“日本一美しい景勝地”~鞆の浦を巡る(弾丸旅行3日目①)
この記事のタイトルを見たあなた方は、「何が“日本一美しい景勝地”だ」「目立つためにテキトーな事を言いやがって」と、俺の事を何でも誇張して煽り立て、PV数を稼ごうとする針小棒大な詐欺野郎と思ったかもしれない。
だが俺は嘘は書いていない。だって実際にそう言った人がいるのだから。
そういう訳で西日本弾丸旅行三日目の朝は「日本一の景勝地」、鞆の浦から始まった。
鷗風亭の朝:屋上露天風呂と朝食と
朝6時過ぎ。鷗風亭にて朝日を迎えた俺は、早速朝風呂を堪能しに屋上に向かった。鷗風亭には屋上露天風呂なる素敵な施設がある。絶景の景色と心地よい海風を堪能しつつ、心地よい温泉に浸ることができる。
だが残念な事に、この屋上露天風呂はかなり狭い。正味三人も入るともう一杯だ。そんなわけで続々とくる人の気配に俺は早々に屋上露天風呂を後にした。
潮待ちの港、鞆の浦:江戸時代の港町を巡る
名残惜しくも俺は朝早くから鷗風亭を後にした。この日もスケジュールの余裕は限られている。午前中のうちにここ、鞆の浦を巡らねばならない。
鞆の浦は古来より「潮待ちの港」として栄えた港町だ。古くは万葉集の時代から和歌に詠われ、今でも江戸時代の街並みが残る歴史ある街でもある。そして俺が死ぬまでに一度は行きたかった土地でもある。
歴史ある街・鞆の浦だが、その中に俺が是非とも訪れたかった場所があった。それがこの福禅寺対潮楼だ。
江戸時代、瀬戸内海の港町として栄えていた鞆の浦は、朝鮮通信使の寄港地の一つだった。朝鮮通信使は当時、朝鮮と江戸幕府が修好のため、定期的に送られていた外交使節団だ。江戸時代と言えば有名な「鎖国」の時代。限られた人間しか外国人と会うことができない時代、朝鮮から遠路はるばる江戸まで向かう通信使一行は、沿路の庶民たちの興味を引くに十分な存在だった。当時の知識人たちが通信使の使節たちと会おうと連日宿に押し掛けた、なんて話も残っているほどだ。
そんな通信使の一行が、江戸へ向かうまでの航路の中で必ず訪れたのが、この福禅寺の対潮楼だ。通信使の迎賓館として使われた対潮楼は通信使たちにも大変好評だったようで、歴代通信使は出発前から対潮楼での宿泊を楽しみにしていた。ある時この対潮楼が使われなかったときなど皆が猛烈に抗議したほどだった。
風光明媚な対潮楼からの眺めは通信使たちの心を掴んで離さず、彼らはこの眺めを「日本一の景勝地」という意味の「日東第一景勝」と呼んで讃えた。そんな日本一の眺めを是非とも俺も堪能したい。その念願がついに叶った。
“日東第一景勝”:対潮楼の眺め
対潮楼は朝8時から開いている。平日の8時すぐに来たためこの日は最初から最後まで俺一人しかいなかった。最高の眺めを一人きりで独占するという贅沢な経験ができるので、訪れる方がいるなら是非朝から行ってみるのをお勧めする。
眼前には穏やかな瀬戸内海の海とこんもりとした仙酔島が広がる。通信使たちが絶賛したのも頷ける、自然の雄大さを感じる美しい眺めだ。俺は無心で景色を堪能し、写真を撮りまくった。
対潮楼の管理人の方が一人おられたが、他に客がいなかったこともあって色々お話を聞くことができた。昔はこの対潮楼の高台のすぐ下まで海が迫っていたこと、江戸時代の港町の施設がすべて揃って残っているのはこの鞆の浦だけということ、かつては鞆の浦から福山まで鉄道が通っており、みんなで汽車の後ろを押しながら学校に通ったことなどなど・・・。折角鞆の浦の話をいろいろ伺えたので、このあとも鞆の浦を巡ることにした。
再び鞆の浦街歩き:沼名前神社へ
宿願の対潮楼訪問を満喫した後、もうしばらく鞆の浦の街を散策することにした。港を眺め、高台にのぼり、寺院が立ち並ぶエリアまで歩く。戦国の忠臣・山中鹿之助の首塚を横目に見ながら歩いていると、地元の人らしき方から話しかけられ、鞆の浦の観光マップをもらった。観光客にフレンドリーなのはありがたい限りだ。
観光地図をもらうついでに観光名所も教えてもらった。それが沼名前神社だ。地元の神社だがなかなか立派な作りらしい。名前も聞いたことなかったが、折角おすすめされたので行ってみることにした。
昨日訪れた吉備津神社のような大きな神社ならともかく、地元の人のための地域の神社となると小規模で観光用でない場合がほとんどだ。そんなわけでそれほど期待せず神社に向かって歩いていると、見えてきたのは立派な鳥居と参道だった。
総じて想像以上の立派な神社だった。おすすめしてくれた方曰く、拝殿は火事で焼けてしまったようで、今あるのは新しく作り直したコンクリート造りのものだった。これだけ立派な神社なのだから、焼ける前の拝殿もさぞかし立派な作りだったのだろうと思うと少し残念だ。そんなことを考えながらも参拝を済ませ、神社を後にした。
沼名前神社を廻り終えると、そろそろ鞆の浦を離れねばならない時間となった。正直まだまだ訪れたい場所も多い。今回は遠くから眺めるだけに終わった仙酔島にもいつかは渡ってみたい。
そんな思いを胸に残し、車に乗り込んで次の目的地へ向かった。この日の最終目的地は山口県。まだまだ西へ進んでいく。
(つづく)
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