コロナ禍で流通金額42倍の食べチョクの成長要因とは??
みなさん、農作物をオンラインで購入したことはありますか?
コロナ禍になり、はじめて購入してみた方も多いと思います。
そんな中今回扱う企業は、一次産業の生産者と一般消費者をつなぐ食のプラットフォーム「食べチョク」です。
農作物の市場は、約5.8兆円と言われる一方で、EC普及率は2.64%と成長の余地がある市場です。
食べチョクは、2020年は7月に放送したテレビCMの反響もあり、流通額は前年比で42倍に増え、サイト訪問者数も毎月100万人以上に増えてます。
今回は「食べチョク」を分析していきたいと思います。
食べチョクとは?
食べチョクは、株式会社ビビッドガーデンが運営する農作物のオンライン直売所です。詳細は次の通りです。
・会社名: 株式会社ビビッドガーデン
・代表: 秋元 里奈
・設立:平成28年11月29日
・全体売上:8,726億円
・企業理念:生産者の“こだわり”が、正当に評価される世界へ
・事業内容:こだわり農作物のオンライン直売所「食べチョク」、飲食店むけ直送食材仕入れサービス「食べチョクPro」の開発・運営
また、食べチョクのビジネスモデルは、農家が自由に販売価格を設定でき、売上の10~20%を食べチョクに販売手数料として支払う構造です。
(引用:https://vivid-garden.co.jp/)
農家が儲けられる仕組みになっているわけですね…!
食べチョクの外部環境やターゲット像を整理すると以下のようになるかと。
コロナウィルスの影響を受け、急激に伸びた食べチョクですが、その成長の裏にはどんな成功要因があったのでしょうか?
成功要因①生産者の課題解決にフォーカスしたプラットフォームづくり
食べチョクは、「生産者の“こだわり”が、正当に評価される世界へ」とビジョンおいていることから、生産者の課題解決を第一に考えているサービスです。
そのため、生産者を意識したKPI設計や施策を行っています。
①KPIに「生産者1人当たりの売上」を置き、施策を考案
②ヤマト運輸と連携し、発送作業の効率化(送料もOFF)
③「まとめ買い構想」による送料のカット
④オンライン農業体験により、消費者と生産者をつなぐ
⑤生産者の学びの場「食べチョク学校」
⑥ご近所出品によるネットに不慣れた生産者も出品可能にする「ご近所出品」
⑦「コロナでお困りの生産者応援」プログラム
農家が増えてくれば、購入者が購入できるものが増え、食べチョクがより魅力的になり利用者も増えます。
プラットフォーム上で支援する人の優先度を決めて、優先度に合わせた施策を行うことは、リソースが限られたスタートアップとしては重要です。
例えば、「ご近所出品」は近隣の農家が商品を一緒に出せる施策です。
これにより、98歳の高齢者の方も一緒に出品することが可能になりました。高齢化が進む農業分野でIT化に取り残される生産者を減らす取り組みはさすがです。
成功要因②直販だからこその製品ストーリーを伝えられるサイト設計とそれを支えるPR
食べチョクがネットスーパーと異なる特徴は、生産者と消費者が直接繋がれるため、生産者のストーリーを伝えることができる点ですね。
サイトの設計や消費者とのコミュニケーションの面でも「生産者のストーリーを伝える」ことを意識した施策が多い印象です。
①製品それぞれに生産者のメッセージが書ける欄
②「生産者インタビュー動画」をサイトで公開
③PRにより、生産者のストーリーを届ける仕掛け
④SNSで商品のストーリーを伝える(Instagram,Twitter,Clubhouse,LINE,Facebookなど)
とくにInstgram,ClubhouseといったSNSを活用して、生産者のこだわりや取り組みを伝える取り組みは、継続して行われているようです。
プレスリリースに関しても、「誰にどんなメッセージを伝えたいか」「その結果どんなアクションをしてもらいたいか」「メディアが取り上げるポイントはなにか」から逆算しながら企画づくりやリリースづくり、アプローチメディアの選定をされているそうです。(広報の方のnoteより)
伝えるチャネルの多さ×伝えるメッセージの量×目的から落とした伝えるメッセージの一貫性が特徴的ですね。
また、施策の名前は「食べチョク学校」「まとめ買い構想」「ご近所出品」など、難しい言葉を一切使わずわかりやすい言葉で施策を伝えておられます。
成功要因③時代背景に合せた多くの施策を実行する力
2020年はコロナウィルスが大流行した年でした。そのため、外出自粛により買い物が制限された年で、オンラインでの買い物が増えた年かと。
食べチョクは、そのような時代背景に合せて施策を打ってきました。
・コロナの影響で在庫を大量に抱えた農家が出品増
→ⅰ経産省と協力した送料無料キャンペーン(2020年3月)
→ⅱ販路開拓に悩む農家向けの応援プログラム「#コロナでお困りの生産者さん」がメディアに取り上げられる
→ⅲ農家支援やコロナ禍の農家の生き残り術といった観点でメディアの取材増加
・外出自粛でオンラインで購入する人が増加
→CM放送(2020年7月)により利用者の増加
プレスリリースに関しても、2020年以降右肩上がりに増えてますね。(2020年はプレスリリースを合計48本発表)
(引用:未経験広報が1年で1,900件以上のメディア掲載を実現した裏側【5,000文字】)
また、多くの施策を行える運営の実行力がポイントとしてありそうです。
秋元さんはイベントで
「起業で大事なことは、無理なことでも「なんとかする力」と目の前のことに没頭する「夢中力」だ」
とおっしゃってました。
この考え方が企業文化にも反映されているのかもしれませんね。
食べチョクの売上を伸ばす施策案
まず、食べチョクの売上を分解していくと次のようになります。
施策仮説では、KPIを構成する要素のどれかに作用する施策だと、売上げアップに繋がりそうです。
また、マッチングプラットフォームなので、配送内容にトラブルが起きうることも課題です。口コミを見ていても、配送や送付物に不満な人、顧客対応に不満な声も見られました。
これらを踏まえた施策案が以下になります。
①マッチング精度の改善→利用頻度、利用客数UP
すでに「食べチョク学校」などで生産者側の教育制度はあると思いますが、急速に拡大する利用者と生産者に対して追いつけていない印象があります。
また、農家の多くの方は工場的にシステマティックに販売しているわけではないので、人的ミスが発生してしまうのは避けられないのかなと思います。
最初にそういうトラブルが起こり、以降使わなくなるのは勿体ないのです。そこで、初回は食べチョクが選ぶおすすめお試しセットの購入を登録時に促し、2回目以降から自分で選ぶなどのフローに改善することで、成功体験を1番最初に経験させることが必要なのかなと思いました。
②検索の改善。タグをより消費者が興味のあるタグ→利用客数UP
食べチョクで商品を探す際は、商品カテゴリー、栽培方法、こだわり、生産地、ワードで検索ができますが、消費者のニーズを考えた際に、検索がしづらいのかなと思いました。
たとえば、「食べチョクでしか買えない珍しいもの」や「一人暮らし向け」「家族向け」などより利用ニーズに合せた検索タグを追加すると、ほしい商品が見つかる率が上がり、購入品の増加につながるのかなと思います。
学び
①プラットフォーム上の誰の問題を優先的に解決するかを優先順位付け
(すべてを優先的にやらない)
②時代の変化が激しいときこそ、市場シェアの順位が変動しうるので、
変化が大きい時期こそ施策の量と質でアクセルを踏む
③プラットフォーマーとしての役割を定義し、プラットフォームのルールづくりと施策実行
(生産者の”こだわり”が評価されるプラットフォーム。こだわりはあるが、PRが苦手な生産者の支援)
以上になります。
食べチョクは個人でも使ってみて、普段手に入らない商品が手に入ったり、生産者の方のこだわりが知れた上で購入できたりなど、よいサービスだと思いました!「そこまでやるか!」という驚きもありつつ利用できるので、農作物の購入が消費ではなく体験に近づいていく感じがしましたね。
今後の広がりにも注目です。