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やまのあいだのダイアリー

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坂ノ途中の自社農場「やまのあいだファーム」スタッフのリアルな農業と暮らしの日記。四季折々の写真もアップしていきます。毎週更新中。
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記事一覧

vol.18 6月3日・木を植える

家の庭にモミジとコナラの木を植えた。 それまでは、庭といっても小さな空き地みたいなものだった。だから子どもたちが遊べるようにと思って手を入れた。ひょっとして雑木林みたいになれば小鳥がやって来るかもしれない。 畑では、育てている野菜の芽や実、種採り用に残している作物などを鳥に荒らされることがある。 悲しい思いを味わわせてくれる一方で、害虫などを食べてくれたりもするらしい(まだ、その仕事っぷりは見たことがない)。 草刈りや、土を返したところには、よくサギがやってくる。田んぼで

vol.17 5月27日・種を蒔く

暑さにおそろしさを感じはじめる季節になりました。暑さ対策をケンゾーさんと練っています。 4月のおわりと、5月の真ん中に、ささげ、スクナカボチャ、イエローストレートネック(ズッキーニ)の種蒔きをしました。 やまのあいだファームでは、私たち自身が採った種を蒔くことがよくあります。すこし前に、あかねちゃんが種採りの話を書いていました(※ vol.10・ことり菜の秘密)。 そんなふうにしてつないできた種です。大切に思う気持ちがあるし、種蒔きってはじまりのしごとなので、すごく緊張しま

vol.16 5月20日・忙しい季節

山がとても美しいです。若木や若草の萌えるころ、やまのあいだファームでは、たくさんの生きものが姿をあらわします。 すこし前のことですが、瀬戸内で柑橘のようすを見てきました。畑というよりも山なので、草も木もどんどん生えてきています。はじめて訪れたときは、そのワイルドさにカルチャーショックを受けたくらい。ひどくなる前に刈らないと。 植えたレモンは、私の背丈を超えようとしています。月並みな言葉だけれど、わが子の成長を見るようで嬉しかったです。まわりの草を刈り、土が乾かないように木の

vol.15 5月13日・顔が痒い

「なんで困った顔をしてるの?」 朝、起きると妻にそう言われた。 鏡を見ると、両の眉毛の上がお岩さんのようにぷっくり腫れていた。 前日──。 やまのあいだファームは草刈りの一日。 刈り払い機という道具(2メートルほどのシャフトの先端に丸鋸が付いていて、手元の小さなエンジンで鋸を回転させる)を使って、薙ぎ払うように草を刈っていく。草の切れ端や小石が飛び散るので、ゴーグルをした方がいいと取り扱い説明書には書かれているのだけれど、僕はメガネをかけているので、横着をしてゴーグルなしで

vol.14 5月6日・竹のはなし ー春ー

やまあいでササゲの種を蒔いていると、笛の音色が聞こえてきました。 顔を上げて見ると、男の人が篠笛を吹きながら歩いていて、その後ろには獅子舞の姿と、鐘や太鼓を手にした人たちが。 春のお祭りが、あちこちで賑やかですね。木や草の新芽がまぶしいです タケノコ、もう召し上がりましたか? わたしは、今年は一度しか食べていません。もっと食べたい。 竹は、生まれて1か月も経てば、親と同じ大きさになります。 3歳にもなると、子育てをはじめます。まだ眠っている赤ちゃんに、栄養をせっせと与える。

vol.13 4月29日・やまあいを耕す

2013年の秋にはじまったやまのあいだファーム、去年になってやっと土のなかにコガネムシの幼虫が住めるだけの隙間ができてきました。 5年──。はじめの数年間は、虫が見向きもしないほどのガチガチの粘土質の土で、乾いているときは灰色の岩と勘違いされるほどでした。 関西の圃場(ほじょう・農産物を育てる場所のこと)には粘土質のところが多いようです。やまあいがあるのも京都の亀岡盆地の田園地帯。米づくりには良い環境ですが、野菜を育てようとするなら、もっと水はけや通気性のよい土に変えていかな

vol.12 4月22日・ケンゾー、格好悪いぞ!

春のはじまり、やまのあいだファームはよもぎ摘みの季節。 ひとつひとつ新芽を手で摘んでいます。 畑を見て廻り、よもぎがもりもりと群生しているところを見つけると嬉しくなる。晴れの日は心が弾む。おとぎ話に出てきそうな、よもぎ摘みの若人? になったような気分。雨の日はカラダがどんどん冷えてきて、なんだか苦行を求める修行僧になったような気分。でも、雨だと積んだよもぎが日差しでくたびれない。 無心でよもぎを積んでいると、遠くでウグイスの鳴く声が聞こえた。 なぜか、大工をしていた頃、親方に

vol.11 4月15日・はたらくクルマ

やまのあいだファームでは軽トラ、大工のときはトラックやダンプカー、 はたらいているといろいろなクルマに乗ります。 どのクルマも人と物をたくさん運んでくれます。 「エンジンのついたるもんはカラダに毒や」 私の祖父はそんな考えの持ち主だと、父から聞かされたことがあります。 たしかにエンジンの付いた道具は一切──トラクターも刈り払い機も──使わず、 車輪のついた乗り物といえば自転車とリヤカーだけでした。 自転車の荷台に祖母を乗せて畑に行ったり、夏の夜にまだ小さかった私を乗せてホタ

vol.10 4月8日・ことり菜の秘密

やまのあいだファームのお野菜には、変わったものがたくさんあります。 台湾生まれのピンタンロンナスや、牛の角のような形をしたカウホーンオクラ、皮が固くて鉈(ナタ)が必要かもというなたわりかぼちゃ……毎年、自分たちで種を採り、次の年につなげています。 ことり菜もそのひとつです。やまのあいだファームのオリジナル野菜。 去年の秋に種を蒔いて、暖かくなった今は一段とがっしりしてきました。力強い味わいが特徴です。5月には花が咲き、梅雨の前後に種ができます。ほかにはない品種なので、種が絶

vol.09 4月1日・記憶というツール

赤信号で車を停めると、目の前に山の連なりが広がっていた。山の景色を見るたびに、僕は故郷を思い出す。 やまのあいだファームに来て、もう1年になる。 生まれ育った富山は、片方に日本海が黒く広がり、その反対側には立山連峰が屏風のようにそびえていた。京都の亀岡で暮らしはじめて、戸惑ったのは、どちらを向いても山があることだ。富山では、景色を眺めれば、だいたいの方角がわかる。けれども京都ではそういうわけにはいかない。だからよく迷子になってしまう。グーグルマップがなかったら、たぶん大変な

vol.08 3月25日・春の雨、秋の雨

4年前の春。 はじめてやまのあいだファームに行ったとき、目の前は霧雨で白っぽく、ぽこぽことした畝がぼんやりと見えました。 畑を囲む電柵を調べてまわると、レインコートは冷たく濡れていて、少し寒かった。 過ごした8日間は、毎日のように雨が降りました。 すべての色、音、匂い、雨は世界の様子を変えてしまう。いろいろな境界がいつもより曖昧になる。 雨の日は、心地が良くて、呼吸もしやすい。雨のなかにいるのが好きです。 その年の秋。実家の稲刈りがちょうど終わる頃、祖父が病院に運ばれました

vol.07 3月18日・レモンの苗を植える

島に来ています。 桜の開花も目前ですが、降ったりやんだりの天気で風も強く、少し肌寒い。 「ありゃ。帰ってきたんねぇ」 ご近所の家に顏を出したら、ネギやらほうれん草やらたくさん持たせてくれました。 島にいるあいだには食べきれないほどです。 いまはレモンの苗木を植えつける季節。坂ノ途中のインターンのあいちゃんが手伝いに来てくれました。 連日、畑でいくつも穴を掘っているので、2人とも疲労困憊。根っこがきれいに伸びるように、できるだけ穴を大きく掘って、1本1本の根を丁寧に広げながら埋

vol.06 3月12日・どうぶつと足跡

足跡。 畑を見回っていて、見つけました。 来ていたようです。 シカでしょうか。 両足そろってる。 ここで、立ち止まったんかな。 大人になるにつれて、固い地面の上を歩くことが多くなり、気づけば足跡との縁は薄くなっていました。 雪、砂、土。やわらかなものを踏みしめるのは、難しかったり、靴の汚れが嫌だったり………でも、足跡を気にしてみると、たのしくなってしまいます。 足の形、大きさ、歩幅、動き方、自分と自分のものではない足跡を、ついついくらべます。 他の人の足跡をなぞると、歩き

Vol.05 3月4日・もうすぐ春のやまあいです

梅の花が満開を迎え、ふんわりと香りが漂っています。 暖かい日はとても気持ちがいいですね。 畑へ向かう途中、近所のおっちゃんたちに会い、立ち話になりました。 おっちゃん A「だいぶあったかくなってきたのぅ」 おっちゃん B「草がまた伸びてきましたね」 あかね「1年がはじまるって感じですね。ちょっと焦ってきました」 おっちゃん A「そうやなー。あれやこれやとやらなあかんとは思ってるんやけど、なかなか体がうごかんのよなぁ(まだ冬気分)」 そんなことを話しながら、ぼちぼち畑モード