『死を抱く女』(1982年/火曜サスペンス劇場) <2時間サスペンス感想>
監督 村川透
脚本 石松愛弘
原作 樹下太郎
出演 酒井和歌子、村野武範、結城しのぶ、左とん平
貧しさから抜け出すため、金持ちの上司、浜田と結婚した絢子。しかし、浜田は結婚初夜に旅館の窓から転落して死亡。一夜にして未亡人となった絢子は浜田家の財産を狙って家に残るが、一年後、浜田の死が殺人だったことを知る。
本作はラストシーンのためにある! といっても過言ではない作品。とはいえ、別にどんでん返しがあるわけではなく、殺人は起こっても犯人はすぐに名乗り出てくるので、ミステリー要素もない。
では、どんな作品なのかといえば、主人公の酒井和歌子と彼女に想いを寄せる村野武範を中心に身内はもちろん、部外者までもが入り乱れる人間関係のうねりをスリリングに描いた作品だ。
監督は邦画アクションの巨匠、村川透。本作のような人間ドラマでも、酒井と村野が公園で会うシーンや、遺体安置室、マンションの踊り場といった殺風景な場所をハードボイルドでカッコいいカットに仕上げているあたりはさすが。
しかし、出色なのは、なんといっても冒頭から述べているラストシーンに尽きる。ここで登場する泉じゅんの扱いも最高。ネタバレになるので詳しくは書かないが、結末、演出、照明、泉じゅん、そして、「聖母たちのララバイ」の5コンボが見事に決まって、震えがくるほどのカタルシスが味わえる。
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