喫茶店Nの閉店に寄せて
ここ数年で、お気に入りのお店が何店も閉店しました。コロナ禍もあり物価高もあり、ついにここもか…と大きめのショックを受けました。そのことについて書こうと思います。(以下、喫茶店Nと呼びます)
お気に入りの喫茶店の共通点を考えてみました。
① とにかく美味しい
・お冷が美味しい グラスも美しい
・良い食材を使っている
・季節の作りおきをしている
・抜群に美味しいドリンクがある 添えてある小菓子も美味しい
・いつ行っても食べられる定番メニューと季節限定メニューが、どちらも美味しい
② インテリアに独自のこだわりがある
・食器が美しい
・カトラリー、小物、布使いが可愛い
・オリジナル紙ものを作っている
・花を活けている
・花壇も美しい
・席と席との間隔が狭くない
③ その他
・あんまり混んでいない
・静かで落ち着ける
・雑誌の品揃えが好み
・一人でも長居しやすい
・スタッフの雰囲気が統一されている
キリがないので、この辺で。私が好きなお店というのは、こだわりのある個人経営で、そういう店は長く続かないのかなぁと…。
閉店の理由は分かりません。明らかに繁盛していても店を閉めるという場面を多く見てきました。逆に好きだったお店が業態変換して成功をおさめているケースもあります。
こういう時に続けることの大変さを痛感します。推し活が流行っていますが『お店の推し活』はどうしたら良いのかと考えてしまいました。
そもそも喫茶店Nは店内の撮影禁止。このSNS時代に逆行してますが、そんな姿勢に共感する常連客も多かったと思います。お店の信念を支えるファンを獲得していたように私の目には見えていました。
何かを守る為に何かを犠牲にするという覚悟を、その佇まいからも感じておりました。
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喫茶店Nにはいくつもの看板商品となるドリンクがあり『オランジュ・ショコラ』は評判でした。普段は紅茶派の私ですが、あまりのビジュアルに注文したところ、お気に入りの一品に。チョコレートと柑橘という組み合わせの美味しさを初めて認識した瞬間でした。もちろんミルクティーも絶品です。
懐かしくなり、その組み合わせをおやつとして試してみたくなりました。最近『高たんぱくおやつ』の試作に励んでいるのです。豆腐でココアプリンを作ってみました。
ココアプリンに八朔とマーマレードを添えました。ほろ苦い爽やかさとココアとの相性が良いです。試作中のプリンはもう少し改良を重ねて、またnoteに投稿したいと思います。
何かから影響を受けて、それが次の何かを生み出す。時々こうして思い返すことで、お店は無くなっても風化されないのだと自分に言い聞かせるような、そんな時間でした。
約23年で喫茶店Nは幕を閉じたそうです。そこに存在しているだけで引き締まる思いがあり、訪れる度に異空間だと感じていました。コロナ禍でも変わることはなく、その世界観に何度も救われたのです。
たくさんの感動をありがとう。いつまでも在り続けてくれることを望んでいました。
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数日後、跡地に白い看板が置いてありました。
〜Thank you for your patronage〜
一気に喪失感が押し寄せてきました。またひとつ大切な場所を失ったと思うと悲しい。けれど、何も失わない人なんていない、と何かの本で読んだことを思い出しました。
最期まで貫いたのだ。らしさを。お店だけれど概念のような、そんな気がしていました。文化だった、とすら思える。こんなに潔く終わらせてくれるなんて、やっぱり大好きです。
永く続いてほしいと願っていました。それがどんなに難しいことなのかも分からずに。幕を下ろした後も格好よかった。たくさんのお店の中で、存在を知らずに過ぎ去るお店もあります。だとしたら、出会えたことは幸運でした。
私の心の中だけでも、そっと生き続けていくのだと、思うことにしました。
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