洋服のもつ「内的個性」。
こんにちは。こうです。
今回は、ぼくが考える「洋服のもつ“内的個性”について」書いていきます。
1.そもそも「内的個性」って?
ずばり「内側の個性」のこと。人間でいうところの価値観、性格、好き嫌い、得手不得手など、個性の外側ではなく内側の特徴を指します。
「内的個性」という言葉自体あまり一般的ではありませんが(そもそも公用語として存在してるのか謎)、今回は一言にまとめるために、そう表現します。
2.洋服における「内的個性」とは
人間でいう内的個性が価値観や性格などの「内側の個性」であることを踏まえて、洋服においては以下のように整理してみました。
①その「服そのもの(形、生地、ディテールなど)」の
歴史的背景。
(なんの用途で生産、使用されてきたか。そこから
どのような変遷を辿ったのか。)
②「服」とその服を作った「ブランド」を掛け合わ
ての歴史的背景。
(①の服でも、そこにブランドコンセプトが加わる
とそれぞれが異なるものになるため)
③その「服そのもの(形、生地、ディテールなど)」の
文化的背景。
(どんな人たちが、どんなときに、どのように着て
いたのか、なんの目的があったのか。)
④「服」とその服を作った「ブランド」を掛け合わ
せての文化的背景。
(③の服でも、そこにブランドコンセプトが加わる
とそれぞれが異なるものになるため)
洋服における「内的個性」とは、服そのものやブランドの起源、歴史、文化などの「背景」であると考えます。
※「歴史的背景」と「文化的背景」のちがい
【歴史的背景】
洋服が生まれる過程やブランドの成り立ちにおいて、過去に実際にあった目的、事実、出来事に基づいていること。背後にそれらがあることを指しています。
【文化的背景】
人々が生活する中で「洋服やブランド」と関わって身に付けていった立ち居振る舞い、生活様式、価値観などのこと。またそれらへの影響のことを指しています。
2.それぞれの服がもつ個性
まったく異なる服たちにそれぞれの個性があるのはもちろんですが、一見同じような服に見えても異なる個性をもっています。
「1ジャンル2アイテム」を例に、1の①〜④を詳しく解説していきます。
そしてそれぞれのもつ「内的個性」を明らかにしていきます。
ジャンル例 : ジーンズ
①LEVI'S501ジーンズ
②Wrangler11MWZジーンズ
【LEVI'S501の内的個性】
①服そのもの(ジーンズ)の歴史的背景
・炭鉱や金鉱発掘のための作業着として誕生。
・上記やその他の肉体労働での作業着のほか、カウ
ボーイが牛の世話をしたり馬に乗って移動したり
する際に着用。
・さまざまな労働や作業、スポーツなど多種多様な
場面で着用される「世界的な衣服」に。
②「服(ジーンズ)」✕「ブランド(LEVI'S)」の歴史的
背景
・LEVI'Sがジーンズを世界で初めて作った。
・パンツの強度を上げるために、リベット(鋲)で生地
や縫い目を補強する方法を初めて行う。特許を取
得。
・初めてファッションとして取り入れられたジーン
ズもリーバイスのもの(詳しくは後述)。
③「服そのもの(ジーンズ)」の文化的背景
・1950年代以降からは不良たちが反抗の象徴として
穿くように。
・1960年代以降からはヒッピーたちが自由の象徴と
して穿くように。
・これらのようにさまざまな「象徴」として穿かれ
てきたことが、カッコつけたり自己表現をしたり
したい若者の心を掴み、いつしか「ファッション
アイテム」の定番に。
④「服(ジーンズ)」✕「ブランド(リーバイス)」の
文化的背景
・1953年公開の映画「乱暴者」で、バイクに乗った
不良たちがレザージャケットにリーバイスのジー
ンズを合わせるいでたちで登場。それがきっかけ
で作業着をファッションとして着るという認知
がなされるように。
・1950年代以降、ロカビリーミュージシャンのエデ
ィコクランをはじめ90年代にはNIRVANAのカート
コバーンと、さまざまなミュージシャンが501を愛
用。音楽カルチャーと切っても切れない存在に。
・1980年代頃、日本において年代の古い衣服に対し
て価値付けをする「ビンテージ古着」という
概念が生まれる。その概念の中で先駆けとなった
衣服が年代の古いリーバイスのジーンズ。
「ビッグE」、「66モデル」、「赤ミミ」、「縦落ち」な
ど、いわゆる「リーバイスのビンテージジーン
ズ」であることを象徴するさまざまな名称がうま
れる。
「ビンテージ古着」の概念と価値を世に広めるきっ
かけとなったアイテム。
【Wrangler11MWZの内的個性】
①服そのもの(ジーンズ)の歴史的背景
・リーバイスの項に同じ。
②「服(ジーンズ)」✕「ブランド(Wrangler)」の歴史
的背景
・カウボーイのために開発された。(金鉱作業のため
に開発されたリーバイス501とはルーツが異なる)
・11MWZは1948年に開発。世界で初めてのジッパー
フライデニムが誕生。
・世界で初めてジーンズの開発に「衣装デザイナ
ー」を採用。馬にのるための丈夫さだけでなく、
乗った姿の格好良さにも重点を置いて開発。
デザイナーは、当時ハリウッド映画の衣装デザイ
ンを担当していた「ロデオ・ベン」。
③「服そのもの(ジーンズ)」の文化的背景
・リーバイスの項に同じ。
④「服(ジーンズ)」✕「ブランド(Wrangler)」の文化
的背景
・乗馬時の美しいシルエットと丈夫な生地で、ロデ
オライダー(暴れ馬や牛を乗りこなす競技を行う人)
たちから愛される。またジッパーフライは、ボタ
ンフライの隙間に角が引っかかり事故になること
を防いだ。
・シルエットの美しさや見せ方に特化した世界初の
「デザイナーズジーンズ」。60〜70年代とファッシ
ョンとしてジーンズを穿く文化が浸透していたア
メリカにおいて、街でも多くの洒落者から愛され
た。
・ウイリーネルソン、ガースブルックスなどのカン
トリーミュージシャンがラングラーのジーンズを
愛用。
当時、ハリウッド映画産業が打ち出したイメージ
の影響で、「カウボーイやウエスタン」と「カント
リーミュージック」の結び付きが強くなったとさ
れる。
カウボーイのために開発されたラングラーとも、
文化的背景の関連が伺える。
それぞれの「内的個性」を簡単にまとめると…
LEVI'S501
・肉体労働全般の作業着。
・世界初の「ジーンズ」、「リベット補強パンツ」と
して、多くのワーカーから絶大な支持を得た。
・反逆や自由の象徴として、自己表現のためにファ
ッションに取り入れられた。背景には当時のアメ
リカの社会情勢、映画、音楽の影響があった。
Wrangler11MWZ
・肉体労働全般の作業着。
・美しさに特化した世界初の「デザイナーズジーン
ズ」として、多くのカーボーイから絶大な支持を
得た。
・開発時点からファッション性に特化していたジー
ンズは、おしゃれに敏感な人たちから愛されてき
た。カントリーミュージックなど、ウエスタンス
タイルを軸とした音楽カルチャーにも精通してき
た。
3.さまざまな洋服の「内的個性」はさまざまな人の「内的個性」に刺さる
同じ衣服でも、ブランドの目的や成り立ちによって異なる文化が存在し、それぞれがちがう「個性」を発揮しています。
そしてその「服の個性」はさまざまな「人の個性」に合った形で刺さります。
同じジーンズでも、、
・バイクやロカビリーカルチャーが好きな人はリー
バイスを。
・ウエスタンファッションが好き、もしくはとにか
く「ファッション、おしゃれが好き」な人はラン
グラーを。
※このカルチャーが好きならこれじゃないとダメ、ということではありません。いろんな服にいろんなカルチャーがあるため、あくまで「選ぶポイント」の一例です。
選び方、何をポイントとするのかはその人の自由です。
↑のように、それぞれの服のもつ個性を知って、自分の個性(好みや価値観)に合わせて選ぶことで、より洋服が楽しくなり、自分らしくいられることにつながるのではないかと思います。
今回は以上となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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