仮面ライダーガヴ 1話 感想

ものすごく「仮面ライダー」を感じる。それが1話を見たときの感想だった。

番組冒頭は異世界で追っ手から逃げ惑う本作の主人公、ショウマのカット。その後、扉が開き彼が落下した先は「母のいた世界」である地球。

番組の情報や関連したおもちゃ情報の解禁、そして先々月末に公開された仮面ライダーガッチャードの夏映画での先行登場を見て、「ショウマは人間じゃないのでは?」と予想している人が多かった。

その答え合わせをしていくかのごとく、とてつもない高さから落下したにもかかわらず、気を失って倒れているだけだったり、行き倒れていた彼を助けてくれた少年の始をかばいトラックに激突しても、トラックが大破し、運転席と助手席にのる男性2人が前方に飛ばされ、肝心のショウマは無傷だったりするなど、通常では考えられない展開が続く。そしてショウマの「こっちのものって弱いんだなーって思って」という台詞で、視聴者の「彼は人間じゃない」という疑いはますます深まっていくような感じがした。

始がショウマを気にかけ、彼にグミやキャンディなど、お菓子をプレゼントしてあげるのだが、それを食べたショウマは、ゴチゾウという彼の眷属である存在がお腹にある謎の口から次々と飛び出してくる。

しびれを切らした始が「もう面倒くさいから言うけど、お兄さん、人間じゃないよね?」と質問し、ショウマは、「え、どうしてわかったの??」とごまかす様子もなく話す。

ここで彼の種族のお腹には常に「ガヴ」と呼ばれる口が存在することが明らかになり、ショウマの「ガヴ」は、視聴者にとって見覚えのある、あの「変身ベルト」である、というわけだ。

この展開にはかなり驚いた。十中八九、彼は人間じゃないのだろうと筆者も思っていたのだが、まさかここまであっさり明かされるとは。

これまでのライダー作品では、主人公が人間じゃなかったり、出生に大きな秘密が隠されていたりするなどの謎に包まれているタイプの作品は、中盤まで真実を引っ張り、ここぞというタイミングで明かして視聴者を驚かせる。そして、その後の展開を大きく揺るがすことが多かった。

だが今回は違う。ここで1つ、種明かしがされた。

ただ、今までと違い、今作は変身をするための道具であるベルトがない。「ガヴ」は常にお腹に存在するものなので、隠しようがない気もする。

その後、始は出張から帰ってきた母に会うため家に帰ることになった。道中、お腹に口があるグラニュートという存在に襲われそうになるのだが、すんでのところで助けられる。彼を助けたのは、ショウマだった。

ショウマは、始が母にプレゼントするために集めていた貝殻を届けに来たのだ。

そしてここで、ショウマは人間ではなくグラニュートという種族であることがはっきりと明かされる。

身一つでショウマは戦う。人間よりは強いのだろうが、怪人体になったグラニュートには歯が立たない。

始に魔の手が迫る中、始が恐怖のあまり母に助けを求める声が、ショウマの母を守ることができなかった記憶を呼び覚ます。

自分は弱いから母を守ることができなかったのだと。

でもこれからは違う。必ず守る。そんな強い信念が伝わってきた。だから彼は諦めなかったのだ。

そして何より、始が母を思いやる様子を見て、自分が果たせなかった母との幸せな暮らしを、始には送ってほしいとショウマは思ったのだろう。

だが勝てない。そんなショウマの元へ眷属のゴチゾウがやってくる。しかも大量に。

このゴチゾウたち、愛嬌があってかわいらしい。眷属は血筋の繋がった者や配下となる者、腹心のものといった意味があるそうだ。

ゴチゾウたちのサポートによって、彼は鎧をまとった戦士へと変身する。

コンテナターミナルでのアクションは胸が躍る、迫力のあるものだった。

その後2人の戦いは激化していくが、ショウマは無事にグラニュートを倒すことができた。

これからも始との交流は続いていくかと思いきや、置き手紙だけ置いて、ショウマは彼の前から姿を消した。バイクに乗って。

置き手紙を読んで涙し、「手紙残したら化け物だってばれちゃうじゃん」と手紙を破り捨てる始を見るとなんだか切ない。

ショウマのことを知るのは始だけであり、始にとっては、信じられないようなことが目の前で起きた、夢のような時間で、大人になってしまえば本当に夢扱いになってしまいそうな、そんな経験だったのでは。

ショウマが変身する仮面ライダーガヴは、グミモチーフで柔らかい装甲だ。

戦っているうちに攻撃を受け、あっさりと装甲が取れるのだが、ゴチゾウを食べることで治っていくのは「なるほどな」と思うし、武器がガヴから飛び出すのも、武器をどこにしまってるんだろうという素朴な疑問を解決しているように思う。

そして、ゴチゾウは1度食べるとそれで終わりである。それは寂しい気もするが、そもそもお菓子や食べ物は食べることでその人の力となり、さっき食べたものが2度と元に戻ることはない。そうした演出は食べることの大切さや食べ物を粗末にしてはならない、無駄に使ってはならないといったことが伝わってくる。

あと気になることといえば、ショウマの出生と母のことである。

エンドロールに2つ目のサプライズ。彼の名前が「ショウマ・ストマック」とクレジットされた。

これで彼はただのグラニュートではなく、今作の敵であるストマック家の血を引く者であることが明かされたのだ。

ショウマは地球を「母のいた世界」だと言い、母の名は「井上みちる」である。すなわち、彼の母は人間だ。

みちるは、闇菓子の材料となり、命を落としたことが回想の中で示唆されていた。

なぜそんなことになってしまったのか、父親はどのような人物だったのか、両親の出会いやショウマと父との関係、他の家族との関係などなど、気になることが多すぎる。

おそらくみちるは正妻ではない。となると色々な問題が生じることは想像に難くないし、彼女があのような目に遭わされたことを考えると、ストマック一族と彼らの間に”何か”があったことは明白だ。

ショウマとストマック家をめぐる確執は今後明かされていくだろう。

ショウマはグラニュートだと自認している。

印象的だった、始の母が戦う2人を見て「化け物!?しかも2匹も!?」と言うシーン。それに対しショウマは反論も動揺もしなかった。それどころか、グラニュートに煽られても、「化け物だ。俺もお前もな」と返したのだ。

この言葉に、彼の強さを感じた。同時に、哀しさも。

そもそも化け物などとなじられて心穏やかでいられる存在などいないだろう。

自分は化け物だと本当に割り切っているのか。それとも、そう思い込もうとしているのか。それはまだわからない。

人間が自分たちを普通だと思うように、グラニュートも自分たちのことを化け物だとは思わないはずだ。

自分を化け物だと言うショウマの真意は、自分と同じ当たり前だったはずの存在が人間の母に牙をむき襲いかかったことで、「あいつらは化け物であり、自分も同じ存在なのだ」と思ったのかもしれない。

ショウマは、同族と戦っている、そして戦おうとしている。

そこが、彼が背負う”罪”かもしれない。

正しさや正義は、視点を変えてしまえば変わってしまう脆いものだ。武力を行使する戦いには、功罪がある。今作では、戦いにおいて誰かを守ることができるという良い点だけではなく、同時に生まれてしまう罪の部分も色濃く描かれていきそうな予感がした。

そうした光だけでなく影が描かれているところに、「仮面ライダー」らしさを強く感じたのだと思う。

ショウマの戦いはまだ始まったばかりだ。

主題歌のサビにこんな一節がある。

まぶしくて戻らない瞬間 もう誰にも奪わせない

Got Boost? /FANTASTICS from EXILE TRIBE  歌詞

「まぶしくて戻らない瞬間」はきっと母と過ごした時間のことであり、「もう誰にも奪わせない」は、2度と母の身に起こったようなことはさせないという彼の中の決意の表れだと思った。

彼がどんな仮面ライダーになるのか、どんな展開が待っているのか。これからも見守っていきたい。







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