人知れず咲く、ねむの花 ー東北の旅2022 その2・双葉郡大熊町ー
連休を利用して、福島、宮城の海岸線を巡ってきました。
だいたい、旅行のプランは夫が決め、わたしは後をついて行く感じ。そして今回の旅の目的は「パークゴルフと、社会勉強。」とのことです。
2日間で見たこと、感じたことを少しずつnoteに残していこうと思います。よろしくお願いいたします。
◇
パークゴルフ用のクラブやボールと、急な宿泊でも大丈夫なように着替えを多めに用意して、朝8時に出発しました。
まずは東北自動道を北上し、福島県へと向かいます。
相馬市までのルートを夫に聞くと「三春の方から」の返事。以前、三春町の東隣の田村市へ行ったことがあります。そのまま海沿いに出るのねと、ルートが頭に浮かびました。
郡山ジャンクションから磐越自動車道に乗り換えて、舟引三春インターチェンジで下車。そこから国道288号線をひたすら東へ向かいます。
片側一車線の国道は、雰囲気の良い商店街やのどかな田園風景が広がっていました。そして田村市を通過し、自転車レースで有名な葛尾村との分岐を過ぎたあたりから、次第に山の奥へ。
◇
くねくねとした道が続き、しばらくして「大熊町」の標識が見えました。
大熊町は原発事故の影響を受け、一部避難指示が解除された区域があるものの、いまだ帰還困難区域が大部分の町です。
やがて、カーブを曲がると料金所のようなプレハブの建物が見えてきました。建物には大きな文字で「中屋敷スクリーニング場」という張り紙があります。
スクリーニング場って、一時立入りのための中継基地でしょう。
このまま素通りしていいのか、それとも証明が必要なのか。ここまで来て通行止めだったら…と、心配になりました。車線を変更し、プレハブの前にいる職員らしき方の前に車を停めます。
「すみません。双葉町の方へ抜けたいのですが、通っても大丈夫ですか?」と聞くと「大丈夫です。そのままどうぞ。」と声をかけてくださいました。
どうやら、前日に国道288号のバイパスが開通したようです。
もちろん一般車も通行可能。ほっとしつつ、新しく完成したトンネルを通り抜けました。
◇
しかしながら、窓から見える町の景色に、言葉を失いました。
側道には進入できないようにバリケードが設置されていて「帰還困難区域のためこの先は立ち入ることはできません」と立て看板がありました。
住宅の入り口にも一軒一軒、バリケードやロープが張られていて、物々しい雰囲気。
穴の開いたビニールハウスの中で、ぼうぼうと生い茂る草。
コンクリート部分が見えなくなるほど、蔦がびっしりと絡まった電柱。
錆びた軽トラック。
家屋よりも背が高く伸びた植木。
差し出し口をテープで塞がれた郵便ポスト。
時間が止まったままの、人の気配のない町は、しんとしていました。
ほっとしたのは、数キロ間隔で立哨されている警備の方を見たとき。通るたびに会釈をしました。
そして、青い色のランプを点灯させたパトロールカーが走っていたとき。ああ、この町を守ってくれているのだな、大変なお仕事だな、と思いました。
何より印象的だったのが、いたるところで咲く、桃色の花。
高さ3メートルから6メートルほどの木に、孔雀がふわっと羽を広げたような扇形をした桃色の花が、たくさん咲いていました。
庭木として民家に咲くもの、ガードレールのすぐそばに咲くもの。
そして、人が植えたのではないであろう、学習塾の入口に不自然に咲くもの。
緑に覆われた地で、どの花もきれいに咲いていて。
まるで、家族の帰りを待っているかのような、来てくれてありがとうと、わたしはここにいるよ、と言っているような。
きっと、人々が幸せに暮らしていた場所。大切なふるさと。逃げるように、去らねばならなかった場所。
人知れず咲く花のこと、この町の人々のことを思うと胸が痛くなりました。
そして、安易に写真を撮ってはいけないような気がして、ずっと、窓の外を眺めていました。
◇
家に帰って桃色の花を調べたところ、「ねむの木」の花でした。
ねむの木はマメ科ネムノキ属の落葉高木で、夜になると葉が眠るように閉じることから、ねむの木(ネムノキ)の名付けられたと言われているそうです。
また、ねむの花は繊細で、咲くまでに10年ほどかかる場合もあるそうです。
震災から11年。
不自然な場所に咲いていたねむの木は、風や鳥のいたずらで種がこぼれたのかな。
そして根付き、大きな木となり、愛らしい花を咲かせたのかな。
やがて双葉郡双葉町へ入り、国道6号線に合流しました。
双葉町の中心地は通行車と工事車両が多く、新しい道路が整備されていて、とても綺麗。
そして、最初の目的地である東日本大震災・原子力災害伝承館が見えて来ました。
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本日はここまで。すこし書きにくいテーマのため、言葉にするのに時間とパワーがいります。ゆっくりと残してゆきたいと思いますので、よろしければお付き合いくださいね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
双葉郡大熊町について
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