鉄と酸素の怖い関係:鉄シリーズ④
※この鉄シリーズは、以前僕がアメブロで掲載したものを加筆・再編したものです。
③のつづきです。
今回は鉄の怖い性質を紹介します。
実はこの性質が、多くの病気のメカニズムになります。
鉄を摂るということは、それだけ病気のリスクを増やしてしまいます。その理由をみていきましょう。
鉄と酸化の関係は?
鉄の性質として、非常に反応性が高いということです。
鉄の表面にメッキも何もしていなければ、すぐにサビてしまいます。
サビは鉄が空気中の酸素と結びついて、酸化鉄になった状態です。
この反応のように、鉄を触媒として身体の中で酸素との反応が起こります。
問題は身体の中で過剰になった鉄の存在です。
前回の③でもお伝えしたように、身体に余計な鉄分を取り込むことによって、細胞にだんだんと鉄が蓄積していきます。
その蓄積した鉄が反応を起こすことで、連鎖的に細胞死が起こっていきます。
過剰になった鉄はどうなる?
細胞内に過剰になった鉄は、やがてフェロトーシス(Ferroptosis)という細胞死を起こします。[1][2]
フェロトーシスは、細胞内の鉄と多価不飽和脂肪酸(PUFA)との酸化によって起こります。[3][4][5]
PUFAはオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸の両方です。
PUFAが酸化して出来た過酸化脂質が、細胞を内部から破壊します。
そしてフェロトーシスによって、破壊された細胞から、細胞外に鉄がバラまかれてしまいます。
バラまかれた鉄のことを遊離鉄といいます。
フェロトーシスが起こると、貯蔵鉄であるフェリチンの値が増加します。
そのため、フェリチンの値が上昇すると、鉄の過剰な蓄積や肝臓疾患、炎症の疑いがあります。
本来フェリチンは、細胞内に留まり貯蔵されている存在だからです。
フェロトーシスによって細胞外に遊離鉄がバラまかれると、更に恐ろしいことが起こります。
遊離鉄(二価鉄)が過酸化水素と結びつくことによって、最強の活性酸素であるハイドロキシラジカル(ヒドロキシラジカル)が生成されます。
この反応をフェントン反応といいます。[6]
また、フェントン反応の過程でハーバー・ワイス反応が起き、酸素からスーパーオキシドが生成されます。
そのスーパーオキシドが過酸化水素と反応し、ハイドロキシラジカルが生成されます。
ハイドロキシラジカルはとても酸化力が強く、体内にあるPUFAと反応して、有害な過酸化脂質(アルデヒド)を生成します。
生成された過酸化脂質は、細胞やタンパク質、ミトコンドリア、DNAを傷つけたり、更にフェロトーシスを招きます。[7]
過酸化脂質によって変質した細胞やタンパク質は機能を失ってゴミになります。[8]
この一連の出来事が、鉄が過剰になって起こる病気の出現メカニズムとなります。
そのため、鉄の過剰な摂取はとても危険が伴うことになります。
ハイドロキシラジカルの気になること
実はフェントン反応は仮説の域を出ていません。
というのも、ハイドロキシラジカルを確認した人が未だにいないからです。
ただ、酸化の反応が起こることは確かで、その反応による架空の生成物がハイドロキシラジカルだとされています。
もう一つの説は、大量の鉄イオンが酸素と反応することで、大量に過酸化水素を生成するというものです。[9]
ただし、この事も証明されているわけではありません。
どちらにしろ、鉄を過剰に摂取すると危険で、PUFAが酸化することによって過酸化脂質が
発生するのは確かですが、酸化の違いはこのように異なっている可能性があります。
まとめ
過剰な鉄分が、病気を引き起こすことを紹介しました。
フェロトーシスについては、2020年以降にとても研究が増えてきています。
世界の文献を検索できるPub Medでフェロトーシスを検索すると、2020年以降で12,000件以上もヒットしました。
特にがんや神経変性疾患の研究においては、『いかにしてフェロトーシスを防ぐか』という治療に注目が集まっています。
しかし、日本でこの情報はあまり知られておらず、鉄の怖さに関心が無いのが残念です。
ですので未だに、貧血は鉄が欠乏していると安易な判断をされてしまうのでしょう。
鉄を摂ったら元気になったという話を聞きますが、それにもちゃんと理由があります。(ストレスホルモンによる錯覚です。詳しいことは割愛します)
続いては鉄がどんな病気に関係しているのか、そして、鉄を溜め込まないようにするにはどうしたらいいか、エビデンス盛りだくさんの有料記事にて解説します。
つづく
【参考文献】
[1]Ferroptosis: Role of lipid peroxidation, iron and ferritinophagy.
Biochim Biophys Acta Gen Subj . 2017 Aug;1861(8):1893-1900.
[2]Ferroptosis: past, present and future.
Cell Death Dis. 2020 Feb; 11(2): 88.
[3] Lipid Peroxidation and Iron Metabolism: Two Corner Stones in the Homeostasis Control of Ferroptosis.
Int J Mol Sci . 2022 Dec 27;24(1):449.
[4] Peroxidation of polyunsaturated fatty acids by lipoxygenases drives ferroptosis.
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2016;113:E4966–E4975.
[5] Ferroptosis: mechanisms and links with diseases.
Signal Transduct. Target. Ther. 2021;6:49.
[6]Oxidative mechanisms in the toxicity of metal ions.
Free Radic Biol Med . 1995 Feb;18(2):321-36.
[7] Membrane Damage during Ferroptosis Is Caused by Oxidation of Phospholipids Catalyzed by the Oxidoreductases POR and CYB5R1.
Mol Cell . 2021 Jan 21;81(2):355-369.
[8]Protein Carbonylation and Metabolic Control Systems.
Trends Endocrinol Metab . 2012 Aug;23(8):399-406.
[9]Fenton reaction and Hydroxyl Radical.
THE CHEMICAL TIMES 2015(2) :8-16.