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つまみ食い上等 その6 やさしい女 ドストエフスキー 井桁貞義訳

男性の一人語りなんだけど、くだくだしいなぁ、しつこいなぁ、もうどうでもいいって、ほんで何が言いたいねん!?と投げ出したくなった。数ページで。でも最後まで読んだし面白いのは面白かった。なんか読んでるとイメージが浮かびやすくて、映画見てるみたいなとこあるんですよね、ドストエフスキー。キャラもはっきりしてるし。

思い出した。若いころにドストエフスキーの長編を読んだときもこういう気持ちになって、ああもうこいつらの人生がどうなろうが知ったこっちゃないわ!と、だいたい新潮文庫だと350ページくらいでギブアップしてしまうのだった。

それがどういう風の吹き回しなのか、去年の初め頃からドストエフスキーの長編が読めるようになった。ドストエフスキーだけではなくてこれまで読めなかった他の海外名作長編も。一昨年2023年が転機で、小説の勉強をやり直しはじめたのが効いたらしい。

しかしやっぱりこの小説家、面白いんだけど、ああくだくだしい、うざい、だから何が言いたいねんと長編でなくても思ってしまうんやなと、文庫本で90ページくらいの中編「やさしい女」を読んで、あらためて知った。

妻に自殺されて錯乱している男の語り。この妻は10代で若いし、男も20代後半かせいぜい30代かな。つまり男は妻から愛されていなかったと認識したくないみたいなんだけど、さっさとそれを認めたらどうやねん。90ページもその周りをグダグダめぐってるだけって。ひとりよがりもたいがいにしとけよ。

この人、奥さんに求めたことが大きすぎたんじゃないかな。そこまで好きになれへん人から情熱恋愛求められたって感じで、それは無理やろ。10代の女の子にはかなり重くてきついと思う。死んで逃げたくなってもおかしくないんじゃ。
などと、下世話な感想しか思い浮かばなかったけれど、解説読んだら宗教的な意味合いもいろいろあるらしい。

講談社文芸文庫で一緒に収録されている「白夜」も以前読んだことがある。好きな女の子にいろいろやってあげて仲良くなるんだけど、あなたいい人ねって、その子は別の男とデキて振られる話だったと思う。その子もちょっとどうかとは思う。気を持たせるようなことをしているつもりはないのかもしれないけど。

そちらの主人公の男も「やさしい女」の主人公の男と同じで、ひとりよがりというか妄想的というか、2人とも好きな子に振られたり妻に自殺されたり気の毒なんだけど、相手の女の子の気持ちを考えていない。そもそも、その子あんたのこと好きじゃないやろ、その子にいくのやめといたら?とツッコミを入れてしまう。男の片思いの堂々めぐり。アウトが確定したあとも未練がましい。彼女はおれのこと好きじゃないって認めたらそれで済むのでは系の物語。

やさしい女 白夜 講談社文芸文庫
https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000211057
フランスのロベール・ブレッソン監督が1969年に映画化している。
https://eiga.com/movie/30343/

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