音楽の聞き方を変えたSpotifyのこれまでの成長とこれから
みなさん、音楽アプリって何を使ってますか?
僕はSpotifyを使っているのですが、UIのみやすさや日本の音楽だけではなく、世界の音楽も聴き放題な点が気に入っています。
そんなSpotifyの現状は、
・ユーザー数は世界で3億4千5百万人利用しており、
・有料課金率はなんと4割にものぼり、
・解約率は4%以下
とサブスクリプションサービスでは、驚くべき数字となっております。
今回は音楽業界で後発のSpotifyがどうユーザーを獲得し、ストリーミング市場で巨大企業のAppleやAmazonを抑えて3割のシェア(2019)を獲得するまでにいたったかを分析します。
Spotifyの基本情報
Spotifyはもともと、ヨーロッパを中心として市場に出回っていた音楽の違法ダウンロードを代替する手段として、「かんたん・コンテンツ充実・無料で利用できる」という価値で拡大していきました。
iTunesを推していたスティーブ・ジョブスが、「ストリーミングは流行らない」と考えていた原因の再生までの長い待ち時間を0.2秒まで圧縮できたことでも有名です。
企業概要としては、
・会社名: スポティファイテクノロジー
・代表:ダニエル・エク
・設立:2006年
・全体売上:78.8億ユーロ
・企業理念:Listening is everything
・事業内容:音楽ストリーミングサービス「Spotify」
です。
ではSpotifyはどうしてここまで成長することができたのでしょうか?
後発のSpotifyが成功した要因
Spotifyのこれまでの動きを整理していく中でわかった、成功要因は以下の3つに集約されるかと。
1.ネットワーク効果によるユーザーの指数関数的拡大
2.使えば使うほど有料会員化・スイッチングコストが発生
3.新しい国に進出時、学生をターゲットにしたプロモーションによるユーザー基盤の獲得
それぞれ解説していきましょう。
1.ネットワーク効果によるユーザー数の指数関数的拡大
Spotifyユーザーの伸び率が加速したのは、2016年以降です。
ここでは、SNSや他のサービスとの連携を強化し、ユーザーがSpotifyの音楽をかんたんにシェアして、聴くことができるようにしました。
たとえば、
・当時ユーザー数15.9億人以上のFacebookメッセンジャーと連携。音楽シェアがかんたんに
・10億ダウンロードの音楽検索アプリShazamから検索後Spotifyで音楽が聴ける
・Twitter投稿からアプリDL不要ですぐに音楽が聴ける
などなど。
巨大プラットフォームと連携をし、ネットワーク効果を活かしてユーザー数を一気に伸ばすことができました。
Spotify自体は、無料でも利用ができるので、まずはSNS経由で無料会員になってもらうことで、有料会員につなげることができます。
(無料会員だとしても、広告収入で赤字になることはない)
2.使えば使うほど有料会員化・スイッチングコストが発生
2017年以降は、レコメンド機能の強化やお気に入りの曲からプレイリストを作成など利用すれば利用するほど、ユーザーが聞きたい曲を聴けるように機能を強化していきました。
その結果、2018年の米国で行った調査では、平均利用時間が約3時間となりました。
Spotifyは利用時間が増えれば増えるほど、広告に接する時間が多くなり、その分有料会員に転換する率があがります。
また、使えば使うほどそのユーザーに合った曲をレコメンドできるようになるので、スイッチングされるコストも増えていきます。
3.新しい国に進出時、学生をターゲットにしたプロモーションによるユーザー基盤の獲得
Spotfyは、進出した国々で最初のターゲットを学生におきプロモーションをおこなっています。
日本のユーザーの特徴は、
・6割が35歳未満のユーザーで若い
・1日あたりの平均時間は128分と長い
・ほとんどがスマホで利用する
など、若いユーザーの利用が目立ちます。
音楽業界は若いユーザーの利用がそもそも多いということに加えて、Spotifyが進出した国々で学生向けのプラン(半額プラン)やプロモーションを重点的に行っているためです。
学生基盤を獲得すると、SNSで音楽がシェアされ、学生以外の層がSpotfyへの流入します。
Spotifyの売上を伸ばすCMO仮説
Spotifyの2020年IRレポートによると、今後の方針としては
”現在のユーザーベースを維持し、広告サポートユーザーとプレミアムサブスクライバーの数を増やし、当社のサービスでコンテンツをストリーミングするために費やすユーザーの時間を増やす”
と書かれています。
音楽広告の面では、音広告市場は今後伸びていく市場だと言われ、ポッドキャスト分野の強化をしています。
❐世界の音声広告市場
そんな中での施策案としては以下です。
■ユーザー数を増やす
①Spotify上にアーティストファン向けのページが作れる機能
日本の音楽ストリーミングサービスは、2019年の時点でも利用者が2160万人と成長の余地があります。
そこで、Spotify上でファン向けのページを作ることでユーザー数を伸ばす施策考えました。アーティスト側が会員向けのページを作り、会員費を受け取れる機能です。
アーティスト側は、
・ファン向けに新作音楽の先行配信ができたり、
・新規ファン向けの販促活動ができるようなページをつくり、
・アーティストの新規顧客獲得とファン層のマーケティングを
サポートするページを作れるようにする
会員のSpotify利用時間を増やし、広告費の収入アップや有料会員への転換率を増やす狙いです。また、新規会員の獲得も狙えます。
■ユーザーのストリーミング時間を増やす
①動画コンテンツをポッドキャストに変換できる機能の提供
Youtube動画をバックグラウンド再生で聞いている方って一定数いるのではないかなと思います。そういった方がSpotify上でラジオ感覚で元々動画だったコンテンツを聴くことができ、クリエイター側もそこから副収入を得られるなら、Win-Winの関係になりよいのではと思いました。
会員のSpotify利用時間を増やし、広告収入費や有料会員への転換率を増やす狙いです。
以上です!
学び
今回のSpotifyで学んだことは以下になります。
①親和性の高いパートナーができないことを見つけ組み、相互の価値をあげつつユーザー獲得
②ユーザーをフリーミアム→有料プランへ転換する仕組みづくり
(利用時間が増える→広告がうるさい→有料会員に転換)
③勝ちパターンを見つけ、国ごとにローカライズしながらユーザー獲得
サブスクリプションサービスとして学ぶことが多い企業なので、
引き続き注目です。
■備考:調べる際に作成した、Spotify成長をまとめると以下になります。