「時を壊した彼女 7月7日は7度ある」を読んで(面白かったおすすめです)
事故で死んでしまった友人を助けるため、過去の自分に現在の記憶を上書きできる装置を使って、7月7日を繰り返す物語。
この小説は、本当に面白かった。そして本当によくできたミステリー小説だった。
基本となる登場人物は7人だが、一度に過去の自分に上書きできる人数が最大4人と限られていることや過去の自分に記憶を上書きできる回数も一人あたり最大7回といった設定もすばらしかった。
繰り返した7月7日の各結果とその時の登場人物の行動やその動機を吟味することで、謎が明かされる。繰り返される7月7日の最後の回以外は、謎を解くためのヒントであり謎を深めるためのパートになっている。
だからといって、退屈ではなく、毎回、今回の結果はどうなるのだろうか?あれ、なぜこの人はこんな行動を選択したのだろうか?今回未来の記憶を持っている人は誰だったのか?とか、いろいろ考えさせてくれる。「会話一つ違えば未来が変わる」「かやりなおせる回数に限界がある。失敗は許されない」という登場人物の不安と緊張が巧みに描かれている。世界に引き込まれる臨場感のある物語でした。
そして、7度目の7月7日では、繰り返した各7月7日の結果とその回の登場人物の行動、そして、その時誰が未来の記憶を持っていたかなどを分析し、登場人物の行動の動機となる思いや考えを明らかにしていく。
過去に記憶を上書きした人だけが、繰り返した日の記憶を保持できるという設定であることから、繰り返した日の記憶がある人物とない人物が混在する。
そのため、自分の想いに照らし合わせて、記憶にない自分の行動を推理するという謎解きも斬新で面白かった。(なお、繰り返した7月7日の行動と結果がなぜ把握できているのかについては、実際に小説を読んでみてください。)
「好きという感情も憎いという感情も内に秘めた想いや殺意は繰り返しても変わらない。だから、この状況であれば自分はこういった行動をしてもおかしくない。自分ならそうするだろう。」といった感じの推理である。
余談ですが、ある女性が、見た目かお金かでどちらの男性と結婚するか悩み、見た目の良い男性を選んで結果不幸になる。たまたま、時間を戻して選択しなおす機会を得て、金のある男性との結婚を選択しなおす。でも結局不幸になるという短編漫画を思い出しました。
「過去に戻って選択しなおしたい」という意見を聞くけど、別の選択肢が今よりよくなる保証なんて、どこにもないんだろうなと思いました。
この小説も繰り返しますが、どの結果が一番良かったかは人によるだろうなと思いました。最後に固定された7月7日が本当にベストな世界かどうかは、読んで判断してください。
本当に面白かった。ミステリー好きもタイムリープ好きも両方楽しめます。ぜひ読んでください。
作者:古野まほろ 出版社:講談社 7月12日読了
タイトル:時を壊した彼女 7月7日は7度ある