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これからのオフィス、これからの仕事環境(情緒編)
これからのオフィス
設計・監理を担当させて頂いたオフィス建築が1月末に竣工し、開所式から早くも1か月が過ぎました。
↓↓開所式の様子はコチラをご覧下さい↓↓
設計者として、企業のミッション・ビジョンを体現するための建築の在り方を考えるのはもちろんですが、一方で「リモートワークの浸透によるオフィス利用機会の減少」や「建築の持続可能性」といった世の中の流れを踏まえ、「これからのオフィスを建てる」という事にも向き合いました。
帰りたくなくなるオフィス
リモートワークが進んでいる会社環境で出社する意味のあるオフィスとは
「わざわざ出社しなくてもいいんだけど、ここで仕事するとなんか集中できるんだよね」
と思える環境ではないかと考え、自分の中の「隠れテーマ」として「帰りたくなくなるオフィス」の計画を目指しました。
そのためには仕事に向かうための「空間のデザイン」ももちろん大切ですが、それに加えて「室内環境のデザイン」が必要です。
集中できる室内環境デザイン
人の身体は私達が認知している以上に多くの情報を感じとっています。「温度」もその中のひとつ。
オフィスが適温でなければ、仕事に割くためのエネルギーをじわじわと体温調節に奪われていたり、集中力が持続し難かったり。
人の持つセンサーは思っている以上に繊細で敏感です。
オフィス環境の温度管理の在り方には様々なパターンが存在し、企業・オフィスのコンセプトで様々なアプローチが考えられますが、基本となるのは外皮性能(断熱性能)を高めて、熱負荷・空調負荷を減らし、温度コントロールしやすい状況を作る事です。
今回の施工を担当された「おばま工務店(元・住まいず)」さんには、しっかりとした断熱・気密を施して頂き、異形で高低差のある内部環境の温度のムラを軽減しています。
温度ムラが少ないと、肌に触れる空気の角が取れたような柔らかさが感じられます(日頃から温熱環境を意識していないとピンと来ないかも知れませんが…)。
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また、熱損失の大きくなるガラス部分には、熱を通しにくいアルゴンガスを注入したトリプルガラスなどを採用しています。
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他にも様々な空調・換気計画の工夫などもありますがだいぶマニアックになっていくのでこのあたりで…。
1月末のまだまだ寒い時期のお引き渡しになりましたが、今年の冬を快適に過ごして頂けたようです。
今回、木造建築を得意とする「おばま工務店」さんに施工して頂けるという事で、鹿児島県産の檜の構造材、杉の内装材を用いた計画としました。
建築性能としての温かみもありつつ、木材ならではの柔らかい空気も持ち合わせた空間となりました。
オフィスデザインと環境性能の両立
素晴らしい建築・空間デザインに心奪われるのは素晴らしい事ですが、そこで日々過ごす人達が「夏は暑いし、冬は寒い」とストレスを感じ、それをカバーするために空調・換気により多くのエネルギーを注ぐ必要があるならば、それは「これからのオフィス」では無いように思います。
今回設計させて頂いたオフィスにいろんな方々が訪れて、「触れる空気の柔らかさ」などを感じとってもらえたら嬉しいですし、「自分の住まいや職場も変えていこう」と動いて頂けたら最高です(設計のご依頼お待ちしてます)。
次回「論理編」
今回は割と感情的な心地よさを中心に述べてみた「情緒編」ですが、次はその裏付けになっているスコアをまとめた「論理編」としてみたいと思います。
なにをもって「良い性能」と言っているのか
デザインと並行して何を見据えているのか
などなどをオープンにできる範囲で。