
華奢な体の彼女
小学校からの付き合いの友達がいる。
出会った当初から彼女は頭が良くて可愛くて、
絵もうまくて優しくて…男女問わず彼女に憧れを抱く人間は多く、当たり前だが大変モテた。
かたや私は
ちょっと癖の強い子供であった。
舞台用の血糊を肌身離さず持ち歩き、気まぐれに血を流しては無意味な包帯を巻いりした。
読む漫画や好きなゲームの好みも彼女とはまるで違って、
私が薦める血みどろ耽美な天使が活躍する漫画などは「これはごめん、読みたくないかな」と断られがちであった。
だれが見てもタイプの違う二人だったが私たちは親友だった。
ある日の放課後、彼女のもとへ行くとひどくしょんぼりした様子で俯いていた。
どうしたのか尋ねると、「なんでもないよ」と笑ってみせる。
様子が気になった私はその場にいた別の友達を問いただした。
すると、私の意中の男子から「なんで冴島なんかと友達なの?あいつウザいじゃん」と言われていたことを知った。
私が彼のことを好きだと知っていた彼女は、
その言葉で私の気持ちを考えしょんぼりしてくれていたのだ。
自分のことが大好きで、わがままな私はだったが、
その話を聞いて彼女の心の美しさとそんな彼女に大切に思われていることに感動した。
そして、
「彼女の親友として誇れる人間でいたい」という気持ちが芽生えた。
自分らしくいることは、悪くない。
でも当時の私は自分の好きなものを押し付けてしまったり、かと思えば人の目を気にして取り繕ったり、
優しさや思いやり、そしてそれを表現するための知識も足りなかった。
私たちは別々の中学校に進んだが交流は続いた。
たくさん伝えたいことがあるから便箋がもったいないと、広告の裏に手紙を書いて送る文通を3年間続けた。
おしゃれな広告や面白い広告を選ぶのも楽しく、「あの広告のあの商品みた?依子きづくかなぁと思って選んだ!」と電話でニコニコ話す彼女が本当に大切に思えた。
体が細く、限界を超えて頑張ってしまう彼女に私はいつも「華奢な体に気をつけて…」をバイバイの挨拶にしていた。
彼女はいつも「気持ち悪いからやめて」と言って笑った。
時は流れ、彼女は今あの頃から夢だった職につき
みんなに夢や幸せを与えて生きている。
それは簡単なことじゃなくて、体や心を崩したりしながら彼女が掴み取り守ってきたポジション。
「才能」や「センス」なんて言葉だけじゃ到底辿り着けない場所。
私は私のフィールドで戦いながらいつも思う。自分と、自分の大好きな人たちに誇れる自分であるかどうかと。
そして遠くで戦う彼女を思い心の中で今日も言う。
「華奢な体に気をつけて」
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