菌活・腸活の危険性①:菌活や善玉菌が有害になった症例その①
健康情報にはよく話題となる菌活(プロバイオティクス)について、有害となった症例を今回は紹介します。
プロバイオティクスとは、人間に有益な細菌を身体に取り入れることによって、
腸内環境に変化をもたらし、その結果健康に有効であるとされる健康法です。
現在では菌活や腸活という名前でも浸透しています。
これは、人間が細菌たちを勝手に善玉菌や悪玉菌、日和見菌と区別して考え出されたものに過ぎません。
全ての人に有効であれば良いのでしょうが、少なからず健康被害も出ています。
今回から2回に分けて、プロバイオティクスによる有害症例を紹介します。
そこから見えてくるものがあります。
プロバイオティクス投与による敗血症の症例
生後3か月半の乳児に、サッカロマイセス・ブーラルディ製剤を投与したところ、
サッカロマイセス・セレビシエという真菌による真菌症を発症しました。
なお、この乳児は免疫不全だったとは診断されていません。[1]
免疫不全の73歳の患者が、サッカロマイセス・ブーラルディ製剤での治療中に、
中心静脈カテーテル内でサッカロマイセス・セレビシエよる真菌症を発症しました。
その後、プロバイオティクス投与を中断したところ、カテーテルを交換する必要もなく真菌症から回復しました。[2]
急性胆管炎で入院した74歳の男性に、サッカロマイセス・ブーラルディ製剤を投与したところ、
サッカロマイセス・セレビシエよる真菌症を発症しました。[3]
2型糖尿病の46歳女性が、自身で作ったヨーグルトによって、L.アシドフィルス乳酸菌による菌血症と尿路結石と診断されました。[4]
クローン病とHIV感染の患者が自身で作ったヨーグルトによって、ラクトバチルス乳酸菌による菌血症と診断されました。[5]
集中治療室で治療中の患者において、ラクトバチルス乳酸菌による菌血症のリスクが顕著に増加することが報告されています。[6]
免疫抑制状態の患者や長期入院の既往歴がある患者、外科的介入による既往歴のある患者において、
11の症例でプロバイオティクスと同一のラクトバチルス・ラムノサスによる菌血症が報告されています。
なお、ラクトバチルス乳酸菌の菌血症による死亡率は、1か月で26%、1年で48%でした。[7]
重症心不全の小児が、抗生物質の副作用による下痢に対してプロバイオティクス治療を受けたところ、
ビフィドバクテリウム乳酸菌による菌血症と診断されました。[8]
続いても症例を見ていきます。
【参考文献】
[1]Saccharomyces cerevisiae Sepsis Following Probiotic Therapy in an Infant
Indian Pediatr . 2019 Nov 15;56(11):971-972.
[2]Saccharomyces cerevisiae var. boulardii fungemia following probiotic treatment
Med Mycol Case Rep. 2017 Dec; 18: 15–17.
[3]Saccharomyces cerevisiae fungemia in a critically ill patient with acute cholangitis and long term probiotic use
Med Mycol Case Rep. 2019 Mar; 23: 23–25.
[4]Lactobacillus acidophilus bacteremia in a diabetic patient
J. Case Rep. Images Infect. Dis, 2019.
[5]Yoghurt-induced Lactobacillus bacteremia in a patient with Crohn's disease on therapy with ustekinumab and concomitant HIV-Infection
Z Gastroenterol . 2021 Apr;59(4):317-320.
[6]Genomic and epidemiological evidence of bacterial transmission from probiotic capsule to blood in ICU patients
Nat Med. 2019 Nov; 25(11): 1728–1732.
[7]Lactobacillus bacteremia, clinical significance, and patient outcome, with special focus on probiotic L. rhamnosus GG
Clin Infect Dis . 2004 Jan 1;38(1):62-9.
[8]Are probiotics safe? Bifidobacterium bacteremia in a child with severe heart failure
Infez Med . 2019 Jun 1;27(2):175-178.