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【読書ポートフォリオ】『明治生まれの日本語』を読んで

こんにちは。春から高校で国語を教える予定の者です。この記事は、そんな私が【読書ポートフォリオ】と題して、いつか生徒にお勧めしてみたいと思う本の感想を書いています。

今回は、飛田良文『明治生まれの日本語』(角川ソフィア文庫) です。

一冊の本に心が動くきっかけについて

私は、人のおすすめ本について尋ねる時、なぜこの人はこの本を読もうと思ったのだろうかというきっかけの部分に一番興味を持ちます。きっかけは人それぞれで、ある経験に基づいているかもしれないし、自分の趣味に関することかもしれない。あるいは、表紙を見てビビっときたから、といった言語化しきれないものかもしれない。そんな十人十色の「きっかけ」を聞くことも、読書に興味をもつきっかけへとつながるのではないかと思っています。

前置きが長くなりましたが、私がこの本を読もうと思ったきっかけは、日本語の豆知識を少しでも多く生徒に紹介できるようになりたいと思ったからです。実は私、この本については、途中で挫折していました。しかし、春から学校で国語を教えることが確定した時、急にやる気が湧いてきて読書を再開しました。少し焦りもあったのかもしれません。ただ、未来がはっきりしたからこそ、この本を読むことを再開したのだと思います。自分の意識の持ちようによって読む本も変わってくるということを改めて感じました。

今回紹介する飛田良文『明治生まれの日本語』は、『三省堂国語辞典』など数々の辞典の編纂に携わっている国語学者による文章です。開国により、急速に西欧化が進んだ明治日本において新たに定着していった日本語について考察しています。

例えば、「恋愛」という言葉、これは江戸時代まで結婚相手は親が決めるのが一般的だった日本においては考え方自体も定着していませんでした。そこに西欧の考え方が入ってきたことにより、「恋愛」の素晴らしさを提唱する知識人が増え、一般的な考え方として普及していきました。詩人や哲学者が「恋愛」についてまっすぐに熱く語った文も数々引用されており、なんだか新鮮さを感じました。

今では当たり前の「恋愛」という考え方が日本において明治から定着したものだったのか…。いろいろと考えさせられました。結婚の自由という根底があるからこその「恋愛」だったのですね。社会は言葉と密接に結びついているということを改めて意識しました。社会、そして思考にまで浸食していく言葉の存在はやっぱり面白いなと思います。「恋愛」以外にも、「年賀状」、「時間」、「科学」、さらには犬の名前の定番「ぽち」まで、様々な言葉が取り上げられています。

最後に

私は、角川ソフィア文庫がとても好きで、頻繁に読んでいます。研究の第一線で活躍されている先生方の文章を手軽に読めるので、自分の興味関心についても深められます。常に手軽がいいとは限りませんが、一見難しそうなものを手軽に学ぶことができたという経験はその後の知的好奇心を広げるきっかけになると思います。何かを学ぶ際に、手軽さと遠回りの両方を経験しておくことも大切なことなのではないかなあなどと考えている今日この頃です。

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