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〜『鬼滅の刃』全巻を読んで色々と思うことの呼吸〜終の型『完成し続けていくメッセージ』
〜以下、本論文(笑)の注意事項です。〜
※ド派手にネタバレします!
※作家や作品のネット情報とかソースは一切なく(そーゆーの読まない)、私の30年以上のマンガ読み人生から生まれた勝手な分析や予想です!
※一切ディスってないです!
愛してます!
※壱の型から終の型まで、順にお読みいただけるとありがたいです。
それではどうぞ!!
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『鬼滅の刃』の作者がおそらく、影響を受けているであろう作家群は、冨樫義博、藤田和日郎、荒木飛呂彦。。誰もが世代であれば影響を受けるであろう大作家群たち。しかし、その偉大なる作家群に対し『負けない!』とか『超えてやる!』などという気概が感じられない。『自分なんかがすみません』という声すら感じる(その精神が最後の手紙へと繋がっているのは前述のとおり)。
煌びやかで骨太、迫力と気概、圧倒的な信念と個性を持つ、これら大作家群を前にすれば、煉獄さんを前にした炭治郎のように絶対敵わない気持ちになるのも無理はない。
しかし、確実に『鬼滅の刃』には優れている点がある。それは読者や世間を巻き込んでいく力だ。
映画や漫画などコンテンツヒットの定石はいくつかあるが、『鬼滅の刃』に至っては全てが緻密に計算されヒットするように仕組まれていたのはもちろんである。
アニメから誘導して漫画へそして、また漫画からアニメへ、さらに映画への再誘導。最終巻と映画公開のタイミング、フィギュアなどの玩具系、衣類はもちろん食品グッズ販売の種類、タイミングも徹底していた。
見事だったのは炭治郎たちの羽織りの柄を使った普及作戦だ。ご存知のとおり昔ながらの古典柄を使った各キャラクターの羽織の柄は権利料が発生しない。したがって、『鬼滅の刃』と謳わなければいくらでも複製できてしまう。『いや、あんたこれめっちゃ鬼滅人気にあやかろうとしてるやん!!(関西弁)』という姿勢が見え見えの、しれっと柄だけ使っているグッズや飲食物が大量に売られた。それが社会現象となり漫画アニメに興味のない方々にも『鬼滅の刃ってなに??』と関心を向けさせていった。模写を確信犯で拡散させていった初音ミクの作戦に近い。
そして、外見内面共に個性的なキャラクターの象徴的な色、柄、アイテムを身につけることで誰でも"推し"を表現でき、簡単にコスプレすることができる。
竹を咥えたら瞬間で誰でも禰󠄀豆子になれるのである(ところでこの禰󠄀豆子という、全く喋れないのに物理的な攻撃力は高く可愛い、太陽から守らなければいけないのにひとを食うかもしれない、という、なんとも言えないフェティシズムを刺激するキャラクターは非常に優れたヒロインで、これもまたコスプレ要素として重要である)。
読者が"遊びやすい“素材を大量に投入しながら、読者以外の世間を巻き込み、それがさらに読者を拡大させる。遊びの素材の豊富さと効果的な種類、投入タイミング。とてつもなく優秀な編集者が周囲にいてブレインとして『鬼滅の刃』のワールドを作り込んでいったに違いない。
しかし、とは言うものの。
私自身はここまで強烈に自分を押しつけてくるいわゆる我が強い作家と作品は、なかなかないと思う。
クラスで一番大人しく見えて、実は最も気が強くどんなことがあっても自分を曲げない子、というようなイメージ。
ひとの思いは何よりも強い、この世で一番強い!
ということを最大のメッセージとして、鬼とひととのバトル形式のエンタメに昇華しそこに生へのエールを最大限に込める。
ここまでの論法を成功させ、きちんと、強烈に、しつこく!自らのメッセージとしてこれ以上ないほどに押し付けがましく!伝えることができる作家が今までいただろうか。
『あとは、読み手の方がご判断くださーい』などとは、一言も言わないこの強さ。
最終的には作家の思い通りに作り込まれており、作品のメッセージのために全ての商業的作戦は利用されていると言ってもいいほどだ。
太々しいまでのしたたかなこの強さが、もしかするとこれからの強さなのかもしれない。
一見無個性で流されがち、弱々しく見える今の若者たち、現代を生きる我々にもこの強さが宿っている。
これは今までにはない、いや、見過ごされ軽視されてきた強さかもしれない。
だからこそ新たな希望がある。
炭治郎の子孫の炭彦は言う。
『人の人生は物語だから
僕の人生は
僕が主人公の
僕だけの物語』
現代的な相互メディア的要素をふんだんに兼ね備え、作品自体が漫画の域を超えたメッセージ性を放ち、二次元に留まらず現代へ生きる我々の現実へと道標をくれる。
そう、ここから先は作品を読んだ我々が作品のメッセージを抱えながらこの現代を生き抜いていくこと、そして自分だけの物語を生み出していくことで『鬼滅の刃』はこれからも"完成し続けて"いくのだろう。
〜終わり〜
※長々と読んでいただきありがとうございました。必殺技がなぜ『呼吸』なのかとか、色々ほかにも勝手に書きたいことがあったのですが、もしまた機会があれば喋らせてください。感謝。