見出し画像

IKI's GIN PROJECT.【旅先案内人 vol.23】海里村上×壱岐の蔵酒造 #3

観光客が激減する中、どうにかして「壱岐の良さを遠方の方にもお届けしたい」という強い思いではじまった「IKI's GIN PROJECT.」
魅力的な食材の宝庫壱岐島のフードロス問題にも着目し、地元の酒蔵、農家、漁業も巻き込んだ一大プロジェクトの奮闘を連載でお届けします。

■Made in 壱岐とは?
連載最後は、JA壱岐市の松嶋さん、アスパラガス農家の平野さん、壱岐の蔵酒造の石橋さんに聞いた壱岐の今後について。そしてそれぞれの考える「Made in 壱岐」についてお聞きしました。番外編では壱岐の蔵酒造の焼酎造りにお邪魔した様子をご紹介します。

■意外と多い?壱岐のアスパラガス農家

壱岐島内にアスパラガス農家は今、70件ほどですかね?。最近は、若い人や新しい人が島にやってきたりもしています。」とアスパラガス農家になって11年の平野さんが教えてくれました。私は、その数字が多いのか少ないのかピンとこなかったのですが「壱岐の島の面積を考えると、70件のアスパラガス農家があるのは多いと思います。」と松嶋さん。確かに、壱岐の面積は138k㎡と山手線内側の面積の約2倍ほどの島です。その広さに70件もあるとは驚きました。平野さんは「多いと思います。アスパラガスは割と通年で収穫できるのですが、11月・12月・1月はアスパラガスだけではやっていけないので、ブロッコリーやカボチャ、落花生なども育てています。雇用の問題もあるので。家族農家さんであればその点は問題ないかもしれませんが。」壱岐は食料自給率の高さが特徴の島です。雇用の面だけでなく、食材の豊かさにおいてもこのような農家さんの努力によって、島が支えられていることを実感しました。

■島内で賄う、循環型農業を目指す

農業において堆肥を島内で賄うことができるのは壱岐の強みだと、JA壱岐市の松嶋さんと、アスパラガス農家の平野さんが教えてくれました。「農業に必ず必要となってくる、堆肥ですが他の地域では堆肥が足りず入手に困っているところもあるようです。その点壱岐は、壱岐牛のおかげで堆肥が足りず困ることはほとんどありません。」

訪れた際、ちょうど堆肥をまいている最中でした

牛の堆肥でアスパラを育てて、アスパラの残りかすや米のわらとかを牛が食べてまた堆肥になる。壱岐の豊かな土壌と自然ですくすく育った壱岐牛がいるからこそ、栄養分がたくさん必要なアスパラがよく育つと言っても過言ではないですよね。「堆肥を探したことがないですね」と平野さん。

JA壱岐市の松嶋さん(左)とアスパラガス農家の平野さん(右)

今回、クラフトジン「KAGURA」の開発がきっかけとなり、ロスになってしまったアスパラガスの繊維を使った和紙も誕生しました。(海里村上×壱岐の蔵酒造 #2参照
現在ある農業の循環の中に、このようにフードロスの問題への取り組みで生まれた加工品が追加されてくことで、壱岐島内により良い循環を生み出す事ができると感じました。

■新しいことに挑戦し続ける

壱岐の蔵酒造の石橋さんは、この「IKI's GIN PROJECT.」の目的のひとつに壱岐の雇用を増やしたいという想いがあると教えてくれました。「壱岐島内で何か新しいことをしなければ、壱岐島内の人が皆、島外に出て行ってしまうと思うんですよね。島内の人口が減ってしまうと、ここでお酒を造ることもできなくなってしまうので。焼酎以外の部分でも新しい何か。例えば観光などもやっていかないと生き残っていけない部分があると思っています。」

「KAGURA」を両手に微笑む石橋さん

「今後については、クラフトジンは夏にブルーボトル、冬に今回のアスパラ和紙ラベルのボトルで年に2回ほど出していく予定です。もちろんボタニカルはその都度変わってくるので味わいは毎年少しずつ変わってくるかと思います。さらにこの2種類に加えて、プレミア的な商品を出すことも考えています。」すでに“幻のクラフトジン”である「KAGURA」のプレミア商品、今から期待してしまいます。「クラフトジン以外にも今後やりたいなと思っていることがあるのですが、まだまだ実現するかどうかの段階です…。さらに色々な農家さんを巻き込むことのできる商品の開発に向けて動いていきたいと考えています。」と石橋さん。

「IKI's GIN PROJECT.」だけでなく、新商品の開発など精力的に次々と新しいことに挑戦していく石橋さんの姿は、きっと壱岐の皆さんにもさまざまな影響を与えているのではないでしょうか?
実際に、第2弾「KAGURA」の製造にあたり壱岐の蔵酒造の社員から、「ロスをコンセプトにしているのに廃棄される化粧箱をつけるのはコンセプトとズレているのではないか」と指摘があったそう。当初では考えられなかった、社内のクラフトジンへの姿勢が石橋さんの努力を物語っているように感じました。

■Made in 壱岐

「焼酎造りにおいては、お米は基本壱岐産、麦はどうしても壱岐産では賄えない部分があります。でもやはり全て壱岐産のもので造ることができるのが理想。色々な農家さんから買って壱岐島内で回していくさまざまな仕掛けを作り、ゆくゆくは全て壱岐島内のもので造る『Made in 壱岐』を目指していきたいと思います。」と石橋さん。
JA壱岐市の松嶋さんとアスパラガス農家の平野さんは、「農業においては、今現在でも賄えている部分は多いと思いますが、やはり循環型農業を極めていき、より島内でいい循環を生む事が『Made in 壱岐』だと思います。ロスになってしまっているものの加工も含めて」

SDGsな活動や、フードロス問題の解決に向けて挑戦をする中で、壱岐に人を呼び込み島内を盛り上げる。今はまだ、全て島内のもので生産することは難しい現実はあるが、その上で全て壱岐産のもので生産する事ができる仕掛けを生み出したい。さまざまな角度から「Made in 壱岐」を目指して奮闘する皆さんの熱い想いに触れることができました。

■壱岐神楽、大大神楽にて「KAGURA」が奉納

住吉神社

2022年12月20日に、住吉神社にて行われた大大神楽が奉納。「壱岐神楽」は、約700年の古い伝統と歴史をもつ神事芸能で、国指定重要無形文化財に指定されています。
壱岐の神社に奉職する神職にしか舞うことや音楽を演奏することが許されていない神聖なものとして知られ、大大神楽は壱岐神楽の中でも最も厳粛・丁重なもの一般的にはお米を奉納するものですが、形を変えてお酒やお餅を奉納する場合もあるそう。ジンも麦から造られており、五穀(米・麦・あわ・きび・豆)を奉納するという意味をもつため、2022年の大大神楽で「KAGURA」が奉納されたとのこと。

「KAGURA」という名前、「猿田彦命」(サルタヒコノミコト)・「八咫烏」(ヤタガラス)のボトルデザインに加えて、神社での奉納。「“神”と共にある、幻のクラフトジン」と言えるのではないでしょうか…?

壱岐の魅力を詰めこんだ「KAGURA」第2弾の発売はきたる3月。
ぜひ、ご期待ください。

住吉神社に奉納された「KAGURA」

■番外編<壱岐の蔵酒造の焼酎造り:朝櫂き>

壱岐の蔵酒造の石橋さんに焼酎造りを一部見学させていただきました。

見学させていただいたのは、櫂入れ(かいいれ)という工程。
櫂入れとは、櫂棒でかき混ぜる操作のこと。 櫂入れにより醪の溶解と発酵作用との調和を図ります。

大寒波だったため、気温差で湯気が

かき混ぜるとぷつぷつという音と共に、近づいてみると、パン生地の発酵段階のような香りが漂います。個人的にはアルコール感というよりもパン生地みたいだな…。という印象を受けました。いい香り。

ぷつぷつと呼吸している様子

「この作業は非常に危険な作業なため、必ず数人で行うようにしています。この中に落ちてしまうと一酸化炭素中毒になってしまうので。」と石橋さん。

作業を見つめる石橋さん

普段、見ることのできない焼酎造りの工程を見学するという貴重な体験をさせていただきました。

「IKI's GIN PROJECT.」

観光客が激減する中、どうにかして「壱岐の良さを遠方の方にもお届けしたい」という強い思いではじまった「IKI's GIN PROJECT.」
魅力的な食材の宝庫壱岐島のフードロス問題にも着目し、一大プロジェクトの奮闘を、海里村上の貴島さん、壱岐の蔵酒造の石橋さん、JA壱岐市の松嶋さん、アスパラガス農家の平野さんのお話を聞き、連載でお届けしました。
今後の「IKI's GIN PROJECT.」や新たな取り組みにもぜひ、ご期待ください。

「Japanese Iki Craft Gin KAGURA」


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?