娘の体験を自分のトラウマにする私
うちの娘はほんとに天真爛漫で、それ故に好かれることもあれば、それ故に鬱陶しく思われることもあった。
保育園の時、
娘のことが嫌いな女の子がいた。それはそれで仕方がないこと。全員に好かれることはできない。けれど程度が悪かった。
遊びにいれてくれないどころか、物を投げたり陰口を言ったり、教室入れてくれないこともしょっちゅうだった。
先生もずいぶん頑張ってくれたが、その子は頭がよく大人が見ていると大変お行儀よくしていた。でも私はずっと娘を見ているから、気づいてしまう。
迎えに行った教室で無視をされ、罵倒されながら震える手で1人リカちゃんの髪の毛を撫でていた娘の姿が今でも胸を締め付ける。
相手の女の子は所謂リーダータイプだった。
ご家族はほんとにいい方だったけれどお嬢さんがそんなことをしているなんて全く知らないし、気にしていないご様子だった。
卒園式の日、卒園生とそのご家族でファミレスへ行った。子供たちが同じテーブルにつくと、その子が泣き出した。周りのお友達はみんな「どうしたの?大丈夫?」と心配した。
すると「娘ちゃんが同じテーブルにいるのが嫌だ」と答えたのだ。
さめざめと泣きながらそう訴える彼女を見て私は、今まで堪えていたものが溢れてしまった。
「そんなこと言われたら、悲しいだろうな。ってなんで思わないの?娘ちゃんがあなたになにかした?それなら教えて。」
大変大人げない。
私の言葉を聞いて、その子はしまったという顔をして「ごめんね!大丈夫だからここにいていいよ!」としきりに謝りだした。
その間、相手のお母さんはずっとママ友とお話をしていてこちらには気づいていなかった。
結局その後、娘は卒園生の小学生兄弟たちのテーブルでご飯を食べた。
娘は楽しげに振る舞っていたが6年生活した保育園の最後の思い出としてはあんまりな日になってしまった。
娘が小学生になった今でもそのことを思い出してしまい、私はそのファミレスには入れない。
娘はというと、「あの子のことは全然気にしてないよ。」と言う。
本当かどうかわからない。でも、娘が言うならそれを尊重しなければと思う。
私は娘ではないのに勝手にこんなに傷ついてどうするんだ。私が冷静じゃないと、娘が想いを吐き出せなくなってしまうじゃないか。
この話にオチはない。ただただ、そういうことがあったよという話。
なぜオチがつけられないのか。それは私の中でまだ彼女を許せていないし、自分の中で折り合いがついていないからだ。
宝物を傷つけられることは、自分への仕打ちよりも許し難い。
私はこれからも、心の中で彼女を嫌悪しながら生きていく。新たな嫌悪対象が増えないことを祈りながら…。