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枝豆と祖父の思い出

梅雨が明けるとすぐ夏だ、そして夏は枝豆が美味しい季節。
その夏の枝豆にはちょっとした思い出がある。
僕の生家は両脇を簡易宿泊所に挟まれていた、ガキ大将ならぬジジイ大将だった僕の祖父は両脇の簡易宿泊所に暮らす日雇い労働者の仲間達を誘い、家の前に長椅子を出して酒盛りをするのが真夏の常だった。
今では信じられないが当時の都心は真夏でも夜は涼しくて、団扇でもあれば快適に過ごすことができた。

祖父は酔うと必ず家の中にいる僕を呼び出し、自慢の孫なんだと仲間達に自慢をした。
それがとても嬉しくて、少し恥ずかしかった。

酒盛りに呼び出された僕は祖父の隣で麦茶かカルピスを飲みながら大好きな枝豆を食べていた。
だから今でも真夏に食べる枝豆はあの頃の思い出を呼び起こす。 

夏生まれの僕は夏が来るたびに歳を重ね少しずつ祖父に近づいていく。
そしてあの頃の思い出からは少しずつ遠くなっていく。

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