最近読んだ本の感想④
エロマンガ表現史
概要
表現史、というタイトル通り、章ごとに設定したテーマについて歴史を記述している本。
論文的なかっちり文体で殆どおふざけなし、身内感もないのですんなり読めました。行ったことないけど夏コミ/冬コミの評論島ってこんな感じなのかな~と思いました(行ったことないけど)。
感想
面白かった点
・知らんことが意外と沢山あった
表現『史』とあるだけあって、かなり昔の部分からリサーチしているなあと思いました。劇画から手塚治虫からバブル期から現代まで、流れを追ってくれているありがたさ。
特に10~20年前あたりの「歴史としては最近過ぎるが、知らない時期」についても書いてあるのが収穫大きかったです。
「え!ロリコンって当初はそういう意味で運用されてたの!」
「え!巨乳って比較的最近の単語なの!」
「宮崎事件後の空気ってこんな感じだったのか……」
などなど。
・1章の変遷史から感じた人間の普遍性
なに大仰なこと書いてるんだって話ですが。
色んなジャンルで
『存在や良さが発見/再発見される』
→『ブームによる大量生産・大量消費』
→『量よりも質を求めていく・尖ったクオリティの物が生まれる』
→『物そのものだけでなく、作り手にも注目が集まる』
の流れがあるなーとぼんやり思っているのですが、1章の乳表現も結構これに近いな、と。
(↓の動画観て「やっぱそうだよなー」と思ったのでダイマしときます)
この本は全体的に論文チックなので、客観寄りなだけに、俯瞰して表現の変遷を捉えられるのが面白いなと思いました。
・表現規制から生まれるものがある
上記と同じつべチャンネルなのですが、↓の動画でも同じ話があったんだよな!と思い、繋がりを感じました。
(表現規制があったからこそ、多種多様な表現が生まれた、という点)
(別に規制を良しと思っているわけではないですが)
同じテーマを複数の本やコンテンツで触れることで、テーマについて記憶しやすくなったり、深まったりできるのが最近楽しいので。その点でもこの本は面白かったなと思いました。
参考:比較的近いジャンルの本
参考:比較的近いジャンルの動画
うーんと思った点
・表現『史』としては範囲が狭い
表現史、というタイトルと、本の厚さから、特に男性向け同人で気になってるあの表現はこの表現を知れるんだろうか……!と思っていたのですが、基本的に章タイトル通り+マンガの引用が多いので文字は厚さの割にないです。
特に1章については概念自体の表現変遷がメインなので、個別具体的な表現はあまり無かったかなーという印象。(個人的にロケットみたいな長乳表現ってどっから来たんや……と気になっていたのだけど、拾われてなかったぜ)
あと8,9章はほとんどないです。1~7章を深堀りした本なので、そちらが気になる人にはおすすめです。
・追っていくごとに単調な気がしてくる
これは仕方ない部分もあると思うのだが、各章の展開が似ているため、後半に進むにつれて(このパターンね……)という気持ちになってしまったのがもったいなかったな、と。
【大体の章の流れ】
・前提(表現そのものの説明)
・変遷
・最初の表現者は誰なのかを追う
・最近の潮流
余談ですが、BLについてそんなに触れられてない(最近の潮流、のところくらい)ので、所謂『エロマンガ』って基本的には男性向けなのかな?と思いました。(そのへん疎くて……)BL史的な本をたまに見かけるから、近いようで別ジャンルなのかもしれない。そっち関連の本を読んだらまた理解が深まる気がする。
まとめ
・論文的、客観的な文章が好きなら読みやすいと思う
・各章を見てビビッと来るなら読んでみてほしい
・20~30代の人はちょい上世代の話で「へー!」てなれる