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「閻魔堂沙羅の推理奇譚(2から5)」を読んで(前向きなショートストリ好きにお勧め)

 この本は、①主人公が死ぬ。②死後の世界で閻魔大王の代理である沙羅と、なぜ死んだかの推理合戦をする。③推理が成功すると主人公が生き返り物語が変化する。このような3部構成の物語である。「被害者=探偵」ものミステリーではあるが、そこに難しいトリックがあるわけではない。過去に幽霊になった被害者が謎を解くという話を読んだことがあるが、これは、死後の世界を創ることで、純粋に被害者が死ぬまでに知っている情報だけで、推理をするという状況を実現している。
 そして、この本の最大の特徴は、謎発生から謎解きまでが非常に短いことであると考えている。物的証拠も不要で犯人との対峙もなく、誰にどうやって死んだんかを当てれば良いだけなので、推理部分は、主人公と沙羅の語りだけでで話が進む。推理時間も10分と短く、テンポの良く推理の思考が進む。主人公がわかったと描写されてからの犯人の名を描写するまでも早い。タイパの良い物語である。
 内容についても、謎解きの描写が短いことからも、謎解きがメインではなく、主人公の死ぬ前後の心の変化に重きを置いているという印象である。死ぬような経験をすれば人は変わると聞いたことがるが、文字どおり、一旦死んだことをきっかけに、現実を受け入れ前向きになったり、自己中の度合いが下がったりする。たまに推理が外れて復活しない人や変化しない人もいるが、その主人公の変化が前向きな気持ちにしてくれる本である。
 今回は2巻から5巻までの8つの逸話の感想であるが、各物語には、故事成語みたいな教訓があると感じたので、印象的なものだけを羅列する。
「家族の善行により助けられる時もある」「真摯に生きる人は救われる。」
「生きていればいいことがある」「自己中すぎると足元がすくわれる」「突き抜けた短所は武器になる」「継続的に心身共に鍛えることはすばらしい」
「理不尽な境遇に負けない人はいる」「才能は、努力して成功する」
「人に頼ってばかりの人はいざっというときに役に立たない。」
ちなみに、共通しているテーマは「あきらめず自分の力で考える」である。
なんか、堅苦しいことを書いたが、本当にテンポよく楽しく読める本である。前向きになるショートストーリ好きな人にお勧めです。
令和5年1月11日読了 
出版社:講談社 作者:木元哉多 
タイトル:閻魔堂沙羅の推理奇譚 負け犬たちの密室
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