こんな形で出逢いたくなかった。まだファンでいて良いですか?
時差で話すことにする。
ある日の22時半。
都内のとあるマックで推しを待っていた。
酔っ払ってとても耳障りの悪い大学生らしい2人の男がいる。
この階には私とそいつらのみ。正直、怖い。
そんなことより、2月12日に第112回看護師国家試験を受けた。3社の回答に登録したが、A判定やら晴れやらでおそらく合格している事と思う。
マークミスをしていない限り。
そして、そんなことより。
今日はとあるライブに行った。
私は俳優やバンドマン、芸人にと色んな界隈に推しがいる。その中でも今1番押している人。
有り得ないくらい楽しみだった。
だから、行く前にそのライブの演者にdmを送った。
その人は私の推し。
今日行くライブの推しで、たまにストーリーに反応してあげている。いつも必ず返信がくる。その返信に何か返すとスタンプで終わる。
そんなことをたまにしているそんな推し。
でも今回は違った。
ライブ前だというのに色んなことを話していた。
ライブ前だというのに秒で返信が返ってきた。
どんな流れか、いつか遊び行きたいと言われた。
ノリだと思った。
だから、ライブ終わったら快活泊まるから泊めてくださいと送った。
私もノリで返した。
全てはノリから始まった。
数分後、打ち上げがあるかもしれないから、少し遅くなるけどその後でもいいなら、と。
本気じゃないと思った。
ライブが始まった。
彼は数百人の規模の会場でスポットライトを浴び、会場の目線を集めている。数百人からの拍手や歓声、そして笑いを浴びている。
そんな人がそんな家に来ていいよ、なんて言うはずがないし、こんな可愛くてスタイルがいい数多くの観客がいるんだし、こんな私と、、、。
なんて有り得ないと思った。
だから、そんなことは途中から忘れて狂うようにライブに集中したし、楽しんだ。
狂うように勉強した試験の直後のライブがこれで、本当に良かったと思った。
終演後、有り余る感想とそれに加えて少しの期待を込めて
"寂しくなったら連絡してください"
と送ってしまった。
また、彼はすぐに返信をくれた。
"終電くらいになるかも"と。
私は知ってる街の知ってるカフェでキャラメルラテのホットを2時間かけて飲んだ。
全く飲めなかった。緊張でお腹が痛かった。
23時。
帰るには終電も近いし、もう諦めようと思った。
しかし、カフェから駅に向かっている時、最寄りの駅を提示された。
彼の最寄りに向かう終電に飛び乗った。
最寄りに向かうまで緊張が凄かった。
高鳴る鼓動、震える手。
どんなことよりも凄まじかった。
私にはこんな時に力になってくれる人がいる。
それはラランドニシダ。
ニシダに一目散に連絡をした。
ニシダは頑張れと、そして、本当に嫌になったら家を飛び出ろ、と。心強かった。
そんなこんなで。
彼の最寄りで落ち合って、たわいもない会話をしながら彼の家に向かった。
何かの配信や媒体で見た事のある家。
彼がいつも使っているドライヤーを借りた。
彼もシャワーから上がり、歯を磨いている時、色々話した。普段は何をしているのか、いつ知ったのか。など。不思議な感覚だった。
推しと推しの家で歯を磨きながら話している。
え?(笑)なんて言ってんの???(笑)って談笑し合ったたり。
とても楽しかった。
お互い大人なので、暗黙の了解のように夜が始まった。
何個も年上の彼。経験が多いのか全てが上手かった。これまでいた彼氏よりも気分が上がってしまった。
彼は手を握ってくれた。
ライブやステージ媒体でしか聞かない声が耳元で聞こえた。
そうか、知っちゃいけないところまで彼を知ってしまったのかと思った。
初めは完璧な優越感だった。
けれど、その時にはもう、嫌な気持ちでこんな形で出逢いたくなかったと心の底から思った。
思いは裏腹で、このまま続けと思ったりあんなDM送らなきゃ良かったと色んな思いが駆け巡った。
彼は私の名前は呼ばなかった。
彼は私にこの時の彼氏がいることを知っていて、ずるい事もたくさん言われた。
終わったらお互いに直ぐに寝てしまった。
次の日は朝早く出た。
マスクを持っていったけど、何か思い出が欲しくてマスクを1枚貰った。このマスクは大切な時に使おうと思った。
駅まで向かう途中、強い風が吹いた。
彼の匂いがした。
彼は家を出る時"またね"なんて言ったけど、その"また"なんて無いだろうと思った。
私は急いで学校へ行った。