仮面ライダー鎧武 感想

東映特撮YouTube officialにて配信されていた仮面ライダー鎧武が先日の配信でついに最終回を迎えた。

この配信が始まった頃にちょうどテレビシリーズ視聴後ずっと見ていなかった鎧武の春映画や夏映画、冬映画、FSやVシネの視聴、小説も読破し、鎧武に関連する諸々のコンテンツを完走したところだった。

こうして全ての物語を知った上で、もう一度テレビシリーズを見たいと思ったのは今作が初めてかもしれない。

鎧武の序盤は、舞台となる沢芽市の若者たちのインベスゲームがメインだ。

正直、1回目に見ていた頃は、これまで見てきた仮面ライダーシリーズと世界観が違い、あまりに独特だったので、「ちょっと自分には刺さらない作品かもな……」と思っていた。

それに、インベスゲームは所詮ビートライダーズのチーム同士の小競り合いである。そのため、彼らがなぜアーマードライダーに変身して戦うのか、何のために戦うのかがいまいちよく分からなかったのだ。そして、インベスゲームを辞めてしまえばアーマードライダーになる必要など無いように思っていた。

だが、インベスゲームの裏にユグドラシルという大企業の影が見え隠れし始め、クリスマス回からの怒涛の4エピソード(11話から14話まで)で、大きく印象が変わった。

初瀬のインベス化、裕也の失踪の真実。

チームのランク付でしかなかったインベスゲームは、人間の命を脅かすものであること、もっと先に進んでいくと、世界の終末に関わるものであることが明かされる。

特に14話は忘れられない。

主人公の紘汰が、「俺には初瀬を倒すことはできない」と叫び、膝から崩れ落ちるのだが、実はあなたが最初に倒したインベスは親愛なる仲間の成れの果てだったんですよ、という真実を視聴者、そして本人ではなく紘汰の仲間である光実に突きつけてくる演出。

そして、ユグドラシルの面々がゲネシスドライバーを使い新世代ライダーとして話に入っていく中で、鎧武の物語は大きく動いていく。

ビートライダーズ編、対ユグドラシル編、ヘルヘイムの森にいるオーバーロードという新たなる存在との戦い、そしてヘルヘイムの森に隠された真実と黄金の果実のありか。

主人公の紘汰は、とにかく人が良い。誰であっても目の前で苦しんでいる人がいたら放って置けない人だ。そんな彼は、いつだって自分のためではなく、誰かのために戦い続けてきた。

サガラの手引きもありどんどん強くなっていく紘汰。ついには人間をやめる選択まで迫られる。

それでも彼は戦い抜いた。

自分が忌み嫌われる存在になろうが関係ない。

守りたい人がいる、仲間がいるから。

もう誰も犠牲にしたくないから。

今まで誰かのために戦ってきた紘汰だったが、今度は自分が誰かを守りたいのだから、自分の願いのために戦うのだ、と決意を固め、極アームズで戦い続けた。

今作のモチーフはフルーツと鎧武者という不思議な組み合わせだったが、最終の着地点が黄金の果実という神話をモチーフにしたものにたどり着く展開は、序盤では想像もつかなかった。

誰が黄金の果実を手にし、世界を意のままにするのか。

アーマードライダーとして戦う者たち全てにそれを手にする権利はあったが、途中で降りた者、降りざるを得なかった者たちもいた。

そんな中で最後まで生き残ったのは、紘汰と駆紋戒斗の2人だった。

この2人が歌う「乱舞Escalation」はライダー史に残る名曲だと思う。

とにかく聞いてくれ。

互いの理想と理想が、正義と正義がぶつかり合う。

クライマックス、運命の勝者が決まる時、紘汰が戒斗を腕の中で抱き抱えながら、「なぜそこまで強くなったのか」という戒斗の質問に対し、「守りたいという祈り、見捨てないという誓い、それが俺の全てだ」「泣きながら、俺は前に進む」と語った。

物語の中盤で裕也の失踪の真実を知った紘汰。あれから彼は、裕也の死を胸に刻み、強くなり続けた。

それは全て、裕也に誓ったからだ。もう2度と、誰も死なせないと。

紘汰は、世界を自分の意のままにするのではなく、ヘルヘイムを全て引き連れ、仲間の舞と共に他の惑星に移住する決断をした。

全ては地球の人々を、仲間を守るために。

沢芽市は、そして鎧武世界の地球は、ヘルヘイムという超自然災害など無かったかのように、平穏な日々が戻ってきた。

鎧武を見ていると、今も宇宙のどこか、遠い惑星に紘汰や舞がいるんじゃないか?と思える。

そして、いつだって地球を見守ってくれているように思う。

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