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あの時俺のチンポは日本で一番痒かった
日曜。
気怠い1週間にうんざりしながらタバコを蒸す。
(あいつとエッチしてもう1月か…)
あれは夢だったのか。いや、確かにあった。
思い出し少し疼く。
しかし、覚えたのは快感でなく違和感。
(なんかチンポ痒くねぇか?)
違和感は確信に変わる。
この痒さは「違う」。
急いで股間を確認。若干赤みを帯びていた。
(うわ、なんやこれ…)
とりあえず執拗に股間を洗い、
現実から目を背けるように眠りについた。
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こんな色だった。
明け方。あまりの痒さに目が覚める。
ふと最悪の二文字が脳裏をよぎる。
(まさかな…)
不安を打ち消すように出社した。
仕事を始める。
しかし痒い。辛抱できない。汗が止まらない。
(どうすれば…ハッ!)
股間を湯で洗った後は痒みが引いた事を思い出す。
しかし会社には風呂はない。どうする。
(給湯室がある…!)
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お局たちが過ぎ去った事を確認し、忍び込む。
足音が聞こえない事を確認しズボンを下ろす。
(完全に蛇口と対面座位だな…)
ここでとあることに気づく。ボディーソープ。
あるわけもない。
これじゃあ洗えないよ。
焦りの中正常な判断がつかない。
(くそっどうすれば…!)
足音。
このままではちんぽどころですまない。
クビになる。亀頭だけに。
咄嗟に手に取ったのはママレモン。
すぐさま陰部に放出し、50℃付近のお湯で洗浄。
(うっ…)
「あらおおたけくんコーヒー?若いから飲みすぎちゃダメよぉ」
バレていない。
と同時にかゆみは引いたことに気づく。
束の間の休息とも知らずに。
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その日の晩、俺は薬品に頼ることに決めた。
ドラッグストアに向かおう。
そう決心した途端、上司から声がかかる。
「おおたけ、今日飲みに行くから」
最悪だ。こんな状態で酒なんか飲んだら痒みが促進するに決まっている。
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「すんません、今日大事な予定が…」
「おい!待てや!」
逃げるように退社。俺の勝ち。この時までは。
ドラッグストアでは某CMで有名な薬品を購入。
我慢できずに駐車場で添付。
スッとする。
プラセボだろうか。痒くない!(気がする)
「ははは!俺、性病じゃなかった!!!」
安堵のあまりスキップして家まで帰った。
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翌朝。
痒い。
痒いのだ。
おそるおそるナニを確認する。
そこには紅と化した物体があった。
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ダースドラゴンの色。
言葉に詰まる。どうすれば…
例のあの子に連絡してみる。
「あのさ、自分性病ちゃうよな?笑」
言えない。言えないよ!
人を疑うようで少し自己嫌悪。
でも感染経路この子だけだしなぁ。
そう思いながらも、とりあえず出社する。
仕事中。
我慢が効かない。
もういっそのこと掻いてしまおうか。
いやダメだ。
内股でナニを潰してごまかす。
デリケアエムズはもう半分になっていた。
「おい、ちょっと部長の部屋までこい」
山Pに呼ばれる。
(こいつ昨日の飲み断ったのキレとんけ?きっしょ)
そんな事を思いながら向かうと、部長以下10人のおっさんに囲まれる。
「おおたけくん、隠してること、ありますね。」
終わった。全て。崩れて膝をつく。
考えれば不自然だ。ちょちょくトイレに抜け出したり。必要に股間を気にしたり。性病の話を聞いたり。
重い口を開く。
「チンポが…痒いです…」
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世界が終わるまでは…
「よう言うた。」「辛かったな。」
「どこの風俗行った?」
みんな思い思いしゃべる。
「みんな、静かに。」
部長がぴしゃり。
「おおたけくん、ちんぽを見せてください。」
俺は頷き、ダースドラゴンを見せる。
「うわっ!」「なんやこれ!」
「終わっとるやろ!」「赤すぎやろ!」
「絶対病気やで!」
あまりの赤さにおっさんたちは逃げていった。
部長が静かに一言。
「おおたけくん、午後は休んで泌尿器科に行きなさい。」
そこからは断片的にしか覚えていない。
綺麗な看護師が俺の真紅に染まった花束にドン引きしていた事。
先生の第一声が「裸で泥遊びはしたかい?」
だった事。
診断名:亀頭包皮炎
ステロイド系の薬をもらっただけで済んだ。
なんと性病じゃなかった。
あの子との神聖な時間を「泥遊び」で片付けられたのは少し癪ではあるが。
疑った罪悪感は残りながらもすぐ会社電話した。
「俺、俺、性病じゃなかったよ!!!」
スキップして会社に戻った。
俺のあだ名は「包皮炎くん」になっていた。
完