5月16日 国際光デー 【SS】暗闇に光を
日々設定してある記念日の中から一つを選び出して、その記念日から連想した内容でショートショートを綴ってお届けしています。今日の選ばれし記念日はこちら。
【今日は何の日】-国際光デー
教育・科学・文化の発展と推進を目的とした国連の専門機関である国際連合教育科学文化機関(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization:UNESCO、ユネスコ)が制定。国際デーの一つ。英語表記は「International Day of Light:IDL」。「光の国際デー」ともされる。
光は、科学・文化・芸術・教育・持続可能な開発・医学・通信・エネルギーなど、様々な分野で活用されており、ユネスコが目指す教育・平等・平和の達成において、重要な役割を担っている。この国際デーは、光とその科学技術が世界中の人々の生活の中で果たす役割について再認識する日である。
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【SS】暗闇に光を
銀河系には太陽という明るく光る恒星がある。しかし、銀河系から遠く離れたダークネス系には光がない。ダークネス系のなかで唯一生物が存在している黒球という惑星の住人は、自然光というものに憧れを持っていた。黒球では、人工的に作られた白い光しか見たことはなかった。
黒球人の科学者たちは、何とか銀河系の太陽を作り出すことはできないものかと試行錯誤を繰り返したのだが、そもそもが銀河系では太陽を中心に重力が構成されバランスが保たれている。ところがダークネス系ではそれぞれの星は中心の星に引っ張られているわけではなく、複数の星がバランスよく引き合って存在しているのである。したがって、太陽のような恒星をもし作ることができるとしても、全体のバランスを壊してしまうことになると気づいて、研究は中断された。
それでも、どうしても太陽の光を諦めきれないブライト博士は、何か手段があるはずだと黒板に向かって、訳のわからない数式を端から端まで書いていた。黒板といっても地球にあるような物理的な黒板ではなく、空間に浮かんだ向こう側が透けて見える映像に専用のペンで書くものだ。この星では木が存在しないため、紙というものがない。ほとんどがデジタルで処理され、教科書や、手紙、メモなどは空中に現れるディスプレイに向かって書くのが一般的な光景だった。
ブライト博士は、光の可能性の研究を始めた。地球というところでは、太陽からの光を可視化できる光と、赤外線、紫外線の三つに分類していることを知り、その中の可視光線だけを何とか利用する方法として、光の転送の可能性を探っていた。その過程で、なんと地球上でも光のないところに光を届ける研究が進んでいることを知った。そして悟った。我々の星でも利用できるはずだと。
地球上で開発されたものは、太陽の再現と月の再現を人工的に行うというものだった。これはまさにブライト博士が実現したい考えに似ていたものだ。まさか、地球のほうが早く実現しているということは驚きではあったが、光を持たない黒球にとっては遅れをとっても仕方のない分野だっのかもしれない。
地球上で開発されたものは、各家庭に設置して擬似的な窓を作り、そこから太陽光が差し込んでくるように感じる装置だった。ブライト博士が最終的に実現したかったのは、全ての住民の頭の上から降りそそぐ光を再現することだったので、厳密に言えば違うのだが、パイロット的にその機能を評価することはできると思った。そして、その効果を確認した上で光の転送そのものの研究を継続しても遅くはないと考えたのである。
こうして人工の太陽光が降りそそぐ窓は、黒球でも浸透し始めていた。光は生物に成長という効果をもたらすことはブライト博士も認識している。そして成長に効果があるのは、可視光線であるということも。ブライト博士は可視光線に絞って研究を続けた。そして可視光線の中の七つの色をバラバラで転送し、再度組み立てて光にすることができるマシーンを開発したのである。
開発したマシーンを作動させるには、銀河系の太陽の光を転送して持ってくる必要があった。その実現のため、太陽の周りを回っている星の中で金星に目をつけた。地球人は月に対しては異常な執着心を持って取り組んでいるが、金星に関しては月ほどの執着を持っていないと判断して、金星の表面に太陽光転送装置を埋め込んだのだ。金星の気圧は地球の百倍ほどもあり、地球人が金星の表面で活動することは考えにくいと判断したからでもあった。
金星表面で収集された太陽光は、特殊な光フィルターを通過させることで可視光線のみ取り出され、黒球に向けて転送される。正確に言えば黒球を照らすことができる位置にいる宇宙ステーションに向けて無重力空間の中を一瞬で転送されるのだ。そして光を受信した宇宙ステーションは、光の再構成を実施後、タイマーと連動させて、黒球に向かい擬似太陽光を照射する仕組みとなっていた。
「ブライト博士、やっとここまで来ましたね。これで博士の研究の成果も報われることでしょう。おめでとうございます」
「そうだな、やっと点灯式まで漕ぎ着けた。長かったなぁ。個別の擬似太陽の窓をつけた住宅も普及したが、これで家の中だけではなく外の世界にも光を届けられることができるようになったな。頑張ってきた甲斐があったなぁ」
「はい、博士。私も博士についてきた助手の一人として嬉しく思います」
カウントダウンが終了し、宇宙ステーションから美しい光が黒球に向かって照射された。あまりにも明るすぎる光を照射され、黒球の人々はまともに目を開けてはいられないほどだった。今後は、黒球にとって最適な光量となるように調整されたあと安定照射に変わっていくのだろう。この光はダークネス系を照らす最初の光となった。今後はこの光を受けて、多くの生物が誕生するのかもしれない。黒球の未来が太陽の光によって明るく照らされた記念すべき日が誕生した瞬間だった。
了
↓ こんなことも実現され始めているようです。
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