憂鬱と余裕の往復運動
「これがなければ生きていけない」というものを失ったとき、人は深い絶望に見舞われ、死を願うことがあります。たとえば、「お金が沢山なければ生きていけない」というのなら、自分の持っているお金をほとんど失った人は首をくくるかもしれません。しかし、わたしたちの暮らすような複雑な社会では、お金がないことによって飢えて死ぬよりも先に、だいたいの人は自ら命を断つことになります。それはお金に限らず、精神的(つまり”わたし”の中にあるもの)な資産は物質的(外界や他者に由来するもの)な資産より先に