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「ゴリラ裁判の日」を読んで(動物と意思疎通ができると社会がどうなるのかに興味ある方におすすめ)
面白かった。素直にそう思える本に出会えて良かった。そうゆう本でした。
オスゴリラが射殺されたことに対して、メスゴリラが動物園を訴えた裁判シーンから物語が始まる。
このメスゴリラは、人間の言葉を習得しており、人と普通に会話ができる。
読み始めた時、この訴えているメスゴリラは本当にゴリラ?それともゴリラというニックネームの女性?まず、それを理解するのに少し時間がかかった。
裁判シーンのあと、このメスゴリラが、どのようにして言葉を取得し、なぜ裁判を起こしたかまでの回想エピソードが描かれ、そして物語は思わぬ方向に展開し、最後には、「ゴリラか人か」が描かれる。
本当に人間とゴリラの違いは何だろうかと思った。会話が成立する時点で、人と動物の垣根が無くなっているように感じた。
見た目が違うから人間ではないと定義することにも違和感がある。人の見た目なんてそもそも違う。言葉を操り人と普通に意思疎通できるゴリラは、単に、ちょっと毛深いという特徴のある人ではないのかと思った。
意思疎通ができれば、ゴリラでも無機質な石でもなんであれ、友達にも恋人にも家族にでもなれる。それを人とみなしても良いと考える人は多くいるだろう。
ここまで、この本の説明を読んでいただいた人のなかには、ペットとは意思疎通ができ、「ペットは家族」なんて考え方、別段目新しくない、この本は何が面白いの?と思う人もいるだろう。
しかし、この本は違う。
「ゴリラ裁判の日」というタイトルであるように、ゴリラが人かどうかを単なる個人の感覚で判断するのではなく、法令に則り判断される。そして、最後には、この会話ができるメスゴリラの法律上における位置付けが整理される。
そんな「人とは」というテーマのすばらしい本である。
さらに、この本は、技術が進歩して動物と意思疎通できるようになった場合、社会がどうなるかの一つの可能性を示してくれているとも感じた。
単純に動物ともっと仲良くなれるとかではなく、人と意思疎通ができる動物が存在した場合、人は、社会は、それをどのようにみなして、どのように接して、もしくは人と同様の権利や義務を与える等、社会がどうなっていくかをも想像させてくれる本です。
今は、同性婚の議論をしているが、将来は、動物やロボットとの結婚について社会的な議論をしているかもしれません。
「人と動物の違いを定義するものはなんであろうか」そして、「動物を人とみなした場合、社会はどう変容していくのか」を考えさせてくれる本です。
ミステリーだけでなく、哲学的なことに興味がある方にもおすすめ
タイトル:ゴリラ裁判の日 作者:須藤古都離 出版社:講談社
10/20読了