「無事に返してほしければ」を読んで (”子どもだから”という偏見を見直すのに役立つかも)
この物語は3部構成で描かれている。最初の1部と2部と最後の3部は、物語としては繋がっているが、まるで違う作品のように感じた。
1部で事件が起き、2部と3部で解決するという構成になっている。登場人物は、夫婦と長女と死亡扱いとなっている弟の長男である。物語は、2年前に川で行方不明になり死亡扱いとなっている長男を誘拐したという電話がかかってきたところから始まる。そして、その事件のさなか、さらに姉も行方不明になる。2部は、姉の行方不明に関する事件の解決が描かれ、3部では、残りの謎の解決が描かれている。
1部と2部の感想は「子どもを侮るな」である。12歳前後の長女が、どこまで理解しているのか、どこまで計算しているのか、その行動は偶然か必然か。また、事件を担当する警察官の回想シーンでも、子どものかしこい企てが描かれている。
3部のテーマは「子どもは、育ての親と血の繋がる親のどちらを親と感じるか」である。自分を誘拐した犯人を実の親と思っている子どもの心理が描かれている。「生みの親より育ての親」という諺を体現する内容である。 ただ正直、3部は、多様性や催眠術の暗示、叙述トリック的な要素もあり、ページ数に対してネタのつめこみが多すぎて、内容がわかりにくくなっているのが残念だった。
この本を読んで「子どもを侮ってはいけない」という気づきと「子どもも一人の大人である」という再認識ができた。”子どもだから”と決めつけることはしないようにしようと思った。
僕は、本を読んで、何か一つでも、気づけたり知れたりできれば、内容がわかりにくても文章がちょっと癖があっても、その本を読んだ意義はあったと考えています。”子どもだから”という偏見を見直したい人、一読の価値があるかもしれません。
タイトル:無事に返して欲しければ 出版社:小学館 作者:白河三兎
2024/3/20読了