生きててよかった(そんな夜を探してる)
みなさんご存じ、フラワーカンパニーズの『深夜高速』のサビ。
最近だとCMソングに起用されていたり、他のアーティストがカバーしていたりするから、曲名は聞いたことなくとも、どこかで耳にしているんじゃないかな。
この曲が起用されているCMって、若者がお仕事でちょっとした壁にぶつかりながらも、持ち前のガッツと努力でそれを乗り越えてひとつ成長しましたよ、みたいな内容だったと思う。
だからこそ、この曲の「生きててよかった」というフレーズがぴったりで、印象に残りやすいような。
ここまでは、あくまでわたし個人の感想。
で、ここからもわたし個人の感想。
個人的に思い入れの深い曲だからなのか、あのCMのように人生をシンプルに肯定する曲として使われていることに、少しだけもやもやしてしまう。
「仕事で壁にぶつかったけどなんとか頑張って成功した! 生きててよかった!」
みたいなストーリーに、歌詞の文字だけを見て使われている感じ。
そういう曲じゃなくない?
CMの最後の最後に、申し訳程度に「そんな夜を探してる」の部分が流れているのを観ていると、なんというか、どういう曲として切り取りたいのかがなんとなくわかってしまう。
何度も言うけど、あくまでわたし個人の感想。『深夜高速』をそういう歌詞だと捉える人がいても、別に不思議じゃないし文句を言うつもりもない。わたしが作詞したわけじゃないので。作った人にしか歌詞の真意はわからないからさ。
この曲の最後は「生きててよかった」というフレーズで締められる。これまでのサビのように「そんな夜を探してる」とは続かない。
これって、どういうことなんだろう。
曲の主人公は、「生きててよかった」と思える夜をまだ探し続けているのだろうか。
それとも、年齢を重ねた末に「生きててよかった」と手放しで受け入れられたのだろうか。
少なくとも、CMで紡がれているような、短いスパンの苦悩ではないと思うんだよね。うん。
若いころからずっと同じ仄暗い感情を抱き続けてきて、年を取った末のその場所はどうなっているかって感じ。
未来がどうなるか皆目見当もつかないのに、若さの勢いのまま、何も見えないところを猛スピードで進んできた末の、その場所。
まさしく、深夜高速。真暗な中を、ヘッドライトの頼りない光だけで突き進むように生きてきた結果、どうなった?
その場所は、「生きててよかった」と手放しで喜べる場所だった?
それとも、まだまだ深夜高速の上で、報われる夜を探し続けてるの?
曲の終わりを聴いて何を思うかは、ほんとうに聴いている人の人生によって左右されると思う。
余談も余談なんだけど、わたしは余裕で後者のタイプの人間。
若い若いとは言われるけど、自分的にはもう若さを失いつつあるような年齢の人間。
いまだに、深夜高速を走るような人生を送っている。
「生きててよかった」と思える日は来るのだろうか。
まだ気配はない。
というか「生きててよかった」なんて、どこかで死を望んだ人しか抱かない感情だと思う。「死を望む」という表現が大げさだというなら「何かを諦めた」という表現でもいい。
生きててよかったとしみじみ思うためには、どこかで底を味わう必要がある、というのがわたしの持論。
昔読んだ漫画かプレイしたゲームでも同じようなことを言っていた。「幸せな人間に、幸せな物語は書けない」みたいな。それとだいたい同じ。
この歌詞を書いた人も、きっとそうだと思う。
めちゃくちゃ適当なことを言うけど。
真実は歌詞を書いた人しか知らない。
こうやって「自分なんてどん底だ」みたいに卑下しておきながら、どこかで妙な優越感やそんな自分に酔っている部分があるのも、まあ否定はしない。ただ、そういう自分が心底気持ち悪い。
それに100パーセント全開でそんなことを思っている人間は、たぶんnoteなんてツールを使わないと思うし。
どんなに明るくて笑顔満開の人だって、生きていればどこかで何かを諦めた経験があるはず。
笑顔だけで生きてきた人間なんていないんだよ。
つらくて人生のどん底みたいな経験をしてきたのは、なにもキミだけじゃないんだ。
じゃあ、どうしてつらい経験をしてきたのに、わたしとあなたではこうも違いがあるんだろう。
環境なのか、本人の資質なのか、はたまた両方なのか。
難しいよね、人間って。おもしろ。
いや、おもしろくない。気持ち悪い。
めちゃくちゃ逸れたけど、最初に戻ると「『深夜高速』があのCMに起用されていることにもやもやする」ってハナシ。
CMのストーリーも『深夜高速』もどっちも好きなんだけど、なんだか釈然としないなあってハナシ。それだけ。
これをあとで読み返したら、自分の文章が気持ち悪すぎて悶絶すると思う。
それでも、これがわたしの考えていることなので後悔はあんまりしていない。
もうちょっと、感情的にならない文章でもよかったかなーとは思うけど。
感情的にならず、簡単な言葉と文章で自分の考えを伝えられるようになりたい。
そんなふうに文章が書ける夜を探している。