第30話 オルっぺと1人目の神父
30. 前置詞(1) 前置詞の種類と用法
(9月5日 オルっぺ宅③)
繁華街とはいえ朝は閑散としていて、野鳥のさえずりだけが耳に心地よく響いていた。
愛犬を連れた老人が、青々と茂った欅の並木道をゆっくりと歩いてくる。
教会の前まで来ると彼は立ち止まり、小さな背中に木漏れ日を受けながらせっせと掃除している少女に優しく声をかけた。
「おはようさん」
掃除に夢中だった少女はちょっとびっくりしたが、老人に気が付くとすぐ、「おはようございます!」と、三つ編みにした髪を揺らしながらにっこりと微笑んだ。
「精が出ますね。よい一日を」
「ありがとうございます! お気をつけて」
少女は手を止めたまま彼らを見送り、彼らが無事横断歩道を渡り切るのを見届けると、再び小さな手を動かした。
ホウキもチリトリも彼女が使うにはあまりにも大きいサイズだったが、それでも彼女は器用にそれらを使いこなし、細かいゴミやチリを集めていく。
「ふぅ、……これでよし」
一通りの作業を終えると彼女は走って教会の庭に回り、庭のシンボルツリーとなっているサルスベリの木の前で一息ついた。
「おつかれさん」
と、木は優しく少女に話しかける。
彼女は、夏の暑さにも負けず鮮やかに咲き誇る濃淡ピンクの花が大好きだった。
「今日ね、新しい子が来るのよ」と、彼女もまた目の前のお母さんに話しかける。「どんな子かしら? 楽しみだなぁ」
すると一瞬、生温かい風が吹いた。
「エウリュディケ」と、背後から男の低い声がする。
はっとして振り返ると、そこには黒い服を着た大柄な男が2本の指で顎のしわをつまみながら立っていた。
「そろそろ朝食の時間だ。準備をしなさい」
「はい、……神父様」
エウリュディケは急いで教会の勝手口に向かい、中に入ると早速、朝食の準備に取りかかった。
ここでは、掃除や洗濯の他、いわゆる家事はすべて彼女の仕事だった。
と言っても、この件に関して、彼女が不平不満を漏らしたことはただの一度もない。
まだ中学生になったばかりだったが、他に身寄りもなかったので、教会で世話になっている以上、それは当然のことと心得ていたのだ。
朝食が済むと神父は、後片付けをするエウリュディケを食堂に残し、日曜日の定例となっている集会の準備のために礼拝堂へと向かった。――
「おはようございまーす!」
元気のいい子供の声が聞こえると、神父は振り向きざまに廊下を戻り、出入口へと向かった。
ドアを開けると、竪琴を背負った少年が照れくさそうな顔をして立っている。
少年は、「今日からお世話になります、オルペウスです!」と挨拶すると、両手に持っていたスーツケースを足元に置いてお辞儀した。
「オルペウス、……よく来たね」と、素っ気なく言う神父。
すると、奥の方からエウリュディケが姿を見せ、廊下を走ってきた。
「いらっしゃい、オルペウス」と、彼女はハンカチを出し、洗い物の途中でまだ濡れている手を拭いた。「わたし、エウリュディケ、……よろしくね」
「こちらこそ、よろしく! 僕のことはオルっぺって呼んで下さい、……みんな、そう呼ぶんで」
「オルっぺ? なんか、可愛い、……フフ」
2人は初対面にもかかわらず、たちまち意気投合した。
「荷物を運ぶの、手伝うわ。オルっぺの部屋は2階よ」
「ありがとう」と、オルっぺがスーツケースを持ち上げると、
「いや。荷物は私が運ぼう。エウリュディケは洗い物の続きをしなさい」
と、神父はその大きな体で2人の間に壁を作った。
エウリュディケは、「でも」と言いかけたが、神父の大きな目を見た途端、何かを察したかのように、ハンカチで口を押さえながら急ぎ足で台所に向かった。
「さぁ、おいで、オルペウス。部屋を案内しよう」
オルっぺは内心がっかりしたが、神父の体越しにエウリュディケの痛々しい後ろ姿を見ると、
「はい」と、小声で返事した。――
オルっぺは神父のあとについて階段を上っていった。
部屋の前に来ると、
「ここが、君の部屋だ。聞いていると思うが、ここでは全部、自分のことは自分でする、……いいね」
「はい」
「わからないことがあれば、遠慮なく聞いてくれ」
「はい」
「エウリュディケではなく、この私に」
「え?」と、神父の目を見るオルっぺ。
「いいね」
「……、はい」と、オルっぺは目を伏せた。――
部屋に入るとすぐ、オルっぺは出窓を開けて外を眺めた。
窓からは欅並木のある繁華街が一望でき、真下には見事に花を咲かせているサルスベリの木があった。
外の景色を見ながら、オルっぺはしばらくの間、物思いに耽っていた。――
エウリュディケ、って、可愛いなぁ。早くもっと話したいけど、……。あの神父さん、……なんか、嫌な感じ。ま、最初はこんなものか、……気にしない、気にしない。
すると、階下から、
(オルっぺ)と、囁くような声がする。
下を見ると、窓からエウリュディケが身を乗り出して手を振っていた。
「エウリュ」
(しぃっ)と、小さな唇に人差し指を当てるエウリュディケ。(話したいことがあるの。10時にサルスベリの木の前で)
(うん、わかった)
窓を閉めると、オルっぺはすっかり有頂天になって、鼻歌交じりに荷物を整理し始めた。――
日曜日の定例集会は10時から始まる。
礼拝堂から賛美の歌が聞こえると、オルっぺはそおっと部屋を抜け出し、庭に出た。
この時間になると街は活気づき、交通量も増してくるが、教会の敷地内だけは神聖な静寂を保っていた。
エウリュディケが両手の指を後ろで組みながら、サルスベリの木を見上げている。
「エウリュディケ」と、オルっぺは彼女の隣に立ち、その小さな横顔をちらっと見たが、彼女は木を見上げたまま話し始める。
「これね、わたしのお母さんなの。辛い時や悲しい時はいつも話し相手になってくれる」
「そうなんだぁ」と、目の前の木を見上げるオルっぺ。「僕も、お母さんに会いたいって思うときがあるなぁ」
「わかる、……でも、心配ないわ」と、エウリュディケはオルっぺの顔を見た。「今日からこの木は、わたしたちのお母さんよ」
「え? いいの?」と、オルっぺもエウリュディケの顔を見る。
「もちろんよ」
「ありがとう、……なんか、すごく嬉しいよ」
「フフ、……わたしも」
2人は出会いに感謝し、サルスベリの木はそんな2人を大いに祝福した。
「でもなぁ、……」
「何?」
「なんで、あの神父さん、エウリュディケと僕を近づけないようにするんだろう?」
「……」
エウリュディケはゆっくりと視線をそらした。
「さっきだって、わからないことがあってもエウリュディケには聞くな、って言うんだよ」
「……」
「それって、おかしくない?」
「……、オルっぺ」
「ん?」
「……」
「どうしたの?」
「……、ねぇ、聞いて」
エウリュディケがそう切り出すと、生温かい風が吹いた。
振り向くと、黒い祭服に身を包んだ神父が2本の指で顎のしわをつまみながら立っている。
神父は無言で彼女の腕をつかもうとしたが、エウリュディケはそれを思い切り振り払った。
「もう、嫌ぁーーー!」
と、狂気の叫び声をあげながらエウリュディケは無我夢中で庭を走り抜け、並木道に出た。
が、それでも彼女の勢いは止まらず、そのまま車道へ飛び出した。
大型トラックがどんぴしゃのタイミングで彼女を襲う。
パァーーー
「エウリュディケ!」
彼女を追って敷地外に出ると、小さな女の子が見るも無惨な姿で道路に転がっている。
辺りは騒然となった。
「エウリュディケ!」
一瞬にして変わり果てた少女の姿を目の当たりにして、オルっぺはそれ以上、動けなかった。
「エウリュディケ!」
体がブルブル震えている。
「エウリュディケ!」
顔色がみるみるうちに青ざめていく。
そしてこの叫び声を最後に、オルっぺは寡黙な少年と化してしまうのであった。――
「ども! 家庭教師のタムラです」
「先生、いらっしゃい」と、神父が出迎えた。「先日は『枝豆パーティー』にご招待いただきまして、ありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ、……わざわざお越しいただきまして、ありがとうございました。ところで、そこに供花がありましたが」
「ええ。今日は前にここにいた女の子の命日なのです」
「そうでしたか」
「ちょうど2年前ですか、……悲惨な事故でしてねぇ。もっとも、私がここに来る前の話ですが。オルっぺは、その子ととても仲が良かったみたいで、……」
「……」
「あ、でも、先生はいつも通りに授業を進めて下さい。彼の心のケアは、私の仕事ですから」
「わかりました。お気遣いに感謝します」
「どぉれ、やっぞぉ。今日のテーマは『前置詞(1) 前置詞の種類と用法』ね。はい、早速、<アテナの黙示録30>を見てみましょ。
<アテナの黙示録30> 前置詞(1) 前置詞の種類と用法
【1】前置詞のはたらき
|★名詞/代名詞の前に置いて、「とき」や「場所」などを表す修飾語句をつくる単語を前置詞という。
||例1)Look at the book on the desk.(机の上の本を見なさい)
|||||※on は「~の上の」の意味の前置詞。
|||||※on the desk(机の上の)は、名詞 book(本)を修飾する。
|||||※名詞を修飾するはたらきを「形容詞のはたらき」という。
||例2)I go to school with him.(私は彼といっしょに学校に行きます)
|||||※with は「~といっしょに」の意味の前置詞。
|||||※with him(彼といっしょに)は、動詞 go(行く)を修飾する。
|||||※動詞を修飾するはたらきを「副詞のはたらき」という。
|||||※前置詞のうしろに人称代名詞がくる場合は、目的格にする。
いがぁ。【1】から。前置詞っていうのは、名詞/代名詞の前に置いて、「とき」や「場所」などを表す修飾語句をつくる単語のことね」
オルっぺが虚ろな目でテキストを見ている。
「オルっぺ、……大丈夫か?」
「……、あのう、『修飾語句』って」と、オルっぺが呟く。
「うん、まぁ、……何か別の単語を詳しく説明する語句、ってことだな。例えば、『机の上の本』の『机の上の』っていう語句は『本』を詳しく説明しているわけだよね。『本』は『本』でも、どんな『本』なのか、ってことをさ。あるいは、『彼といっしょに行く』の『彼といっしょに』っていう語句は『行く』を詳しく説明しているわけだ。そういう語句を修飾語句、っていうわけよ」
オルっぺは無言で頷いた。
「で、元に戻るけど、例1)ね。『机の上の本』っていうのは、英語では the book on the deskってなる。英語っていうのは、大事なものを先に言う性質があるからね、『机の上の本』って言うときも、まず先に『本(=book)』って言っちゃうわけだ。で、そのあとに、『机の上の(=on the desk)』っていう修飾語句を付け足すんだね。で、ここでまた注意が必要なんだけど、前置詞、っていうのは、文字通り『(名詞/代名詞の)前に置く(品)詞』ってことなんで、前置詞 on(~の上の)は、the desk の前に置くよ。OK?」
「……」
「よって、日本語通りに単語を並べてもダメだ、ってことね。『机/の上の/本』だからといって、the desk/on/the book じゃ、『本の上の机』になっちゃうからさぁ」
「んふ」と、にやけるオルっぺ。
――おっ、反応があった。うれぴー!
「よって、例2)。『彼といっしょに』って言うときも、英語では『といっしょに/彼』の語順になるよ。そうすっと?」
「with him」
「そのとーし! with は『~といっしょに』っていう意味の前置詞ね。で、ここでまた注意が必要なんだけど、前置詞のうしろに人称代名詞がくる場合は目的格にする、っていうルールがあるよ。これは、いつだったか、<アテナの黙示録21>(=代名詞(1) 人称代名詞の格変化)でも、ちょこっと触れたんだけど、覚えてた?」
「……」
「もし、あやしかったら改めて、<アテナの黙示録21>を復習してちょうだい。OK?」
微かに口を開けて、オルっぺは頷いた。
「おしっ。んで、次、【2】を見てちょ。
【2】「とき」を表す修飾語句をつくる前置詞 in, on, at
|★前置詞 in, on, at は、意味は同じ「~に」だが、うしろにくる「とき」を表す名詞によって使い分ける。
||①in +年/月/季節
|||例)in 1960(1960年に), in September(9月に), in summer(夏に)
||②on +曜日/日付
|||例)on Sunday(日曜日に), on September 5(9月5日に), on my birthday(私の誕生日に)
||③at +時刻
|||例)at three(3時に)
いがぁ。『とき』を表す in, on, at っていう前置詞は、意味はどれも『~に』で同じなんだけど、うしろにくる名詞によって使い分けなきゃなんないんだね。例えば、『1960年に』の『に』には in を使って、in 1960 ってやるんだけど、じゃあ、なんで in を使うのか、っちゅーと、うしろにくる名詞が『年』の場合は in を使う、っていうルールがあるわけよ」
オルっぺが、こくりと頷いた。
「で、いくつか、ルールがあるんだけど、まず、①ね。うしろの名詞が『年/月/季節』の場合は in を使う。よって、『9月に』であれば?」
「in September」
「そ。『夏に』だったら?」
「in summer」
「てことさ。OK?」
黙って頷くオルっぺ。
「んで、②。うしろの名詞が『曜日/日付』の場合は on を使うよ。よって、『日曜日に』だったら?」
「on Sunday」
「『9月5日に』だったら?」
「on September 5」
「そ。『私の誕生日に』だったら?」
「on my birthday」
「そ。『誕生日に』ってことは『○月○日に』ってことで、『日付』の仲間だからね」
相変わらず、オルっぺは静かに頷く。
「んで、次、③。うしろの名詞が『時刻』の場合は at を使う。よって、『3時に』だったら?」
「at three」
「てことさ。OK?」
オルっぺは目を閉じて頷いた。
「お前、……寝てる?」
にやっとしながら、寡黙な少年は首を横に振った。
「癖なんで」と、呟くオルっぺ。
「ん。いい癖だ」と、褒める俺。
「ふふっ」
――おっ、出ました、今日一番の反応。一昔前の俺なら、「ヤル気あんのか、ゴラぁ!」と怒鳴ってテキストで頭をぶん殴っているところだが、経験上、その場限りの体罰には何の意味もないことを、今の俺は知っている。
「おしっ、んで、次、【3】を見ておくれ。
【3】「場所」を表す修飾語句をつくる前置詞 in, on, at
|★前置詞 in, on, at は、意味は同じ「~で/に」だが、うしろにくる「場所」を表す名詞によって使い分ける。
||①in +(比較的広い)場所
|||例)in Japan(日本で/に), in the park(公園で/に), in the library(図書館で/に)
||②on +場所
|||例)on a farm(農場で/に), on the street(通りで/に), on the road(道路で/に)
||③at +(比較的狭い)場所
|||例)at the store(店で/に), at the hotel(ホテルで/に), at school(学校で/に)
いがぁ。in, on, at には『とき』の他に、『~で/に』の意味で『場所』を表す修飾語句をつくる用法もあるよ。まぁ、イメージとしては、(比較的)広い場所には in を使って、(比較的)狭い場所には at を使う、ってことなんだけど、これってかなり曖昧な基準なんで、出てくる度に表現(=どの場所にどの前置詞を使うのか)を覚えていきましょ。②の例)は特に注意だな。『農場』や『通り』、『道路』には on を使うってことね。OK?」
「はい」
「おしっ。んで、<スピンクスの謎30>をやってみよう。
<スピンクスの謎30> 前置詞(1) 前置詞の種類と用法
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(1) I don’t go to school (in, on, at) Sunday.
(2) Christmas comes (in, on, at) December.
(3) I got up (in, on, at) six this morning.
(4) He works (in, on, at) a farm.
(5) We played baseball with (they, their, them) yesterday.
はい、(1)から、答え入れて読みぃ」
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(1) I don’t go to school (in, on, at) Sunday.
「I don’t go to school on Sunday.」
「そのとーし! ところで、なんで on にした?」
「『曜日』の前だから」
「そ。その理由が大事よん。ちなみに意味は?」
「私は日曜日に学校に行きません」
「おしっ。ところで、曜日、全部、書けるんだろうね」
「……」
「この機会に復習しとっか。はい、ノート。Sunday(日曜日), Monday(月曜日), Tuesday(火曜日), Wednesday(水曜日), Thursday(木曜日), Friday(金曜日), Saturday(土曜日)」
オルっぺは、せっせとノートに書き始めた。
「はい、書いたら次、(2)、答え入れて読みぃ」
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(2) Christmas comes (in, on, at) December.
「Christmas comes in December.」
「そのとーし! ところで、なんで in にした?」
「『月』の前だから。そ。はい、意味」
「クリスマスは12月に来ます」
「おしっ。ちなみに、Christmas[クリスマス]は、発音・アクセント注意ね。t は読まない、ch の発音は[ク]、……school の ch[ク]と同じだね。強く読む場所は[クリスマス]の[リ]ね。ところで、月、全部、書けるんだろうね」
「……」
「こいつも、この機会に復習しとっか。はい、ノート。January(1月), February(2月), March(3月), April(4月), May(5月), June(6月), July(7月), August(8月), September(9月), October(10月), November(11月), December(12月)」
オルっぺは、せっせとノートに書き始めた。
「はい、書いたら次、(3)、答え入れて読みぃ」
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(3) I got up (in, on, at) six this morning.
「I got up at six this morning.」
「そのとーし! ところで、なんで at にした?」
「『時刻』の前だから」
「そ。はい、意味」
「私は今朝6時に起きました」
「おしっ。ところで、数字、1~12、書けるんだろうね」
「……」
「こいつも、この機会に復習しとっか。はい、ノート。one(1), two(2), three(3), four(4), five(5), six(6), seven(7), eight(8), nine(9), ten(10), eleven(11), twelve(12)」
オルっぺは、せっせとノートに書き始めた。
「はい、書いたら次、(4)、答え入れて読みぃ」
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(4) He works (in, on, at) a farm.
「……」
「テキストを調べながらでいいよ。『農場(farm)で』って言うときは、何を使うんだったっけ?」
「He works on a farm.」
「そ。はい、意味」
「彼は農場で働きます」
「おしっ。はい、ラスト、(5)、答え入れて読みぃ」
次の英文の( )内から適語を選びなさい。
(5) We played baseball with (they, their, them) yesterday.
「We played baseball with them yesterday.」
「そのとーし! ところで、なんで目的格の them にしたの?」
「前置詞のうしろだから」
「そだ。with は『~といっしょに』っていう意味の前置詞、……前置詞のうしろに人称代名詞がくる場合は目的格にするんだった。いでしょ。はい、意味」
「私たちは昨日彼らといっしょに野球をしました」
「おしっ。はい、通してどっか、質問ある?」
「……」
「なければ、本日終了。おつかれさ~ん」
「先生」
「ん?」
「……、死者の国に行くにはどうしたらいいですか」
――この質問は、正直、きつい。
俺は努めて言葉を選びながら言った。
「んー、まぁ、死ななきゃ行けないだろうな」
「……、そうですか」
「なんだ? 彼女に会いに行くつもりか?」
「……」
「でもさぁ、死者の国に行っても、彼女に会えるとは限らないし、……。第一、お前が死んじゃったら、彼女に会いたいっていう気持ちも無くなっちゃうんじゃないのかなぁ。まぁ、俺はそっちの専門家じゃないから、よくわからないけどね。でも、もし、お前の気持ちが無くなっちゃうとしたら、彼女だって悲しむと思うよ」
「……」
オルっぺは無言で頷いた。
<オイディプスの答え30> 前置詞(1) 前置詞の種類と用法
(1) on
(2) in
(3) at
(4) on
(5) them
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