本の編集者が今月読んで印象に残った本(2024年7月編)
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はじめに
1月~6月までは読んだ本を(ほぼ)すべて紹介してきまして、いわば数でプッシュするタイプだったのですが、半年間やってみて、どうも性に合わないな~と思い始めました。数を意識しすぎてしまって取りこぼすものが増えてきたのと、読むこと自体がなかば強制的になってしまったからです。
7月以降は洋書をじっくり読む期間としたいと思ったので、今月紹介する分からは、数冊程度、もしくはタイトルごとに記事を分けての紹介になると思います。ちょっとした方針転換ですね。
それでは、7月に読んで「いいな~」と思った本です。
2024年7月に読んで印象に残った本
■小川哲『君が手にするはずだった黄金について』(新潮社)
『地図と拳』で直木賞を受賞した小川哲。彼の文章のうまさは、一見ナイーブながら芯のある語り手(視点人物)の心の動きの描写、シーンを切り替えるときの文章運び、時制を操る手法など、枚挙にいとまがない。一見平易な文章の中に、素晴らしいほどのテクニックが詰まっている。
本作もまさにその本領発揮といった形で、視点人物の「小川」が出会う6人のうろんな人々の造形と繰り広げられる会話の妙が面白い。現実に起きたのかフィクションなのか、虚実のあわいを絶妙なバランス感覚で進んでいく物語、ぜひ自分の目で確かめてもらいたい。
■ひらいめぐみ『転職ばっかりうまくなる』(百万年書房)
20代のうちに転職を6回(!)経験し、今は文筆家として働く著者。そう聞くだけだと相当な無頼派なのかと思いきや、本人はいたって「ふつう」の人に見える。ふだんの私たちが「働く」ことについて当たり前と思っているものが、読み進めるうちにその「常識」をいったん脇に置いて見直したい、と考えるようになるのだから驚き。いい意味で力の抜けた文章もあいまって読みやすい。働くことに悩んでいる人、日々忙しすぎてなにもできないという人は、この本から得るものがあるかもしれない。
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