会とは」というざっくりとしたビジョンを持ちながら、尊厳死や安楽死、終末期医療など海外も含めて手広く研究をしてきました。
オレンジホームケアクリニックと人生会議
オレンジホームケアクリニック(以下オレンジ)は福井県で初の在宅医療専門クリニックです。オレンジを知ったきっかけは厚生労働省の「人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会」の資料です。そこでは少子高齢化社会の中でACP(Advanced Care Planning)の重要性が議論されており、先駆的事例としてオレンジが紹介されていました。
ACPは国民により馴染みやすいよう人生会議という愛称で呼ばれることもあります。詳細はオレンジの紅谷先生の記事をご覧ください。
私は人生会議という概念に大いに共感でき、人生や人の死に対する考え方が大きく変わりました。
よく日本人は「死」を忌み嫌うものとして、あまり語ろうとしないと言われます。それも一つの選択として素晴らしいものだと思っています。
ときに私は、「人が自分の死と向き合うことは、自分の人生(自分がどう生きたいか)と向き合うことでもあるなあ」と思う瞬間もあります。
交通事故に遭い、その瞬間から植物状態になる可能性は誰もが持っています。高齢者の疾病として多いのが完治が見込まれない、認知症や癌など慢性疾患の増加です。病気と向き合いながら生活をしていく、そんな世の中なのです。
人生会議を日常的にしていたら、、、本人がこれまで人生の節目でどんな考え方をしてきて、どんな人生を送りたいと思いながら生活してきたのか。「周りの人が少しでも知っているか」、「誰も何も知らないか」で本人が最期まで幸せに生きられるか否かは変わってくると考えています。
このような考えに至ったのは人生会議について文献を読んでいたからではありません。卒業論文作成の際、人生会議についてオレンジにインタビューさせていただいた時にハッとしました。
その時に感じたこと、知識として知っていた人生会議は、現場で働かれている方の認識と全く異なっていたことには衝撃を受けました。人生会議を「ハイ!今からやりましょう!」ってやるのはなかなかハードルが高い。
それよりも、「日常会話や空間から生まれる些細な会話や出来事の積み重なり」が人生会議につながるんだなあと。「その人の人生に伴走していく在宅医療だからこそ、先駆的に取り組まれていた概念だったんだ」と、とてつもない納得感を得ることができました。実はそのインタビューさせていただいた方が現在、私の上司になりました。
1通のメッセージ
卒業論文を書いていく中で自分は研究にどんどんのめり込んでいき、時間を惜しんで論文を作成していました。
ほとんど完成していたころ、指導教員の教授から1通のメッセージが届きます。
こんなぶっ飛んでいる提案になぜか心躍っていました。
私はとある他の会社へ就職する予定でしたが、本当に自分のやりたいこと、人生を賭けてなんとか成し遂げたいことを見つけてしまった気がしました。
この頃から大学院へ進学し、研究をさらに深め、実社会に広く貢献していく人間になりたいと思うようになります。
紅谷先生との出会い
オレンジでのインタビューの後、「軽井沢のほっちのロッヂでインターンをすれば現場がどうなっているかわかるし、紅谷先生にも会えるよ〜」と秘書の方から連絡が来ました。ホッチのロッヂは、「ケアの文化拠点」、まちの文化が生まれる起点を作ることをコンセプトにしており、紅谷先生は共同代表を務めていらっしゃいます。
実際に2021年2月は極寒の軽井沢の地で過ごしていました。車が凍るのはごく当たり前の光景のようです↓
紅谷先生と出会い、いろんな話を教えていただきながら、勉強会や学会にもこっそり横で参加させていただきました。
紅谷先生に自分のなりたい将来像の話をちらっと話した際に、「オレンジなら働きながら研究ができる環境をサポートできる」という提案をしていただいたのが入社を考え始めたきっかけです。この提案には心から驚きましたが、それ以上になにか自分の人生の道がひらけた感じがしました。その1ヶ月後には本当にオレンジで働かせていただいていることになります。
私は医師免許など資格もなければ、研究者の世界で何か実績を持っていたわけでもありません。
そんな私に、3年後か5年後か(もっとかかるかもしれませんが)を見据えた投資をしていただいたんだ。と心に刻みながら、何もできないながらに現在は頑張っています。
近藤くんならではの経験や体験をうまく使いつつ。
でも、初めてのところに、ちゃんと戸惑いつつ。うまくやることよりも、うまくいかないことを見つけることに喜びを感じて。
楽しんでやってください!
これは紅谷先生からいただいた自分の中での教訓です。
オレンジには本当にいろんな人が働かれています。医療者じゃないからどうだとかは全く関係なく、「むしろ医療者じゃないからこそ」のいろんな角度からの視点を大切にしている場所です。
まさか、福井でいちご狩りをしているとは、、
間違いなく誰も予想していなかったでしょう。笑
成し遂げたい夢
オレンジで私は、研究戦略セクションのアソシエイトとして働いています。(コミュニティナースが働かれているカフェで店員もしています)
実はオレンジでは肩書きを自分で決めることになっています。なんかかっこいいからこの肩書きを決めたのではありません。ここには自分がオレンジでなりたい像が込められています。
それは「研究と現場、両方の視点から戦略をたてて社会を変えていく仲間」になりたいという思いです。オレンジが社会の最先端で、様々な挑戦をしていく中で、それを学術的なエビデンスを組み合わせながら世の中に発信し、福井から社会に広めていくような人間になりたいという思いを持っています。
人類学×医療
今後、私は文化/医療人類学を大学院で学んでいくつもりです。人類学と医療、この二つの分野は今後とてつもなく大きなシナジー効果をもたらすと考えています。何をもたらすのか、これからnoteで少しづつ書き出していく予定です。
人類学の研究はフィールドに出て実際にその地に身を置き、感じたことをベースに論文という形で世の中に発信していくものです。紅谷先生を含むオレンジスタッフの想い、制度から埋もれてしまっている地域の潜在的ニーズ、それらを社会全体を巻き込みつつ、
「人が最期まで幸せに人生を全うできる社会」を作っていきたいと本気で考えています。
2021年はそんな「大きな挑戦」における、ほんの小さな一歩を踏み出したにすぎません。今後どんな試練が待ち受けているのか想像もできませんが、「自分の下した決断には絶対に後悔しない」という大学受験時代に培ったマインドを武器に精進していこうと思っています。このマインドを持つようになった話はまた別の機会に、、、
一見矛盾ばかりの人生を歩み、どんな人間で、何を考えているのかを知ってもらうためには、ここにたどり着くまでの時間と内容を必要としてしまうのが近藤です。
ここまで辛抱強く読んでくださった皆様には感謝しております。
以上でFULLバージョンの自己紹介を終わらせていただきます。ありがとうございました。