短編小説『坂道の途中で』小野寺ひかり
『坂道の途中で』
夕暮れの坂道をゆっくりと登っていく。伸びた影は今にもどこかへ飛んで行ってしまいそうだ。隣で共に歩く母の存在。それだけが実態である私へ確かなる重さとなって、間違いなく、そこにいなければならないことを理解する。
大勢の家族連れとすれ違う。七五三、と書かれた看板に妙な納得をしてしまった。遠い昔、自分にもそんな日があったように思い越す。
晴れ着身を包んだ少女は、黄色い落ち葉を拾い、また家族のもとに駆け戻っていく。少女に視線を注ぐのは、見知らぬ家族たち。おそらく父