ラストマイルは2回目以降だとより泣ける※ネタバレあり

アンナチュラルにハマって初めてドラマのBlu-rayを買い、MIU404も当然どハマりし、ずっと楽しみにしてましたラストマイル。2回目観ました。

ネタバレありの感想と、映画を見た上で主題歌「がらくた」に感じることをつらつらと書いていきます。

映画を観る前は物流業界の問題がテーマだと思っていた

もちろん物流業界の問題は大きなテーマとしてあるものの、働く人の精神疾患というまた大きいテーマが横たわっている映画でした。

中村倫也さん演じる山崎の人事データが映ったとき、消去を確認するダイアログの後ろに「休みが多い」って書かれていたのが見えたんですよね。そこからも山崎が心身ともにギリギリの状態だったことが伺えます。

満島ひかりさんもすごく良かった。爆弾を押さえながら「3年目、眠れなくなった」と言ったときにぽろぽろ溢れてきた涙が痛々し過ぎて。。

精神疾患を患っていたことが明らかになったのは山崎とエレナだけど、実は阿部サダヲさん演じる八木も、あのままの状態が続いたら可能性あったんではないかな。最初はエレナや上層部からの電話に対して怒りまくってたけど、エレナから爆弾が仕掛けられている可能性のある商品を探してほしいと言われたときの「じゃああなたが探してください」という覇気のない声。

ただ疲れていただけかもしれないけど、ちょっとドキッとしてしまいました。いつ爆発するかわからない爆弾があるかもしれないのに、「もうどうでもいいや」って思ってしまう状態。個人的に阿部サダヲさんが好きなこともあり、胸が締め付けられてしまった。。

仕事がしんどくて心や身体が耐えられなくなってしまうこと、誰にでも起こり得ます。連続爆破事件という非日常の裏で、精神疾患を患いながらも戦う人(エレナ)や、何かのきっかけで取り返しのつかないことをしてしまう人(山崎)という、私達の身近なところにある問題が同時進行している映画でした。素晴らしかった。

結局、物流問題に対して末端の消費者ができることとは

1個の荷物を配達して150円、不在や受取拒否があると現場まで持って行ったのにお金にならない。ずっとその世界で働いて、それが当たり前だと思っている父と、全く別の業界からドライバーに転身して違和感だらけの息子。

宇野祥平さんの「誰も親父のこと大切にしてないよ」という悲痛な叫びは胸に来るものがありました。

私も物流業界に身を置いたことはないので、宇野祥平さん演じる息子・佐野亘に共感してしまいました。上からの指示で持ち帰りになった荷物の配送料はもらいたいし、お昼休憩は1時間欲しい。しかし、火野正平さん演じる父・佐野昭は「それは違う」という態度。

ただ、一般消費者としては安い送料で早く届くのが一番うれしい。だからデリファスのような送料無料の大手ECモールを使ってしまいます。けれど、その便利さの裏には佐野親子のような搾取される人がいるんだなと思うと、送料が安いことを手放して喜べなくなる。

自分の収入は増えてほしいけど、サービスや商品の値上げはしてほしくないって、矛盾してるんですよね。サービスや商品の値上げは、それを提供する誰かの収入を伸ばすことにつながるから。世の中の全員が値上げを拒否していたら、自分の収入も増えない。

けれど、値上げがあると生活が厳しくなる人も多くいる。にわとりが先かたまごが先か、みたいな話になってきました。むずかしい。

私の頭では、「余裕があるなら適正な送料が発生するサービスを積極的に利用する」くらいしか思い浮かびません。「動物実験をしていないメーカーの商品を購入する」「環境問題に積極的に取り組む企業に投資する」などと同じように、適正な送料を配送業者に払っている企業のサービスを優先的に使う、という動きも出てくるかも。(もうあるかも?)

あとは、以前から言われていることだけれど、できる限り再配達をなくすことか。

1回目では理解できなかった部分も、2回目でなんとなく理解できたことが多かった

アンナチュラルもMIU404もそうですが、なにしろストーリーがめまぐるしく変化するし伏線も多いので、1回観ただけでは「どういうこと?」という部分もいくつかありました。しかし2回目になると見え方が変わるし、「なるほど、こういうことだったのか」と思えるところも。そんなのをつらつらと書いていきます。

エレナがアメリカ本社の株価のために偽広告の報告を遅らせたこと

1回目では、正直「そんなことのために警察への報告を止めるなんて、主人公に共感できないかも。。」と思ってしまいました。しかし、「精神疾患による休職からの復帰1発目の職場で失敗はできない」というエレナの事情を知ってからだと、見え方がガラッと変わります。

アンナチュラルのミコトやMIU404の桔梗隊長のように、エレナも強くかっこいい女性でした。デリフォンが爆発の原因かもしれないという段階では素早く回収に回っていたし、偽広告についての報告を翌朝まで待ったからといって直ちに人の命に関わるわけではないという判断だったのだろうと思います。

エレナが夜中に通話していた相手

「爆発で誰かが死んだとしても、知ってる人じゃないし、世界では毎日どこかで人が死んでる」「大丈夫、私はやれる」という通話の相手は、アメリカ本社のサラでした。この発言に対してサラがどう返事をしたのかはわからないけれど、こんな状態のエレナにそのまま仕事をさせるなんてかなりやばいと思わざるを得ない。。

最後の「私はどっちだと思う?」という一言は、「精神疾患による休職から完全復帰できるのか、それともまた潰れてしまうのか、どっちだと思う?」と解釈しました。おそらくエレナは、これまでそのどっちも見てきたのかな、と。

山崎が結婚について悩んでいたという同僚の証言

映画を観ている私達からの目線だと、山崎はまともにロッカーに鍵をさせないほど疲弊していて、しかし飛び降りるときは少し笑みを浮かべるほどに、仕事で追い込まれて正常な判断ができなくなったことが理解できます。しかし、仁村紗和さん演じるまりかや周囲の同僚は、それを知らない。

本人は植物状態だし、遺書がないから明確な原因がわからないんですよね。そこで、警察から聞き取りされたときに「結婚に悩んでるようだった」という同僚がいたかもしれない。

結婚って幸せなことだけれど、もちろん大変なこともあります。決めなきゃいけないことが多くて、ときには相手とケンカになったりすることもあるでしょう。そんなときに、ぽろっと「結婚って大変」みたいなことを山崎がこぼした可能性は十分あります。

特に仕事の愚痴を言いにくい相手だと、「最近元気なさそうだけど大丈夫?」なんて聞かれたら、とりあえず「実は結婚する予定なんだけどうまくいってなくて〜」みたいなことも言っちゃいそうですよね。で、警察に聞かれたときに同僚がそれを証言しちゃう。

もしくは、当時同僚だったディーン・フジオカさん演じる五十嵐が、会社以外の原因を作りたくて結婚のことを言ったのかもしれない。

こう考えてみると、仕事が原因で飛び降りたとしても、それを会社が隠蔽したら婚約者や家族に原因があったのではというストーリーが簡単に出来上がってしまう。これってすごく怖いことだなと思いました。

まりかの罪の贖い方

まりかからすると、「ブラックフライデーが怖い」という山崎の発言から会社に原因があることは明らか。でも、「結婚に悩んでいた」という証言があるから自分が原因かもしれないという思いもある。

自分には原因がないということを証明できないから、エレナに「私は罪を贖います」と言った通り、自分の命を捧げるという意味で1件目の爆発にあの手を使ったんですね。

そして、「世界は罪を贖ってくれますか」という問いに対応するように、飛び降りの原因を作ったデリファスをターゲットに爆破事件を計画し、さらに「安さを求める消費者」も山崎を追い詰めた間接的な原因だとまりかは捉えたんだなと思いました。だから荷物の受け取り手が直接の被害を受ける方法を選んだのかなと。

映画の中でまりかのパーソナルな部分は語られませんが、会社へ罪を贖わせたいなら倉庫が直接被害を受ける方法でも良かったはず。しかし、デリファスの利用者が直接爆発の被害を受ける方法を選んだのは、「会社は」ではなく「世界は」と言ったまりかの思いがあるはずです。

五十嵐が慌ててロッカーを探していた理由

エレナが岡田将生さん演じる孔に五十嵐が来ることを伝えたあとに、五十嵐が慌ててロッカーを探すシーンが入るので、てっきり時系列もそのままかと思ってたのですが、五十嵐の服装を見ると多分違います。

ロッカーを探していたときの五十嵐は、山崎が飛び降りた日に着ていたシルバーっぽいジャンパーを着ているように見えました。あれは、飛び降りの直後に山崎の遺書を探していたのではないでしょうか。

そのあと、山崎が飛び降りた場所からベルトコンベアを見下ろす五十嵐のシーンがあります。ここは、もとの時系列に戻ってきたところかと。

五十嵐は山崎が飛び降りたあの日から、遺書という存在しない爆弾をずっと探し続けているということではないでしょうか。

孔が山崎のロッカーを見つめるラストシーン

ラストマイルは、センター長に任命された孔が山崎の「2.7m/s 70kg →0」というメモを見つめて終わります。最初のシーンは、事件前に同じメモを眺める孔の姿。表情が全く違います。

山崎の飛び降りや爆破事件の真相を知ってから、そして自分がセンター長になってからでは、あのメモの重みが全く変わってきますよね。

エレナの前のセンター長も一人で抱え込んでいなくなってしまっているので、「自分も山崎のようになってしまうかも」という気持ちはもちろん、「自分が誰かを追い詰めて、第二の山崎やまりかを生んでしまったらどうしよう」という思いもあるはず。

というか一番歴が長い孔が2年というのは、どれだけ人が入れ替わっているのか。。エレナもいなくなり、いろいろな不安が一気に押し寄せている孔を支えてくれる人がいてほしいと願うしかありません。。

米津玄師さんの「がらくた」の歌詞が映画に寄り添っていた

映画を観る前、主題歌の「がらくた」の歌詞がストーリーとどう絡むのかピンときていませんでした。そしたらまさかの山崎とまりかにフィーチャーした歌詞だったとは。。

私の解釈ですが、「がらくた」は精神疾患を抱えている人と、その人とともに生きる人のための歌だと思っています。
例えばサビの部分。

例えばあなたがずっと壊れていても 二度と戻りはしなくても
構わないから 僕のそばで生きていてよ
どこかで失くしたものを探しにいこう どこにもなくても
どこにもなかったねと 笑う二人はがらくた

米津玄師「がらくた」

精神疾患を患うと症状が出る前の状態に完全に戻るのは難しく、一生付き合っていくことになるケースも珍しくありません。サビの後半は、「病気をする前のあなたに戻れなくても、一緒に笑って生きていくことはできるよ」というメッセージなのかなと思いました。

眠れない夜でも鳴り止まないスヌーズ 踊り場で黙ったままいる二人

米津玄師「がらくた」

このあたりもかなりリアルです。アラームが鳴る時間まで眠れないけど、スヌーズを止めたら会社に行かなきゃいけない、だから止められない。踊り場で止まっているように、会社を辞めることも上に抗議することもできない、疲弊しながらも今いるところから動けないんですよね。

2回目の上映が終わって席を立つとき、後ろにいた2人組が「そんなにつらいなら会社辞めればよくね?」みたいなことを大きな声で話していて、「そうじゃないんだよな〜」とモヤモヤしてしまいました。

私は適応障害で休職したあとに会社を辞めて、今はフリーランスとして仕事をしています。夫はうつで休職してから別の部署に異動し、今は通院も服薬もなしで会社に通えています。それぞれ時期が被っていないのでなんとかなりましたが、お互い大変だったなと思います。

心が疲れてしまった経験と、心が疲れてしまったパートナーを支えた経験の両方があるので、ラストマイルを観てから「がらくた」の歌詞を改めて考えてみると、めちゃくちゃ刺さってしまいました。米津玄師さんの曲はもともと大好きでしたが、「がらくた」が一番好きかもしれません。

その他の個人的な泣きポイント

アンナチュラルとMIU404のオタクなので、ミコトや中堂さん、伊吹や志摩が出てくる度に泣いていました。笑
勝俣くんと白井くんが仕事をしている姿も泣けるし、なんならラストマイル公開前の予告でMIU404のBGMがかかる度に涙ぐんでいました。笑
陣馬さんも元気に現場に出てて・・もう・・

六郎に白井くんが荷物を届けるところも良かったです。一応ふたりは顔を合わせたことがあるはずだけど、もう6年前だしお互い覚えていないのかな。六郎は手術に必要なものを待っていたからそれどころじゃなかったかもしれないし。

と思いつつ、「利用者は荷物を届けてくれたドライバーの顔まで気にしていない」という暗喩だったらどうしよう。佐野父が配送先のお宅について「小さいお嬢ちゃんがいる」と覚えていたのとの対比だったとしたら。いろいろ考えてしまいます。。。

毛利さんと刈谷さんの新バディも良かったけど、やっぱり毛利さんと向島さんのコンビが好きです。「走れ!お前は走るな!けど急げ!」みたいなとこめっちゃ良かったです。笑

ラストマイルめちゃくちゃ最高でした!!

結論、そこに尽きます。最高でした。何度でも観たい。何度でも泣ける。

オフィシャルブックとトートバッグを注文しようと思います。TBSのショップで送料を払って。


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