リソース管理の基本2。仕事を仲間に依頼しない管理職は罪?
こんにちは。
イベントづくり先生のオーガナイザーM(@organizermanual)です。
このnoteは、インターネットや趣味の繋がりを活かして自分のイベントを立ち上げたばかりの初心者オーガナイザーさんに向けて、個人主催イベントから起業して10年以上プロイベンターとして活動した私の経験を元に「転ばぬ先の杖」となる知識や情報をご提供しています。
今回はリソース管理の第2回目です。(前回はこちら↓)
前回挙げた4つのリソースの中で、最後に頼ることになる究極のリソース「ヒト(人)」について、イベント当日の主催者の仕事を例に挙げながら「自分のリソース」と「仲間のリソース」という観点で深堀りします。
個人主催イベントは、個人といいつつ1人では作れないことが大半。故に仲間との連携が重要になってきます。仲間から信頼され、頼られる主催者は、仲間への仕事の割り振りが上手なものです。
ぜひ、この機会にその勘所を掴みましょう!
「イベント当日は主催者は暇なくらいが丁度いい」は本当か?問題
主催者としてイベントを何度か開催していると、誰もが一度は仲間のスタッフからかけられる言葉がこちらです。
「なるべく動かないでください」
「いなくならないでね」
「主催者は何もしないで良いくらいでいいんだよ」
仲間が優秀で、リーダー想いなほど言われます。
要するに、イベント当日には主催者はどーんと構えていて、スタッフが呼びに来た時にはすぐ捕まるようにしててね!ということです。
ありがたいことですが、個人的にはこれまでの経験から、これは半分正解で半分間違いだと思ってます。
「イベント当日に主催者が暇な方が良い」理由は何か?
これが半分間違いだと言える理由は、現実問題としてイベント当日に主催者が暇になる訳がないからです。
それは、信頼するスタッフが「イベント当日は何もしないで、じっとしててください」と言いたくなる理由を考えればすぐに分かります。様々な事件が発生して、次々に判断を下さないといけないイベント当日には、主催者がいつでも捕まる状態でないとスタッフたちは困るのです。
タスク管理について説明した時に、主催者の仕事は「刻々と変わる状況の中で、今すべきこと(或いは、今はすべきでないこと)を判断し続けること」だと述べました。
これはイベント当日も変わりません。
否、イベント当日の主催者は意思決定をすることだけに専念し、他の作業は全て他の誰かにお願いするくらいでちょうど良い…つまり「イベント当日の主催者は意思決定以外の仕事を極力すべきでない」が正解です。
「自分のリソース」と「仲間のリソース」という考え方
このエピソードには、「ヒト(人)」というリソースについての重要なポイントが含まれています。
それは、主催者であるあなたの「自分のリソース」と、イベントづくりを手伝ってくれる「仲間のリソース」では、処理するタスクの優先度が異なるということです。
前回の記事では、「トキ」に余裕があれば「カネ」を温存し、今いる「ヒト」を活用するという考え方の指針を示しましたが、これは「仲間のリソース」に限ったことで、主催者が時間ができた時に「自分のリソース」を投じて現場に出ると、逆にプロジェクトの混乱を招くことになります。
主催者の時間は何よりも貴重なリソースです。
スタッフ1人の「トキ」は1日24時間ですが、2人になれば48時間に増やすことができます。しかし、主催者に与えられた「トキ」を24時間以上に増やすことはできません。
また、先に述べたように、主催者の仕事は膨大なタスクを整理して、複数の選択肢がある場合はいずれかを選び、今すべきことを仲間に指示し、今すべきでないことを仲間にやめさせる判断を下すことであり、主催者のタスクリストの最上位には常に「意思決定」があるのです。
主催者が現場作業に出て良いのは、意思決定に係るタスクが全て完了し、その上でまだ時間がある時です。(残念なことに、イベントが大きくなるほどそのチャンスは無くなっていきます…)
或いは、意思決定に現場確認を要することもありますが、それはあくまで意思決定の為に「自分のリソース」を割いているに過ぎません。
逆に言えば、「仲間のリソース」は主催者が意思決定に集中するためにあると言えます。スタッフにとっては、主催者が正しく現状を把握し、判断を下せる状況こそが、活躍しやすい現場であるのですから、まさに「せめて当日くらいはじっとしていてくれ!」というのは、彼らの切実な叫びなのです。
「頼むのが苦手」は早めに克服しよう
これは個人イベント主催者だけでなく、管理職全般に言えることですが、誰かに仕事をお願いするのが苦手な人というのが一定数います。
単に人に頼るのが下手だったり、まだまだ現場に関わりたかったり、元々人付き合いが苦手な性格だったり…理由は様々ありますが、苦手なままではリーダーとして分担すべき役割が果たせません。
特に、個人イベントを開催したい若い主催者は、本業で管理職を経験したことがない場合が多く、そういう人は、仲間に仕事を依頼したり、頼んだ仕事を評価することに違和感や抵抗感があると思います。
具体的な解決策は今後予定している「チームづくり」で詳しく述べたいと想いますが、先に言えることは、管理職の仕事も他の仕事と同じで、基本的には慣れと経験の問題であり、やってみて、失敗しないと、上達も上昇もないということです。
立ち上げ初期は気のおけない仲間と楽しくイベントづくりができるはずです。しかし、長く続くうちに、関係者が増えて、そこまで関係値のない人にも仕事を依頼する場面が出てきます。
だからこそ、まだ自分の手の内でコントロールできる間から、なるべく「仲間のリソース」を上手に使って、「自分のリソース」を空け、意思決定に集中するクセづけを行っていきましょう。
「仲間のリソース」が足りない時の主催者の仕事
最後に、非常によくある場面を想定して、あなたに釘を刺しておきます。
さて…いざって時とは?
「いざって時」に起きることは「仲間のリソース」の枯渇です。「モノ」も「カネ」もなく人海戦術。しかし、「トキ」も限られており、人員が圧倒的に足りない…どうする!?
「よーし!今こそ俺の出番だ!」と、主催者が腕まくりして飛び出し、仕事に押しつぶされそうなスタッフと共に崩れそうな現場を支える。その姿は美しいかもしれませんが、状況としてはある種の職務放棄であり、正しい姿とは言えません。
いざって時こそ、主催者の仕事は「意思決定」を下すことです。
「仲間のリソース」が足りない時、頭数が1人増えた程度でどうにかなることは稀です。それよりも主催者がすべきは「仲間のリソース」が機能できるところまで仕事の方を減らすことです。
これには「やろう」と思っていたことを止める必要があり、その判断ができるのは主催者だけです。「自分のリソース」は、いついかなる時でも、まずは意思決定を優先するのだと肝に銘じてください。
仕事を減らした結果、頭数1人でどうにかなりそうな状況を生み出してから、手伝いに走れば良いのです。
まとめ
『クールヘッド&ウォームハート』という有名な著書があります。著者のアルフレッド・マーシャルは経済学の大家ケインズを育てた人物で、彼はケンブリッジ大学の教授に就任した時に「経済学者は冷静な頭脳と暖かい心を持たねばならない」という名演説を残しました。
「ヒト(人)」に関するリソースの配分を行う時にイベント主催者に求められるのもまさにこの『クールヘッド&ウォームハート』です。
…と、口でいうのは簡単ですが、これがなかなか難しい(笑)
私も手痛い失敗を何度もしました。
でも、大事なことなので、偉そうに言っておきます。
イベントが近づく程に、脳内でアドレナリンが分泌され、興奮と緊張が高まり、何かあるとすぐ飛び出したくなる衝動に駆られます。
だけれど、主催者である「自分」と「仲間」では優先的にリソースを振り向ける先がそもそも違うのだということを認識して、冷静な判断を下せるのが、良い主催者です。
今後、具体的なチームづくりやセルフマネージメントについても紹介していきますので、ぜひ最後までお付き合いください。
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