ルックバック
2024年夏 新宿バルト9にて鑑賞
物語が終わりエンドロールが流れ始めた時に気づいたことがあった。アニメ作品のエンドロールは最初にキャラクターの声を担当された方のお名前が出てくるのが主流だが、この作品は作画チームの方々のお名前が出てきた。このことに気づいた時にこの作品に込められた思いがより一層伝わってきたように感じた。
自分が好きなこと、打ち込みたいことがあって、そしてそこそこ自信もあったりして。周囲に褒められればなおさら。しかしその世界に突き進めば進む程にどこかのタイミングで自分がいかに井の中の蛙であったかということを知る。世界は広く、自分より才があったり上手い人がいる。どんなに努力をしても追いつくことが出来ない天才と呼ばれる人が目の前に現れる。それまで大好きだったものが急に嫌になる。どうでもよくなる。心を折られる。挫折する。多くの人がそういうことを経験してきていると思う。自分だってそうだった。その時のことを思い出すと今でもまだなんかしんどいわ。
小学生の京本と藤野。京本という絵の天才を前に、藤野は漫画を描くのを辞めた。そんなふたりがあることをきっかけに出会う。
藤野は京本に先生と呼ばれて、京本にずっとファンだったと告げられ自分が京本に尊敬されているということを知る。漫画を描いて欲しいと懇願される。
そのあと、藤野が雨の中を小躍りしながら帰宅するシーンの美しいこと。心を挫かれた相手に褒められて尊敬されて、どれだけうれしかったのかがものすごーく伝わってくる。このシーンにどれだけの熱量が込められているのかと想像した。泣いた。
「じゃぁ藤野ちゃんはなんで描いてるの?」と最後に出てくるセリフの答えはこのシーンの中にあるよねぇ。そんな風に感じた。
雨の中、小躍りしながら田んぼの畦道を走るあのシーンのことだけを書いたけれど、他にも美しくて感動するシーンがたくさんあって上映時間58分とは思えない程に目が(耳も)満腹な気持ちに。
ストーリーも、声優さんも、音楽もみんな素晴らしかったけれど、
でもやっぱりこの作品は画が素晴らしい。